浅田次郎
この題名、区切るとすれば、
一刀斎、夢録。
一刀斎こと元・ 新選組三番隊長・
斎藤一
の回顧談だ。
斎藤一
時は、明治が大正と改まった年、
69歳となった斉藤が、ある若者に、
自身の半生を回顧し、語りつくす。
日本史上最も激動の時代を生き抜いた生の話は、
身動きできないほどの勢いで、引きずり込まれる。
---引用文-----------
才谷を斬ると決めたからには、斬る。
万が一にも仕損じはしない。
才谷梅太郎なる浪人の本名は、 坂本龍馬
というた。
わしが龍馬を倒す刺客となったいきさつを
聞いていただこうか。
序盤のこのくだりで、釘付けになってしまった!!
まさか!!
この男が、歴史を変えた!?
坂本龍馬暗殺は未解決のまま。
犯人候補が多すぎて諸説ある。
京都見廻組、新撰組、幕府、紀州藩…
それが、こうもアッサリと認める。
語るひとつひとつの話は、異常に生々しく
まるで自分自身がその場にいて、
直接聞いている様な錯覚に陥る。
斉藤一の語りを通して、
浅田氏の 緻密な想像力
に感嘆する。
語るひとつひとつの話は、異常に生々しく
まるで自分自身がその場にいて、
直接聞いている様な錯覚に陥る。
斉藤一の目を通して、
また 違った角度からの新撰組
を眺めることができる。
しかし、浅田氏はよほど新撰組が好きなんだな~
以前にも読んだ
「輪違屋糸里」「壬生義士伝」
もかなり感動させられたが、
これもナカナカの重みある作品だ。
これに登場する
市村鉄之助
。
読みながら、これはきっと架空の人物だろうと思っていたが、
実在していた!
14歳で新撰組に入隊し、
最後の最後まで小姓として残り、
斉藤一の 生涯唯一の弟子
として描かれている。
その最期は、とても重みがあり重要な意味があり、
この話の本質ではないか…
14歳??
ウチの息子と変わらない。
こんな子供にまで、ここまでの覚悟を強いられた
この時代の厳しさを改めて感じる。
新撰組として、
また、戊辰戦争や西南戦争を含め
その剣で百以上の命を奪った人間として、
業に苦しみ、 死に場所を求めて
大正まで生き延びるハメになった男の、
とてもつらい試練の生涯だ。
死するは易く、生くるは 難
殺すは易く、生かすは難い。
この言葉に、斉藤の全てが込められているように思う。
死期を悟るや床の間で 結跏趺坐
をして往生を遂げたと伝えられる。
このエピソードを読んで、身震いした。
やみくもに人を斬ってきたわけではない。
勝つか負けるか、
生は勝ち、死は負け 。
そんな究極の勝負をしてきた本物の剣士として、
彼は最後まで 新撰組の一人としての 誇り
をもっていたんだな…と確信した。
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