カガワちゃんの毎日。

カガワちゃんの毎日。

恐怖のアンソロジ-。



幼い頃、世界はとても暗かった。
今のように、どこかしこに光があふれているわけではなく、
日常には常に、闇の恐怖が付きまとっていた。
ただ単純に、闇の中には悪いものがいて悪さをするのだと考えられていた。
そして得体のしれないものに対する畏怖や恐怖を、知らずして感じとっていたのだ。
押入れの中の闇。
天井のしみ。
誰もいない校庭。
夕刻時の不気味な気配。
小学校の時、臨海学校で行った宿の窓のむこうには、漆黒の闇が広がっていた。
「しん・・・。」という音が聴こえてきそうなくらい、静かな静かな闇に包まれた夜。

今は亡き祖母と、ちいさい弟と3にんでTVの「世界びっくり人間ショ-」というのを見ていた時のこと。
頭に剣を突き刺されて、にこにこ笑ってる女の人が映っていた。
祖母は「いう事を聞かない悪い子は、人売りに買われて、あんなところへ売り飛ばされてしまうよ。」と、声をひそめて教えた。
幼い私は、ただただ恐怖し、2・3日くらいは、おりこうさんに暮らした。
しかし4日目くらいには、もう忘れていた。

現代、世界は光に満ち、
ものは豊かで、情報にあふれかえっている。
しかし、果たして、何が正しくて何がまちがっているのか、
何がわかっていて、何がわからないのか、
混沌としては、いまいか。
未知なもの、
恐ろしいものに対する本能的な危機感が
愚鈍になっては、いまいか。
生き物の人間としての
かつては研ぎ澄まされていた部分が
失われていっては、いないだろうか。





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