raskiのマジックとミステリの部屋

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クロースアップその3

Self-Working Number Magic: 101 Foolproof Tricks Karl Fulves
カール・ファルブス氏のセルフワーキングシリーズのうちの1冊。マーティン・ガードナー氏の本の時代の土台を受け継いで、さらに不思議さを加えて発展したマジック集です。ゲーム、パズルから純粋な数のマジック、記憶術、魔方陣、計算術など、この分野のマジックを広く収録しており、かなり充実した内容になっています。ほとんどのマジックが、紙と鉛筆があれば(欲を言えば電卓もほしいが)できるマジックで、即席性があるのも魅力です。いくつかマジックを見てみましょう。

A 5¢computer・・・・・観客の言った数字を基にして6桁の数字を作ります。それを7,11,13 で割ったときのあまりを紙で作ったコンピューターが予言します。さらにひねった結末も待っています。

Fourth-dimensional dates・・・生まれた年や年齢やその他いろいろな数字を足した結果を予言します。これほど大胆な原理に基づいたマジックも珍しい。(なかなかばれそうでばれない)

Linear A・・・・・・6桁の数字を繰り返して12桁の数字を作ります。演者は2箇所書き換えて、それを7で割り切れるようにしてしまいます。

Alberti's game・・・・私の1番のお勧めトリック。3桁同士の掛け算を一瞬で行います。

The million-dollar prediction・・・メンタルマジックの見本のようなトリック。観客が思いついた数字によって足し算を行い、その結果を予言します。




"Mathemagic" Royal Vale Heath
 マーティンガードナーの『数学マジック』に先立って記された数学マジックの古典的テキスト。魔方陣以外は、純粋に計算のトリックを扱ったものであるということが特色です。紙と鉛筆があればどこでもできるという長所がある一方、観客が計算をしなければならないという短所があります。

 「頭の体操にいいですよ」などといって観客を乗せてしまう方法や、「計算速いですね」とほめる方法などもありますが、あまりやりすぎないことは肝心です。それに、ひとつにしたほうが不思議さは高いと思います。

 私のお勧めは、魔方陣の作り方のコーナーです。奇数×奇数のます目の場合、偶数×偶数のます目の倍など、丁寧に場合わけをして解説しています。そのほか、予言や読心術としても使える計算のマジックがたくさん。前の日記で書いたような不思議な計算など。


Self-Working Rope Magic: 70 Foolproof Tricks Karl Fulves
セルフワーキングといっても、勝手に結び目ができたり、勝手に再生したりというマジックはもちろん載っていません。難しいテクニックのいらないロープマジックというくらいに捉えておけばいいでしょう。

 ロープマジックのあまり多くないであろう本としては、ステュアート・ジェームスのロープマジックの古典的大百科が思い浮かびます。それに比べて、結び目のトリックが多いのが本書の特徴です。結び目に関するトリックは、およそ70ページを割いて解説されています。スリップ・ノット、ハンター・ノット、スクエア・ノット、ディゾルブ・ノットなどがあります。つまり、結び目が消えるマジックや、ロープの両端を放さないで結び目を作るトリックなどが載っています。

 そのほかには、すばやい結び目の作り方、手首を縛った紐からの脱出、切っても元に戻るロープ、ロープとリングのトリックなどがあります。




Big Book of Magic Tricks Karl Fulves
カール・ファルヴス氏による一冊。セルフワーキングシリーズの陰に隠れてしまっているという印象を受けますが、なかなかどうして、見過ごすことのできない1冊です。

 内容は、かなりバラエティ豊かです。紹介しますと、マジックの歴史に始まり、ミスディレクションの講釈と実例、クロースアップマジック、カードマジック、コインマジック、ロープマジック、メンタルマジック、コメディマジック、ギャンブルトリック、近現代の奇術史まで続きます。ギャンブルや、コメディに特別に章をさいているのは類書にはない特徴のひとつでしょう。

 クロースアップマジックでは、両端から手を離さないで結び目を作る方法、絡ませた輪ゴムを解くマジック、二枚のお札の入れ替わりトリック、奇妙な音を出すコップ、一個のさいころの上に、横向きに2個さいころを載せる方法などが紹介されています。

 カードマジックでは、ハンカチ越しにつかんだデックから選ばれたカードが競りあがるトリック、ゴムで縛られたデックからエースが飛び出すトリック、デックから抜き出したパケットの一番上のカードを当てるトリックなどが解説されています。

 コインマジックでは、手で隠したコインの表裏を当てる方法、コインで作った三角形の向きを変えるマジック、紙で包んだコインを凍死するトリックなどが紹介されています。

 ロープマジックでは、リングとロープを併用したものが多く解説されています。

 そのほか、「大きいカード」という予言トリック、嫌な観客を脅迫するというどうにもお勧めできないトリック、絶対に解けないクイズ、2択を100パーセント当てる方法などの解説があります。

 この本で解説されているマジックのほとんどは、準備をする必要のないものばかりです。それどころか、難しい技術を習得する必要もありません。総花的解説書と思ってしまうかもしれませんが、一つ一つの分野において、セルフワーキングシリーズに劣らないほどの充実振りです。簡明な叙述の奇術史も魅力的です。即席マジックの巧妙なる世界を堪能するにはまたとないテキストでしょう。




"Book of bar amusement" Cheryl Charming
アミューズメントというタイトルの通り、マジックだけでなく、パズル、クイズなども含めたテキストです。「私はマジックしか興味ありません」と硬いことはいわないで一度ご覧になってみてください。

 著者のチェルリー・チャーミングについては私は何も知りませんので、あとがきをまとめて紹介したいと思います。チェルリーは、いろいろなバーなどをめぐって、直接にトリックの秘伝を学んできた人であって、自らも船上のバーでトリックなどを実演していたそうです。また、バートリックを教授するという活動や、ピエロになってパレードをする、といった活動もしていたそうです。この本でも、直接教えてもらったというトリックが解説されています。

 このテキストの表現上の特色としては、ほとんどの解説を1ページに収めているということがあります。それゆえに、非常に簡潔な解説になっています。読むのが面倒でない反面、演出は大部分を自分で考えなければなりません。まあ、そこが大きなマジック学習の魅力でもあるわけですが。

 内容を大まかに分類すると、お金のマジック、マッチ棒のマジック、コップのマジック、瓶のマジック、紙のマジック、その他のマジック、というようになります。いくつか取り上げて紹介したいと思います。

お札の橋・・・・お札で端を作り、その上にコップを載せます。お札はびくともしません。

オレンジクラッシュ・・・みかんの中からお札が出てきます。

三角の挑戦・・・6本のマッチ棒で、8個の三角形を作ります。

恐ろしきストロー・・・・ストローが口を貫通します。

まだたくさんありますが、略述にとどめます。コップの浮遊、瓶の中からコルクを取り出すパズル、暗号ゲームなど。

 若干準備を必要とするものもありますが、準備なしでも楽しめるものもちゃんとあります。ぜひ巧妙なトリックをお楽しみください。


"Houdini's paper magic " Harry Houdini
 脱出王と呼ばれた男、ハリー・フーディニが書いたマジックの本です。それだけにステージ向きのものが多いのですが、便宜上ここで紹介しています。この本は、紙のマジック、紙を折るもの、紙を破るもの、紙のパズルの4部構成になっています。

 紙のマジックのところでは、ステージ向きのものを中心にマジックを解説しています。私もステージマジックを演じるなら、きっと使っていたことでしょう。いくつか取り上げてみます。

The travering paper balls・・・・・右手から左手に写したはずの紙球が、右手に戻ってきます。

The selective touch・・・・・指先の感覚で紙の色を識別します。

The japanese butterflies・・・・紙で作った蝶のトリックです。北方の魔術師、ヘンリー・アンダーソンがアメリカに持ち込んだトリックだそうです。

An efferctive finish・・・・・筒の中から旗を取り出します。

 この小は、本当にステージ向きのトリックが主です。

 次の章は折り紙です。マジックというより本物の折り紙です。ここでは内容よりも、非常に興味深いエピソードがありましたので、それを紹介します。

 ある夕食の席で、メニューの紙を使って折り紙をやっている日本人がいました。すると、その日本人は、興味を持った観客に囲まれ、最後には大きな拍手で迎えられたそうです。フーディニは、その人に折り紙を教えてもらったそうです。あの理解を超えた脱出の方法を知っているマジシャンがです。ちょっとほほえましいエピソードであると同時に、効果的なマジックはどのようなものかを考えるときに、非常に示唆的なエピソードです。

 その次は紙を破る、または切るトリックです。私としてはこの章が一番好きです。

Trewey's paper ring・・・・・・いわゆるアフガン・バンドです。くわしくは2005年6月9日の私の日記を見てください。

Jacob's ladder・・・・・・新聞紙でハシゴを作ります。

The trellis・・・・・・飾りのついたハシゴを新聞紙から作ります。

The fie tree・・・・・新聞紙で木を作ります。

The dancing skeltons・・・・・新聞紙を切り抜いて、何体かのガイコツを作り、踊らせます。あのアドリアン・プレートのステージトリックです。

 最後はパズルです。一回きっただけで十字架を作るパズル、切れ端からつきと十字架を作るパズルなどがあります。

 どちらかというとステージ向きの本書ですので、クロースアップが大好きな方は戸惑うかもしれません。(私のように)ただ、当時の職業奇術家が演じていたマジックが多いので、実践的であると同時に、どのようなマジックが行われていたのかを知る有力な手がかりになるでしょう。

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