raskiのマジックとミステリの部屋

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再読のススメ



 実利的な観点から言って再読を勧める1つ目の理由は、忘れてしまうことがあるということです。これは普遍的な現象かどうか謎ですが、多くのマジックを覚えても、普段演じているもの意外は手順や細かいところを忘れてしまうことがあると思います。また、覚えたつもりでも細かいところが変になっていることだってあるかもしれません。そんなときに再読が勧められるのはいうまでもありません。ここで強調したいのは、忘れたつもりがなくても、実際にはどこか抜けていることもありうるということです。忘れたものを思い出すためというより、忘れている部分があることに気づくための再読もあります。転ばぬ先の杖、忘れる前に再読、です。

 次の点は、私が最も強く言いたいところです。それは、マジック(に限らず)テキストは、読むたびに違う顔、新しい顔を見せてくれるということです。マジックの本を読み返してみて、今まで目にも入らなかったトリックに急にひきつけられたり、今までつまらないと思っていたトリックが面白いと気づかされたりする、そんな体験のことを言っています。そんな体験がない場合は、今再読してみてもいいかもしれません。そんな体験が、たぶん、できること請け合いです。

 どうしてそんな現象が起こるかについては、いろいろ考えられます。物理的には本は(劣化する以外)変わっていませんから、自分の何かが変わっているというのが有力な説でしょう。自分の好みが変わっていたり、渋い面白さがわかるようになっていたり、微妙な差異がわかるようになっていたり、という変化が自分に起こっていれば、今まで注目しなかった本にあるマジックが、光るものに見えても不思議はありません。また、何回も読むことでより詳細なところまで理解できるようになるということも考えられます。

 個人的な感触では、『カードマジック事典』やヒューガードの「エンサイクロペディア・オブ・カードトリックス」などそっけない顔をしたような辞典において再読の魔術的効果が発生するような感じを抱いています。本当に「読むたびに発見がある」といっても過言ではありません。

 最後に、マジックの本を読む・再読すること自体たとえ利益がなくても楽しいではないか、ということを強調して締めくくりたいと思います。マジックの本が新しい顔で微笑みかけんことを。

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