更年期障害について(NHK参照)









図1 30代半ばを過ぎると、女性ホルモンの分泌が減ってくる

中年期になると、多くの女性の方が「更年期障害」に悩まされます。なぜ、更年期障害になってしまうのかというと、やはり一番の原因は、卵巣も定年を迎えるということなんですね。しかも、その定年が、他の体の部分に比べて早くくるんです。私たちの体は、残念ながら日々衰えているんですが、特に卵巣というのは、35歳くらいをピークにして、だんだん機能が衰え始めてきます。ですから、体の他の部分とのバランスの崩れが起こってきて、それが更年期障害という形になって現れてくるんですね。
では、どんなふうに衰えてくるのか、図1のグラフを見ながらご説明していきましょう。女性のホルモンというのは、10代の思春期を迎える頃から急激に上昇してきます。そして、このピークは20代から30代の半ばくらいまでは維持されますが、30代半ばを過ぎると、みるみる下がってきます。40代、50代、そして60歳を過ぎると、もうほとんどゼロの状態になってしまうんです。この中で起こってくるトラブルが、更年期障害ということになります。


図2 脳の視床下部はホルモン中枢と同時に、自律神経の中枢でもある

次に、どうして女性ホルモンが低下すると更年期障害のようなトラブルが起きるのか、図2を見ながらご説明していきましょう。
女性には卵巣というものがあります。10代、20代のうちはこの卵巣が、一生懸命働いています。ところが、35歳を過ぎると、だんだんその機能が低下してきます。その低下を察知するのがホルモンの中枢というところで、脳の視床下部にあります。そこが、ホルモン濃度や血中濃度を計っているサーモスタットの役割をしているんですね。「ホルモンが足らないな」と思うと、増やす命令を出し、その結果、性腺刺激ホルモンが非常に増えてきます。しかもその増え方が、閉経の頃になりますと通常の10~30倍と、ものすごい勢いで増えてきます。このようになるということは、視床下部も一生懸命働いているということになります。視床下部は、ホルモンの中枢であると同時に、自律神経の中枢も兼ねているんですが、ホルモンのほうが火の車状態になっていると、その火事が同じように自律神経にも飛び火してしまいます。
このため、自律神経の乱れが起こり、さまざまな症状となって現れてくるのです。


図3 更年期に体に起こるさまざまな症状

図3をご覧ください。更年期の主な症状は、のぼせとかほてり、動悸などです。
こういった症状が、自律神経の失調とともに起こってくるんですね。神経的に興奮しているからのぼせるというのはよくあることですが、更年期になると、何でもないのに急にカーッと熱くなってしまうことがあります。また、階段を昇ったわけではないのに、心臓がドキドキしたりします。
他にも膀胱炎や膣炎、月経の乱れなどの症状が起こります。膣の粘膜、あるいは膀胱の粘膜を保護していたのが女性ホルモンなんですが、それが急激に低下してくるために、つねにヒリヒリとした状態になってしまいます。粘膜が乾いてきて、細菌感染などに弱くなってしまうために、そのような病気にかかりやすくなるんですね。膣と同じように皮膚も乾燥してくるので、ドライスキンになって、お化粧のノリも悪くなってくるというトラブルも出てきます。
さらに血液の流れが悪くなった結果として、しびれが出てきたり、冷え性になったりもします。この冷え性は下半身に多く出る傾向があります。このように、一つの体で上半身がのぼせて下半身が冷えたりと、場所によってバラバラな状態になってしまうのが更年期障害の症状の特徴と言えます。


図4 体ばかりではなく、心にも変化が起こる

更年期障害は、体だけではなく、心にも影響を与えます。図4は、心に起こる症状をまとめたものです。精神的な理由もないのに不安になってしまったり、今までよく眠れた人が急に眠れなくなってしまったり……。また、眠りが浅くなって、いつもだったらぐっすり眠っている時間帯に目覚めてしまい、なかなか寝付かれなくなってしまう。そうすると、次の日、めまいや頭痛が起こってくる、という悪循環になります。
それから、自分の体の調子が悪いので、精神的に不安定になってイライラすることがよくあります。そのためお子さんやご主人に当たったり、職場の同僚とトラブルを起こしたりしてしまう人もいます。

更年期障害はすべての女性に起こるかというと、実はそうとは限りません。妊娠時の「つわり」も軽い人、重い人、全然ない人と、人によって違いがあります。
それと同じように、更年期障害にも重い方、軽い方がいるんですね。私の調査では、病院に通っていらっしゃる方は全体の5割くらいです。あとの5割の方は病院に通うほどではないということですので、かなり、体質的なものとか、環境との折り合いというものがあるんだと思います。

※このお話は、番組で放送された内容を要約したものです







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