青空のように

青空のように

JB・青島 安らかに 


今日は、青島幸男氏について書こうと思っていたが、昨日はジェームズ・ブラウンが亡くなった。
僕にとっては、大切な二人である。謹んで追悼の言葉を書かせていただく。

ソウル・ミュージックに僕の眼を開かせてくれたのは、サム・クックであったが、虜にしてくれたのはJBである。
最初はどこがいいのかわからなかったが、ある夜ヘッドフォンで2枚組のライブLP(擬似ライブらしいが)「セックスマシーン」を聴いていて、A面すべてを使って演奏されるタイトル曲「セックスマシーン」の、延々と繰り返される「ゲロッパ」「ゲロンナップ」(と聞こえる)という呪文のような掛け合いを聴くうち、突然「わかった」。びっくりして飛び起きたのだが、これはもう天啓に打たれたというほかない。
ホント、一瞬にして、「わかった」んです。
それから半年くらいは、僕はJBしか聴かなかったように思う。

ソウル・ミュージックは、2つの側面を持っている。えもいわれぬ浮遊感で、僕らの魂をフッと宙に持ち上げてくれる気持ちよさ。代表はサム・クックとマーヴィン・ゲイ。
もう一つは、全身を縛りつけ、逃れることのできない呪縛としての音楽。いうまでもなく、JBが代表である。
弦楽器、管楽器、あるいは自分の声さえパーカッションとして使い、ワン・コードの繰り返しの中で聴く者を呪縛してゆく。
もし若い方で、これからJBを聴いてみようと思われるなら、僕は「CDofJB2」(POLYDOR 831 700-2)というアルバムを薦めたい。ここに入っている「コールド・スゥエット」こそが、JBファンクの完成形であると思うから。「コールド・スゥエット」にはいろんなバージョンがあるが、このアルバムの7分26秒こそが最高バージョンであると信じる。
このユルユルのグルーブに腰が動かない人には、ソウル・ミュージックを語る資格がない。
ゴッド・ファーザー・オブ・ソウル、JBよ永遠なれ。

JBの偉大さに勝るとも劣らないのが、青島幸男である。
もう現在、この人のかっこよさを説明しても、ほとんどの人にはわかるまいな。
多くの人が、真面目に働くことこそ美徳と考えていた昭和30年代後半、「コツコツやるやつぁゴクロウさん!」(無責任一代男)と、せせら笑った人なのである。
僧侶であった植木等の父君、植木てつじょう氏をして、「人間の煩悩を正しく描いたただひとつの歌」といわしめた、「わかっちゃいるけど、やめられない」(スーダラ節)と、人生の真実を語った人なのである。
しかし、まちがってはいけない。なんでもできる才人が、真面目に働くことしかできない庶民を軽蔑しているのではなく、誰かさんが責任とらなかったから、ニッポンはこれから無責任な世の中になってゆくゼと警告しているのである。
「コツコツやるやつぁゴクロウさん」と思っていなかったことは、その後の議員時代が証明しているだろう。
ウソをつくヤツ、カッコ悪いヤツが許せないんだと思う。所得倍増計画とか、日本列島改造論とかね。
青島幸男のカッコよさを知りたかったら、小林信彦の長編小説「夢の砦」を読むといい。
主人公の分身として出てくる「寅彦」は、ほとんど青島幸男である(作者は違うといっている)。
そういえば、この小説が連載されていたのは「平凡パンチ」であった。
60年代は遠く去った。しかし「これが男の生きる道」、青島幸男よ安らかに。



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