久しぶりに月究派の小説に出会って一挙に読み切った。 「月の石」原題 La pietra lunare。詩人で大学生の主人公ジョヴァンカルロは休暇を一家の郷里である田舎の館へ過ごしにもどってくる。そこで山羊の足をした美しい娘グル―と出会い、恋に落ち彼女の手引きで月の光の支配する世界の神秘的な自然に溶け込んでいき、さまざまな幻想世界への参入の果てに遂に3体の母なる月女神(おそらくアルテーミス、ヘカテ―、セレネ―であろう)と対面し大地の洗礼を受ける。1章のグル―との出会いまでは、その田舎の退屈きわまりない日常世界が描写され、うんざりするが、それもグル―との出会いを際立たせ、月の支配する世界への参入までのイントロとしてはこの上ない対比となって、とても魅惑的な作品に仕上がっている。一読して大いに気に入ってしまった。表紙の装画もレメディオス・バロの手になる「星粥」でとてもおしゃれである。