再入院


翌週から出社することにした。
ちょうど入院したのが月末で私の仕事は一番忙しかったので
周囲に迷惑をかけないようできるだけ早く仕事に復帰したかった。
入院したのは災難だったけど
結婚して以来仕事に家事にがんばってきた私に
神様が休息をプレゼントしてくれたのかも?と
物事はいいほうに考えるようにして
久しぶりにゆっくりと読書やビデオを見ていた。

あの時のことは今でもはっきり憶えている。
金曜日の10時15分過ぎで
TVはニュースステーションをやっていた。
夫はテレビを見ていて私は横になっていたが
下腹部に異様な気配を感じた。
いつもよりおりものが多いかも?と思いトイレに行って
ナブキンをあてようとすると下着についていたのはおりものではなく
真っ赤な血だった。
しかもいつもは用意してあるナプキンがトイレに置いてなく
動転していた私は夫に尋ねてみた。
夫はTVに夢中で「そんなの知るわけないよ」と
のんきだったので棚の上にあったナプキンを自分でとってトイレに戻ろうとした時
私は出血していた。
なんの痛みもなかったが尿のように大量に出ていて
床の上は一面血の海になっていた。

ここから私はよく憶えていない。
声にならない悲鳴をあげていたようで
夫があわててやってきた。
ただならぬ光景に夫も事態を飲み込んだようで
「病院行こう!」と近所の実家まで車を取りに行った。

私はこの時流産を覚悟していた。
こんな大量な出血でまだ数センチの赤ちゃんが
助かるはずはない。
もっと私が気をつけていればこんなことにならなかったのに。
小さな命の炎が目の前で消えてしまったのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
ひたすらお腹の胎児に詫びていた。
母親になることを自覚していなかった
私への罰なんだと感じた。

病院に向かう途中も「流産の処置はどうなるんだろう?」
とそればかりしか考えられなかった。
ところが診察を受けると医師はのんびりした口調で
「ああ大丈夫。赤ちゃんちゃんと生きてますよ」

安心したと同時に信じられない思いでいっぱいだった。
切迫流産という状態は変らなかったので
またしても入院ということになった。
二度目ということもあり今回は3週間入院することになった。



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