crying for the moon

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トップの言葉(22)


たとえ世界が木っ葉微塵になったとて
その残骸の破片から
炎となって恋の想いは燃え上がる
(ハイネ『歌の本』「ぼくはおまえが」より)


愛することを学びたいのなら遠慮は棄てなければいけない。
勇気を出して求め、強引に迫って、最後には自分のものにするのよ。
それがうまくいかなければ、奪い取っても構わないわ。
(タッソ「愛神の戯れ」第二幕第二場より)


嫉妬にご用心なさいまし。
嫉妬は緑色の目をした怪物で、人の心を餌食にしてもてあそびます。
(シェイクスピア「オセロウ」第三幕第三場より)


もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。
私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。
私ひとりの力では、とても消す事ができないのです。
(太宰治『斜陽 他一篇』「斜陽」より)


当人が偉大になればいい。
そうすれば恋のほうから必ず後についてくる。
(『エマソン論文集』「霊の法則」より)


ある人に愛される資格のある女は唯一ではないかもしれない。
だが恋してしまったら、その人にとってその女は唯一になるだろう。
(武者小路実篤「友情」九より)


彼女の呼吸を確かめようと、だんだん低くからだをかがめてゆくうちに、
僕はついにはその唇の美しさと魅力に堪えられなくなり、
唇をそっと触れてみた。
この甘美なかぐわしい唇に一度触れてしまうと、
もうどうしても幾度も幾度もくり返しキスせざるをえなくなってしまった。
(ハドソン「緑の館」第十七章より)


はづかしきもの
色このむ男の心の内。
(清少納言「枕草子」一二四より)


僕の存在にはあなたが必要だ。
どうしても必要だ。
(夏目漱石「それから」一四より)


私にはあなたがある
あなたがある
そしてあなたの内には大きな愛の世界があります
(『高村光太郎』「人類の泉」より)


<夏姫さんにとって、俺は何?>
一度だけそう訊いてみたこともあるのだが、
<何だったら安心するの?>
逆に訊き返されてしまった。
鼻白んで黙った俺に向かって、夏姫さんは微笑みながら言った。
<友達だとか、恋人だとか、そういう言葉でくくることに何の意味がある?
私があなたのことを恋人だと言ったら、それだけであなたは安心するの?
それきり二度と不安にならないで済むの?
じゃあ私がもし『私にとっては恋人なんかより友達の方がずっと大切よ』って言ったら、あなたはどうするの?恋人をやめてでも友達になりたがるの?
――ね、わかるでしょ、呼び方なんてどうでもいいってことが。
大事なのは、あなたも私も、今お互いを必要としあってるってことだけ。違う?>
違わない、と俺は言った。
もと国語教師を相手に、言葉で勝てるはずがないのだった。
でももちろん、納得なんてしていなかった。
どういうふうに言えばちゃんと伝わるのかはわからないけれど、俺が言いたいのはそういうことではなかったのだ。
呼び名なんてどうでもいいという理屈ははわかる。というか、俺だって最初からそう思っている。
なぜなら俺が知りたいのは、夏姫さんが俺を想ってくれる気持ちが、俺が彼女を想うのと同じ種類のものかどうか、ただそれだけだったからだ。
(村山由佳「天使の梯子」P104より)


十人十色というからには、心の数だけ恋の種類もあっていいんじゃないかしら。
(トルストイ「アンナ・カレーニナ」第二編七より)


彼が不幸であればあるほど、わたしは嬉しい。
わたしが彼にとって唯一のものであるような気がして。
彼がなんにも持っていないほうが、わたししかもっていないほうが、嬉しい。
その両手には、他のものなんか何一つ持たないでいいよ。
その両手は、ただ私を抱きしめるためだけに。
(「恋の罪」P45-46より)


破壊活動
大切なものほど壊してしまいたかった
放課後の教室のあの瞬間も帰り道に見たあの夕日も
ずっとずっと続いてほしかったものはいつかなくなってしまうから
自分の手で終わりにしたかっただけなのに
壊れてしまったあとにいつも後悔してしまうのはなんでだろう。
(わに☆さまのブログよりいただきました。)


こんなに好きなのに、と泣きながら何度も何度も思った。
こんなに、こんなに好きなのに。
私以上に彼を想ってる女の子なんているわけない。
好きで、好きで、好きで、たまらないのに。
(村山由佳『坂の途中』「CALLING YOU」P197より)


恋に理由はない。
そんなものはない。
過程すら恋にはない。
そんなものはない。
(『桃』「青痣」P190より)


天国なんかに行けなくていいの。
ただあなたの傍にいたいの。
あなたを手に入れるためだったら、わたしは、何だってする。
     * * *
ひとりきりの夜によく考える。
月を眺めたり、孤独で不幸なアンネ・フランクのようにもうひとりの自分に手紙を書いたりしながら、思う。
どうしたら私は、報われるんだろう。
どうしたら私は、救われるんだろう。
こんなにも罪深く、こんなにも愚かで、こんなにも可哀想な私はいったい、どうすればいいのだろう。
そんなとき、あなたのことを思う。
わたしを浄化しうる腕を持つ唯一の人。
あなたは、今、何を思っているのだろう。
たぶん、わたしじゃない人、こと、もの。
わたしはこんなにあなたを想ってるのに、どうして届かないんだろう。
届かせるのは、無理なことなのだろうか。
だとしたらわたしは、無理矢理にでもあなたにわたしのことを考えさせなくてはいけない。
バランスが壊れたとき、そこには悲劇しか待っていないはず。わたしは悲劇なんか欲しくない。
そうだ。
あなたがわたしを想っていない。
それ以上の悲劇がどこにあるっていうのだ?
(「恋の罪」P5~7)


食事のあいだじゅう、マーヴはいつもより少しだけ饒舌だった。
私を微笑ませる冗談、ところどころに愛の言葉。
マーヴのやり方はいつも紳士的だ。
そしてそれは私をときどき息苦しくさせる。
「甘やかさないで」
むした野菜を食べながら私は言った。
「なぜ?」
首をかしげて、マーヴは私をじっと見つめる。
それは問うというより励ますような視線だ。
怖がらなくていい、と、その目は言っている。
私は苛立ってしまう。
「あなたはやさしすぎるわ」
「どうして甘やかされることに罪悪感を持つのかな」
マーヴの大きな手が白ワインのグラスにのびる。
紺色の上着の袖口から、水色のワイシャツのカフスがのぞく。
ヨットをかたどった、銀色のカフリンクス。
「僕はアオイを甘やかすよ」
私は黙った。
黙って、汗をかいたグラスから、白ワインをのみほした。
「僕は僕のテゾーロ(※)を甘やかす」
マーヴはくり返した。
「愛してるから。大切でたまらないから。彼女は特別だから」
一語ずつ区切って、ゆっくり発音する。
「それのどこがいけない?」
最後は自信たっぷりに私の顔を見る。
マーヴは大きな船みたいだ。
正確な羅針盤がついていて、つねにまっすぐ進む。
「All Right.(わかったわ)」
両手を上げ、仕方なく私は言った。
「降参よ」
マーヴはわらってテーブルごしに身をのりだし、私たちは軽いキスをした。
挨拶がわりに始終しているキス。
許してもらえるのはたぶん幸福なことなのだろう。
存在を許してもらえるのは。
※テゾーロ・・・宝物
(江國香織「冷製と情熱のあいだ」P143~145より)


もっと各務を焦らせたい。
苛立たせ、狼狽えさせたい。
愛しているから傷つけたい。
そうして、こんなことを口走る私の唇を塞いでくれたらいいのだ。
(川上宏美「プラチナリング」『LOVERS』P246より)


自分がへこたれている瞬間に愛すべき人間がなんの悲しみもなく過ごしているというのは、すごく安心することなんだと思った。
(長島有「四郎、あなたもそう思ってくれる」『泣かない女はいない』P99より)


私は誰も愛しちゃいない。
寂しくて、何かにしがみつきたいだけなのだ。
(小川内初枝「求愛ダンス」P97より)


うたがはじ なほうらみじと 思ふとも 心に心 かなはざりけり
(疑うこともあるまい、恨んだりもすまい、と思ったとしても、心と心は上手く繋がらない。)
(夏樹葉「恋うたfrom和泉式部日記」P176より)

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