4. 響く靴音
「あ～あたしがあなたを尾けていたのはストーカーが趣味だからじゃなくて騎士団に勧誘しようとしてたからだからね」
さらに続ける。
「あなたには才能があるわ。所詮緋霧の老いぼれにはあなたの才能を完全に開花させることはできない。騎士団に入ればあなたはもっと強くなる」
所詮緋霧の老いぼれ・・・か。
爺さんの悪口を言うのは許せんが事実だった。
まぁ・・・緋霧の家に未練もないしこの女についていくのも面白いだろう。
「いいだろう。その騎士団とやらに入ってやろうじゃないか」
女はちょっとびっくりしたような顔で
「え？」
なんて間抜けなことを言っていた。
「・・・なんだもっと歓迎されると思ったんだがな」
「あたしはもっとあんたが悩むかと思ったわよ」
・・・
しばしの沈黙。
「まぁいいや。じゃーこれからあんたを本部に連れてくから」
「あぁ」
彼女が振り返って
「ついてきてね」
そう言った時
世界は
警報を
鳴らした
かつ、こつ、かつ、こつ
規則正しい足音。
スーツであろうか紳士を感じさせる服は影として長く引き伸ばされ地面に映し出されている。
「ちっ」
後ろで声がする。
「ごきげんよう、柊さん。今宵はそこのお子様に何の用かな？」
カチン。
お子様ってのは俺のことか？
「彼は教会の神父。名前は忘れたけどとんでもなく強いのは確かだよ」
声が硬い。
「ったく小娘が・・・こっちがせっかく聞いてやったのによぉ・・・」
殺気が増す。
「ほら本性が出た。彼の得物は銃だから。気をつけて。あんたを守る余裕はないからね」
自然と姿勢が低くなり刀の柄に手が伸びる。
「けっいい度胸だ、小僧。やろうってのか？」
一つ大きな深呼吸。
心は空に。
「ったく。百年はえぇっつってんだよ！」
法衣の中に手が伸びる。
遅い。
一気に肉迫する。
狙うは右のわき腹から肩にかけての一本の線。
線めがけて刀を振るう。
© Rakuten Group, Inc.
