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多様な家族という詭弁
「多様な」
という言葉にとても疑問を持っている。
例えば、日本女性会議2005福井大会宣言(2005、10、18)には
「一人ひとりが多様な生き方を尊重しあい夢と希望にみちた環境をつくり次世代へとつなぐかけ橋となることを目指し行動します」
とある。
この「多様な」という言葉がいかに問題を含んでいる(偽善・詭弁とも言うべき)かは以下に明らかである。皆さん気を付けましょう!特に、行政の皆さん、気を付けてください!
林道義氏の著書“家族の復権“の中の、「多様な家族」論についての興味深い記述を、ご覧ください。P112~119
「崩しの思想」としての「多様な家族」論
近代家族に対置されるのが「多様な家族」である。「多様な家族」論は平等で優しい家族論のように見えるが、しかしその中には家族そのものを崩そうとする傾向が潜んでいる。
近代家族の歴史的進歩性
フェミニストたちは近代家族は歴史的に特殊なものであり、始まりがあれば終わりもあると主張している。上野千鶴子氏の『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)という著書の題名がその思想を明確に表わしている。しかし私は、近代家族が、その使命を終えたとは考えていない。近代家族の中のどの要素がプラスの意味を特っており、どの要素が克服すべきものかをよく見定めることが必要である。近代家族を全面否定してしまっては、新しいよりよい家族形態は見えてこないだろう。
では、
近代家族のメリット、プラス面とはなにか。
それはまず第一に、家族の中の愛情という性質がクローズアップされてきたことである。夫婦も愛情によって結ばれることが理想と考えられる。また子供を愛情をもって育てるべきだとされる。この考えは、最近の脳科学の知見によっても正しいことが証明されている。親が子供に愛情をもってきめ細かく接すれば接するほど、子供の脳の発達が促されるからである.
また、母親は仕事から解放されて子育てに専念できる体制が可能になり、子供に対してきめ細やかな働きかけができるようになった。このため、子供の情緒的発達にプラスの影響を与える機会が増えた。もちろん、過保護になったり、過干渉になる例も見られるが、それはシステムのマイナス面ではなく、システムの誤使用というべきである。こうした性別役割分担は、また男女の生得的な性質に反するものではなく、むしろ近代家族のメリットだと言うべきである。
この性別役割分担、すなわち専業主婦がいつも家にいて、家事をし育児をするという体制は、家族の中に余裕のある部分ができたという歴史的意味を持ち、それだけ家族の生活の水準や福祉、命の再生産の面で質の向上が見られることを意味している。この要素は決して近代だけのあだ花的な要素ではなく、人類の普遍的な傾向を示している。
もちろんこの形態が、それ自体で理想的だというのではない。男性社会には、仕事のほうが家事労働よりも価値が高いと見たがる傾向かつねに存在しており、そのために男性による女性の思想的支配が家庭の中に生まれる可能性も存在している。ただしそれは近代に特有のことではなく、仕事と働くことに異常に高い価値を置く思想から来ているのである。男女間の価値の不平等と性別役割分担とは必ず結びつくというものではなく、分けて考えることが重要である。
またとくに日本人の男性は働きすぎ、というより働かせられすぎであり、性別役割分担があまりにも極端に行きすぎていることも確かである。しかしそれも近代家族の中で修正可能な特徴である。
要するに近代家族の特徴は、父・母・子という三つの役割が独立した要素として成立しており、そういう意味での「基本家族」が成立していることである。すなわち親が子供を愛情をもって丁寧に育てるという原理が成り立っているのである。とくに母親が家庭と育児に専念できるという「余裕」の要素が出現した点が、歴史的に新しい要素ということができる。
この要素は近代家族のプラス面であり、今後、新しい家族像が現れるならば、その中にも取り入れられる可能性の高い要素である。その意味でこの要素は近代家族の中の進歩的要素と名づけることができる。
「多様な家族」は欠陥形態
近代家族批判は、このプラス面を、最も悪い要素だと認識している。したがって、この要素が壊れて近代家族が崩壊すればするほど、望ましいと評価される。すなわち近代家族のモデルに合致しない形態が現れると、それを「多様な家族」と名づけ、それらが増えれば増えるほど、望ましいと考える。
「多様な家族」とはたとえば親が離婚した片親家族、初めから父親のいないシングルマザーとその子供の家族、不倫の結果非嫡出子を産んだ母親と子の家族、ゲイのカップル(養子として子供を育てる権利を要求している)、子供が大人になっても結婚しないで親の家にいる「大人家族」など。独身者が一人で暮らしている場合も、「一人家族」という名をつけて「家族」であるという。大も「家族」の一員だとして、ペットを含めて「拡大家族」だと主張する人もいる。
これらの「多様な家族」は、近代家族に代わりうる新しい形態であろうか。そうは思えない。なぜなら、それらの中にはプラス面として評価できる要素がないからである。「多様な家族」には、家族にとって大切な構成要素の一つか二つが欠けている。たとえば、父か母が欠けている場合には、子供にとって大切な要素が半分欠けていることになる。「多様な家族」を弁護したり評価する人たちには、この「子供にとっての」価値という観点が欠けている。
(中略)
また、「多様な家族」が「欠落家族」だということを認めたとしても、そうレう欠落形態をそのままにして平等に生きられるようにするのが「優しい社会」「寛容な社会」ではないかと主張する人々もいる。彼らは、その「新しい」形態の家族に対して、一律に平等の価値を認め、法律的にも同等の権利を与えよと主張する。
たしかにそれは大人に対しては寛容であり優しいかもしれないが、子供に対しては決して優しいとか寛大だとはいえない。子供が育つ環境としては、欠落家族はマイナスやリスクを与える可能性の高い形態であることに変わりはない。そのマイナスとは、子供が家族関係の中で父性または母性を受けられないことであり、単に法律的に平等の権利を与えれば解決するという性質のものではないはずである。
(中略)
「崩しの思想」
以上のように、欠落した家族に「多様な」という形容詞を付けて美化・正当化したり、正統的な「基本家族」と同等の権利や価値を認めよと要求する態度は、「基本家族」の正統な価値を貶めたい、あるいは相対化させたいという心理が働いているのではないかとさえ思われる。
こうした「崩し」の心理的動機は、昔からあった。たとえば、古代ギリシアには正統的なプラトン派の真善美を求める思想を揶揄したり嘲笑したりするキュニコス派やメガラ派といったソフィストが存在した。
キュニコス派の名前は、その代表者の一人ディオゲネスが自らを「キュオン=犬」と名乗ったことからきている。メガラはアテネの隣国で競争者であったが没落したため、その出身者は妬みや劣等感から皮肉や警鐘的な態度を好んだ。彼らは体制派の権威を落とすことを喜びとし、反社会的な言論をもてあそんだ。たとえば、メガラ派の代表者スティルポンは、アクロポリスに飾られたフェイディアス作の女神バラス・アテナ(ゼウスの娘)の像を見て』これはゼウスの娘ではなくフェイディアスの娘だ」と言った。彼らは脆弁を多用し、それを用いて既成の権威に挑戦し、その価値を貶めようとした。
こうした詭弁を使って正統的な家族を貶めようとする心的態度は、「多様な家族」論の中にも認められる。
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