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小説 こにゃん日記
月の虹
さわ、と風が吹いていた。
陽の落ちたばかりの空は薄く蒼い。
白くまぁるいお月様。
ほんのりと浮かぶのは、黄色い菜の花の一群。
さわ、さわ、と。
花の中で、少女が風のような声で歌ってた。
少女がふと振り向いたので、翔太は蹲っている花の影で、その身を小さくびくりとすくめた。
5歳の翔太の瞳には、少女はもうすっかり大人に見えた。
そして大人なら、泥んこで泣きべそをかいた翔太を見れば、必ずどうしたのか聞いてくる。そうして無理やりにでもあそこへ戻される。
翔太はそう思った。
だから、少女が何事もなかったように、また月を仰いで歌い始めたとき、翔太はほっとしたような痛いような、そんな変な気分になったのだった。
さわ、さわ、と。
少女の歌は、千恵姉の大好きなアイドルの歌とも、一哉兄の口ずさむ異国の歌とも違う。
静かで優しい、どこかで聞いたような懐かしい歌だった。
菜の花畠に 入り日薄れ
見渡す山の端 霞み深し
春風そよ吹く 空を見れば
夕月かかりて 匂い淡し *
翔太は、ひざを抱えて蹲ったままその歌声を聴いていた。
聞いていたら、また新しい涙が出てきた。
ひざの間に頭を突っ込んだら、月も少女の姿も見えなくなって、黒々とした地面がひんやりと目に映った。
『死んだらどこへ行くと思う?』
まるで考えていたことを当てられたようで、どきりと胸がなる。
再び上げた目の前に、少女の瞳があった。
まるで月みたいだ。翔太は思った。
今日みたいに、死人のような青白い月じゃない。
きらきら金色のお月様。涙の色はレモンドロップ。
本当は、少女は泣いていたわけじゃない。翔太が想像しただけだ。ただそれだけだ。
『死んだら地面に埋められちゃうんだよ。』
『なら・・・。』
少女は、そっと自分の胸に手を当てた。
『この気持ちはどこへいくの?』
『知らないよ!』
お母さんは、弟は天国に行ったといった。
天使になって、皆が幸せになれるように守ってくれるって。
嘘つき。
お父さんも、翔太も、そしてお母さんだって、誰も幸せになんてなれない。
『きっとお月様にいるのよ。』
嘘つき、嘘つき、嘘つき。
『天使になって守ってくれるって言うの?』
『天使?』
少女は、ことりと首をかしげた。
しばらく考えて、そうして首を振って見せた。
『ううん。神様。とても残酷な神様なの。』
生まれたばかりの弟。
それまで一人っ子だった翔太が、欲しくて欲しくてたまらなかったもの。
歩けるようになったら、手をつないで一緒に遊びに行こう。
翔太が好きなものは、全部見せてあげよう。
いじめっ子からは守ってあげよう。
けれども、小さな小さな赤ん坊は、生まれてから少しも大きくならなかった。
透明なケースの中で、青白い顔で、泣き声も立てず、ひっそりと息をしていた。
その息すらも、生まれて次の日には止まってしまった。
可哀想な弟。
お母さんは泣いて、泣いて。
そのまま死んでしまいそうで怖くなるほど泣いて。
そうして唐突に泣き止んだ。
肩を震わせ口を噛み締めるお父さんの横に座って、静かにお葬式に来てくれた人に挨拶を返していた。
それから、まるで何事もなかったように毎日が過ぎ、お父さんは会社に出かけ、翔太はバスに乗って幼稚園へ。
家に帰ると、お母さんがおやつを出してくれて、『ライダー仮面ジェット』を見て、帰ってきたお父さんとお風呂に入って。
お父さんはビール。今日のごはんはオムカレー。
何も入っていないごはんを玉子焼きで包んで、たっぷりカレーをかけてある。
ジャガイモ、お肉、とろとろのたまねぎ。にんじんはそうっとお皿の端に寄せる。
『また、にんじん残して!』
『まあ。いいじゃないか。』
お父さんは、翔太のお皿からぽいぽいと、にんじんを箸で取って自分の口に入れる。
最後の一個を
『ほら。』
と翔太の口元に持ってきて、片目をつぶってみせた。
目をつぶって、ごくんと飲み込んで、それからお母さんの顔をそうっと見上げる。
仕方がないというように、お母さんはふうと息を吐く。
お父さんと目だけで笑いあう。
変わらない毎日。
だから夢だと思ったんだ。
お父さんがお母さんを殴っている。
お母さんが泣きながら床に突っ伏している。
『私が死にたかったのに。』
『馬鹿っ!あれは関係ない。お前の思い過ごしだ。』
『あの子を返してよぉ。』
『やめろ。赤ん坊が死んだのは、誰のせいでもない。』
しがみついたお母さんを、突き飛ばした瞬間。お父さんは翔太のことに気がついた。
お父さんは大股で翔太のほうへやってきた。
殴られる!
翔太のパジャマのズボンを伝わって、温かいものが足元を濡らした。
お父さんは翔太を抱え上げ、トイレに向かった。
びっしょり濡れたズボンを、ずりおろすして、一言
『しろ。』
といった。
ちょろりとほんの少しだけ、おしっこが出た。
『もういいのか?』
翔太が頷くと、パジャマのズボンを置き捨てたまま、もう一度抱えあげ、二階へ連れて行った。
お母さんのおなかに赤ちゃんがいたとき、初めて貰った翔太の部屋に翔太のベッド。
新しいパンツとパジャマに着替えたら、毛布に包まれその上から、頭を、背中を、腕を、足を、体中ゆっくりと撫ぜられる。
『これは夢だ。だから気にしなくていい。』
翔太が眠りにつくまで、お父さんは繰り返し何度もそう呟いていた。
次の朝になると、お母さんが翔太を起こしに来た。
『ほらほら。早く起きなさい。』
カーテンを開け、翔太の布団をはぐ。
それでも布団に張り付こうとする翔太を、こちょこちょとくすぐって来た。
体をくねらせ、くすくすと笑う翔太を背中から抱きしめる。
『いつまでも寝ていると、尻尾が生えてくるぞぉ。』
そういいながら、翔太のお尻を軽く叩く。
いつものお母さん。いつもの朝。
だからそう。あれは夢だったに違いない。
その日、幼稚園バスを降りた翔太を迎えたのは、お父さんだった。
『ただいま。お父さん今日は早いんだね。』
お父さんは翔太の手をぎゅっと握る。あったかくて大きな手。
『ただいま。』
覚えたてのスキップを踏んで、門をくぐる。
玄関を開けようとすると、お父さんが鍵を取り出した。
『お母さん。お買い物?』
しんとした空気。薄暗い部屋。何だか違う家みたい。
ぱちんとお父さんが明かりをつけたので、やっとほっと息がつけた。
『お母さんは、おばあちゃんの家に行った。』
おばあちゃんといったら、横浜のおばあちゃんのことだ。
お母さんのお母さん。
一人で横浜に住んでいて、たまに翔太たちが遊びに行くと、とても喜んでくれる。
翔太の大好きなおばあちゃん。
『一緒に暮しましょう。』
お父さんも、お母さんも言った。
『おばあちゃん。僕の家においでよ。』
翔太が言うと、死んじゃったおじいちゃんが寂しがるから、ずっとここに住むんだと言っていた。
『死んじゃった人も寂しがるの?』
翔太が聞いたら、
『寂しいのはおばあちゃんのほうなのさ。』
まるで内緒話みたいに、こそっと笑った。
寂しがりやのおじいちゃんと過ごした家で、寂しがりやのおばあちゃんは、一人ぼっちで暮らしている。
『お母さん。何時に帰ってくるの?』
僕も行きたかったのに。翔太は思った。
『今日は帰ってこない。』
『明日?』
『いや。』
『だったら、明日の次の日?』
『いや・・・。』
『次の日の次の日?』
『・・・・・。』
『もしかしたら、お母さん。ずうっとおばあちゃんの家に住むの?』
そうだったらいいな。翔太が言うと、お父さんは目を見開いた。
『おばあちゃんは寂しいって。でもね、おじいちゃんのお家に住みたいって。』
『そうか。』
お父さんは、翔太の頭をぐいっと掴んだ。
何だか変てこな顔をしながら、そのまま自分の腹に翔太の頭を埋めて、ぎゅっと肩を抱きしめた。
『お父さん。僕たちも早くおばあちゃんち行こうよ。』
お父さんの腹を押しやりながら、翔太が見上げると、お父さんの顔はますますへんてこになっていた。
まるで、くしゃみをこらえているような顔。
『翔太は、お父さんの田舎を覚えているか?』
翔太は頷いた。
大きな大きな古いお家。
たくさんの部屋と、たくさんの人。
無口で怖そうなおじいさん。いつも忙しそうなおばあさん。
目のほとんど見えない曾おばあさん。
おじさんにおばさん。年上の従兄弟たち。
使用人の松井さんと、お手伝いの鈴木さん。古田さん。
庭の手入れに来てくれるおじさんは、なんていう名前だっけ。
『翔太には、しばらくお父さんの田舎へ行って欲しいんだ。横浜のおばあちゃんちばかりじゃ不公平だろう?皆、翔太に会いたいってさ。』
翔太は口の中でう~んと言った。
よくわからなかった。
『お父さんの田舎へ行ってから、おばあちゃんの家に行くの?』
翔太が聞いたとき、お父さんは確かに頷いた。
『ああそうだ。そうしたら皆で暮らそう。』
だから翔太も頷いた。泣きそうになったけど、ほんの少し涙の粒をほっぺにつけただけでがんばった。
でも、田舎の駅で翔太を降ろしたお父さんが、迎えに来たおじさんに翔太を引き渡し、そしてそのままお父さんだけ家に帰ると言ったとき、翔太は大声で泣いた。めちゃくちゃに暴れて、おじさんの足を蹴飛ばした。
『翔太ちゃん。ちょっとの辛抱だから。』
『翔太。少しの間。我慢してくれ。』
少しだから。ほんの少しだから。
少しってどのくらい。
明日?明日の次の日?次の次の日?
お母さんは帰らない。お父さんも行ってしまった。
おばあさんもおじさんもおばさんも、よく来たねと笑いかけてくれた。
教わったとおり行儀良く挨拶をすると、おじいさんは眼鏡をずりさげ、翔太を眺めると黙って頷く。
でも、食卓で、居間で、家中どこにいても、翔太の話題は上がらない。
一哉兄の大学受験の話。千恵姉の付き合っている人の話。一登おじさんが新しい車を買った話。それを幸恵おばさんが運転した話。おばあさんが編んだ敷物の話。おじいさんの腰の話。松井さんや鈴木さんや古田さん。自分の部屋にずっといて、めったに顔を出さない曾おばあさんの話だって。
たくさんの話。皆が知っていて翔太の知らない話。
たまに、はっと気がついたように、誰かが翔太に声がかける。
『翔太ちゃんは、何が好物なの?姉ちゃん今度作ってあげる。』
何度も繰り返された質問。
『いくら好物だって、千恵の料理じゃなあ。』
『姉ちゃん。彼にお弁当とか、作って上げたりするわけ?やめたほうがいいと思うなあ。』
『彼女もいない奴に言われたくないわよ!』
笑い声。笑い声。
翔太がオムカレーと小さく応えた時には、もう別の会話が始まっていて、誰も翔太を気にも留めない。
お母さんが病気だと話していたのは、松井さんだろうか?
お水のおかわりが欲しいと、翔太が台所へ行ったとき、聞こえてきた会話。
『やだねえ。だいたいあの奥様の双子の弟ってのが、小さい頃に亡くなったって言うけど、生まれつきおかしかったって話じゃないか。』
『いや、そういうんじゃなくて、何でも赤ん坊を失ったショックだから、一時的なものだろうって。』
『わかんないよ。こういう病気は遺伝するってからね。その赤ん坊ってのも、生まれそこないだったんだろ?』
『じゃあ。翔太坊ちゃんも?』
パーンと大きな音が響いて、翔太はびっくりして飛び上がった。
右手に握り締めていたはずのコップが床に落ちている。
『まあ。翔太坊ちゃん!』
口をぽかんと開けた真っ赤な二つの顔。
一生懸命何か言っているけど、なんだか良く聞こえないや。
お母さんは病気なんだ。
死んでしまったお母さんの弟と同じ病気。
死んでしまった赤ん坊と同じ病気。
だったら、お母さんも死んでしまうの?
僕も死んでしまうの?
気がつくと翔太は、この野原にいた。
足を見下ろすと、靴を履いていたから玄関から飛び出したんだろう。
いつの間にか泥んこだらけで、あちこちすり傷もあった。
どうやってここへ来たのか、ここはどこなのかもわからない。
ひりひりとした痛みが、翔太にまだこの体が死んではいない事を教えてくれる。
胸の奥もぎりぎりと痛んで、ああ心も死んでいないんだと翔太は思った。
冷たい手でぎゅっと自分を抱きしめると、まるで絞られたように、今まで出なかった涙が溢れてきた。
お母さん。お父さん。お母さん。お母さん。
苦しくて、苦しくて、うんうん唸りながら泣いた。
たくさんたくさん泣いて、大きな声で懐かしい名前を呼んで、草を引きちぎり地面を蹴飛ばし、まるで小さな野獣のように翔太は喚いた。
そうして、いつしか泣き止んで、ぼんやりと草の中に座り込んだ翔太の視界に、にじむように黄色い花が映った。
月が昇り日の光は消えていた。
傍らの花に手を伸ばした。
周りには踏みにじられ、ちぎられた草が横たわる。
・・・ああ良かった。
翔太は愛しむように、両手でそっと花を包んだ。
摘まないまま、そのひんやりとした花に、熱く濡れた頬を寄せる。
さわ、と風が吹く。
そして歌が。
『残酷な神様?』
『そうよ。』
歌うように少女は言う。
『とても大好きな人がいたの。私をこの春お嫁に貰ってくれるって。』
嘘つき。少女は微笑みながら、そう言った。
『もう見えないのに、触れもできないのに。それでも忘れさせてくれないの。』
死んでしまったから。
『辛いのに、悲しいのに。だから願ったのに。私の全てを捧げるからって。全部いらないからって。だからお願いだから私の代わりに生きてって。』
少女はうっとりと目を閉じた。
『そして、いつまでも私を覚えていてって。』
お母さんもそう思ったんだろうか?
小さな小さな赤ん坊が死んでしまったとき。
もしお母さんの願いが叶ったら、お母さんは赤ん坊の弟の代わりに、あの時死んでいたんだろうか?
『そんなのは駄目だよ!』
さあーっと冷たい風が渡る。
突然ぱらぱらと舞い落ちた雨が、一つ二つ三つ、数え切れぬほど花を打つ。
雨の帳の中で見上げた空に、うっすらと白い弧を見つけて、翔太は目を細めた。
今にも消えてしまいそうなかぼそい光。
少女がぱっと立ち上がったので、翔太は思わず光から目を離した。
『天気雨だわ。』
少女がぴょんと輪を描くと、そこには金色の瞳をした獣。
ふさふさの尻尾をした犬に似た獣。
『狐だ!』
翔太はぽかんと口を開けた。
ぱらぱらと雨の降る月夜の野原。
淡く輝く弧に向かって、狐は大きくジャンプした。まるで鳥になったような、それはそれは見事なジャンプ。
それから何が起こったのだろう?
実を言うと翔太は覚えていない。
翔太が目を開けたとき、目の前にはお母さんがいた。
翔太の顔を見て、笑いながらたくさん涙を流した。
まるで翔太をその温かい水で溺れさせるかのように。
お父さんが、お母さんの肩を後ろから片手で抱いて、もう一方の手で、翔太の手をぎゅっと握っていた。あったかくて大きな手で。
『ああ、ありがたい。神様。ありがとうございます。』
後ろでおばあちゃんが、手を合わせた。
残酷で、そしてとても優しい神様。
翔太が行方知れずになって、一晩中村は大騒ぎだった。
あたりには深い山。深い藪。深い川。
夜になって雨も降り始めて、土地勘もない5歳の子供がただ一人。
朝日がさす頃、ようやく見つかった翔太は、一晩中雨に打たれてびしょぬれだった。
意識も戻らぬまま、一日たち、二日たち。
罪の意識にしぶしぶと、家のものは父親を呼び、父親は母親を呼んだ。
母親とその母である祖母と、二人の女が震えながらこの家に着いたとき、まだ目覚めぬまま翔太はシーツの中で溶け込みそうなほど白い頬をしていた。
母親は泣きながら言った。
『どうか神様。翔太の代わりに私をあげますから。』
そのとき、不意に翔太が声を発したのだ。
『そんなのは駄目だよ!』
はっと、思って翔太の顔を見ると、ほんのわずかに唇が開いている。
母親は、その唇に自分の唇をつけて、息を吹き込んだ。
どうか、どうかお願いします。
すべてをあげますから、私を全部あげますから。
翔太の顔にぱらぱらと涙が落ちる。
わずかに開いた翔太の瞳に、ほんのりと輝く白い顔が映る。
『それで、狐はどうなったの?』
帰りの電車の中で、翔太はお母さんの膝にもたれかかる。
『行儀が悪いぞ。きちんと座りなさい。』
向かいに座ったお父さんが叱るけど、翔太は聞こえない振りをした。
『天気雨は、狐の嫁入りがあるのよ。』
お母さんも、お父さんの声が聞こえない振りをしている。
『だから、狐は月にお嫁にいったのだと思うわ。』
かぼそい月の虹を渡って。死んでしまった恋人を追いかけて。
『お母さんも、月に行きたい?』
翔太はぎゅっと、お母さんのスカートを握り締めた。
『いいえ。』
翔太はじっとお母さんの瞳を覗き込んだ。
その中に入り込もうとするように。
お母さんの笑顔は、ずっとお日様みたいだと思っていた。
でも、今のお母さんの笑顔はまるでお月様みたいだ。
静かで優しくて、どこか悲しい光。
『月なんて行きたくないわ。』
嘘つきなお母さん。
『家に帰ったら、引越しの準備をしなくっちゃな。』
お父さんの言葉に、翔太の顔が上がった。
お母さんとおばあちゃんは、不思議そうにお父さんの顔を見てる。
『あなた?』
『お義母さん。いきなりですが、親子三人お世話になります。』
おばあちゃんが、下げられたお父さんの頭を見て、おろおろと声をつづる。
『でも、翔一さんの通勤に不便じゃあ?』
『ようやく事務所の移転手続きが取れました。今よりはずっとお義母さんの家から、職場が近くなりますよ。』
おばあちゃんの顔が、くしゃくしゃになった。
『翔太にも寂しい思いをさせてごめんな。』
お父さんとお母さんと翔太とおばあちゃん。
これからは、皆で一緒に暮らすんだ。
白くてまぁるい月の夜は、皆で一緒に月を見よう。
もし雨が降って、そうしてもしも白い虹が出たら。
僕の弟のために、おじいちゃんのために、お母さんの弟のために。
金色の瞳をした狐のために。
花を飾って、そうして皆で歌を歌おう。
まるで子守唄みたいな月の歌を歌おう。
*作中の歌は『朧月夜 』(おぼろづきよ) 作曲者 岡野 貞一氏 作詞者 高野 辰之氏 です。
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