青空のように

青空のように

かっこいいスキヤキ


こんなもの誰が買うんだっ!わしが買う。

ご存知ですか、泉昌之。マンガです。泉晴紀と久住昌之の合作ペンネーム。80年代初頭、「ガロ」で初めてこの人たちのデビュー作(?)、「夜行」(この本でも堂々オープニングを飾っている)を読んで、文句なし天才だあ・・・と感激したが、巻末の、みうらじゅんとの座談会では、「ガロ」以外の雑誌にはすべて断られたと語っている。シンジラレナーイ。

こういう話。
フィリップ・マーロウふうのトレンチコート男が夜行列車に乗っている。男はこれから駅で買った幕の内弁当を食べるところである。メインのおかずとして、カツと塩さばが入っている。男は頭の中でどういう順番・ローテーションで食べていくか戦略を立て、(弁当との)勝負に挑むのだが・・・。
バカでしょう。絵はつげ義春ふうの線で、タッチは劇画調。

このシリーズ(?)の主人公はいつもこの男。花粉症であることを情婦に悟られまいと奮闘する「花粉症」(だんだん鼻が詰まってきて、言葉がヘンになる)。
大学時代の、合宿後のスキヤキパーティを回想する「最後の晩餐」。どれも傑作です。
「最後の晩餐」は、田舎者2人、東京青山出身者とスキヤキ鍋を囲むことになった主人公が、肉ばかり食う田舎者2人に比べ、肉→シラタキ→豆腐→春菊→しいたけ→ネギ→肉、という上品なローテーションで食べる青山出身の長谷川君を、さすがに青山出身はちがうよなあ女にモテるはずだよなあ・・・とうっとりしながら見ていると、実は長谷川君も、肉→シラタキ→肉→豆腐→肉、という「みせかけのローテーション」であったことに愕然とし、「どいつもこいつも、みんなテメーがどれだけ肉喰うかばかり考えやがってーっ」という主人公の心の叫びが爆発する、感動的なストーリー。

東海林さだおと同じく、ここにも、金井美恵子のいう「繊細なせこさ」を持った人がいる。わしはB型だからよくわかる。
本屋で見かけたら、「夜行」だけでも立ち読みしてください。


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