Hysteric Moon

Hysteric Moon



どんなことよりも。

数え切れない戦場の跡。

駆け抜けた軌跡。

全てを覚えている。



私も斬ることが好きだった。

でも、それ以上にあなたを好きだった。

何よりも。


だから私は斬ることを奪えない。

何より大切な人から大切なものを奪えない。



奪われるのも怖かった。


私だけを見て欲しいようで、そうじゃ無い。

斬ることを奪われたあなたを見るのが、

何かを失くしたあなたを見るのが、

何より怖かったのかもしれない。


だから私は奪えない。



どれ程の血と罪にまみれても

それを重ねるあなたを、私を、止められない。



結局は、同じ罪人。

でも。

それで構わない。


大切なものを繋ぎ止めておけるなら、

私は

なんだってしよう。


だから私は今日も歩く。

戦場を往くあなたと共に。



私がこの刀を置くとき。



それは、私があなたを殺すとき。


そして、あなたが私を殺すとき。




理性に抗った結果。






尽きぬ道の終幕。







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