青空のように

青空のように

案内犬


くねくね曲がった急坂を下りていたら、突然目の前に2匹の野犬が現れました。道が狭いので2匹は横に並べず、1匹ずつ縦に並んでこちらを睨んでいます。僕は犬はあまり好きではないし、首輪もしてないしで、どうしていいのかわからず、立ちすくんでました。と、突然前にいた方が僕に飛びかかってきました。
僕はびっくりして、後ろ向きに転んでしまいました。犬は僕を飛び越え(!)、上に向かって走っていきました。しかしもう1匹残っています。もう僕は怖くて、むりやり藪に避けて、「どうぞ、君もいっていいよ。どうぞどうぞ」と手振りで言ったのですが、犬は動かずジッと僕を見ています。
しょうがないので「噛まないでね、噛んじゃだめ」と言いながら一歩前にでると、犬は向きを変え、下に向かって歩きだしました。そして僕と一定の距離を保ちながら、僕の前を歩いていきます。曲がり角にくると首だけこちらに向けて僕の来るのを待っています。僕が見えるとまた安心したように、次の角までトコトコ歩いて僕の姿が見えるのを待っています。
ようやく僕は、これがエッセイによく出てくる「案内犬」なのだとわかりました。僕を案内してくれてるのです。僕はうれしくなり、「ちょっと待って、君、早すぎるよ」とか「先行かないで、一緒に行こうよ」とか話しかけながら、下までくだっていきました。
下に降りたらなんかお礼しなきゃなーと思いながら集落まで降りると、いつのまにか犬はいなくなっていました。
今こうやって書くと不思議な感じはしないと思いますが、そのときはとてもファンタジックな、なんともいえない不思議な感覚だったのです。

その後再び急坂を登り、5時間半で「焼山寺」に到着。お寺のかたに「案内犬」の話をしたら、「あなたはお大師様に守られているんですよ」といわれた。僕の次に上がってきた人に「犬を見ましたか?」と聞くと、「いいえ」という答えだった。

12番
12番・焼山寺からの眺め。


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