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2008.05.01

映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」@チネチッタ　チネ７

テーマ：辛口映画批評(354)

カテゴリ：劇場鑑賞

　公開３日目の平日の昼間、客入りは１００名程度で年齢層は高い。フィルムのピントが甘く、フィルムがガタツキ気味の最悪な上映である。

［DVDソフト］ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 081003kd2p
映画の話
　石油ブームに沸く20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山労働者のプレインビュー（ダニエル・デイ＝ルイス）は、石油が沸く源泉があるという情報を耳にする。息子（ディロン・フリーシャー）とともに石油採掘事業に乗り出したプレインビューは、異様なまでの欲望で富と権力を手にしていく。

映画の感想
　うーん、一言では言い尽くせないが圧倒された事は確かである。
　まず、冒頭から映画は異常にテンションが高い。映画は１９世紀末から始まる。
　シネスコのスクリーンに、台詞を一切使わずダニエルが金採掘に採りつかれた姿が淡々と描かれる、そして背景には「未知との遭遇」の音楽に狂気性を持たせた様な ジョニー・グリーンウッド の乾いたスコアが鳴り響く。

　ダニエルの欲望は金から石油に変わり、一人で採掘していたダニエルに仲間が加わり、傍らには泣き叫ぶ赤ん坊も居る。月日は流れて、ダニエルの元に一人の若者が自分の住む家の裏に石油の源泉があるとの情報を持ち込み、その情報を金で買う。早速ダニエルは息子のＨ．Ｗを引き連れて情報を買った土地に向かい石油の採掘に乗り出し事業を拡大して行く過程と、石油に採りつかれた男の欲望が描かれる。

　アカデミー主演男優賞を受賞した ダニエル・デイ＝ルイス のなりきりぶりは凄い。黒い邪悪な欲望に採りつかれ、利用できる者は利用し、自分に対して邪魔な奴は殺し、自分の利権の為には平気で嘘を付く、全編通して凄いテンションである。彼に対して対照的に理想に野心を燃やす「第三の啓示教会」の神父を演じた ポール・ダノ も凄い！丁度「マグノリア」で トム・クルーズ が演じた伝道師を思い出すキャラクターでデイ＝ルイスと互角の演技を見せる。ただ、彼のキャラクターは映画を最後まで見てゆくとダニエルの妄想の様なキャラクターにも見える。

　上映時間は２時間３８分。濃厚すぎる展開に映画を見た後はかなり疲労感を伴う。アンダーソン監督にしては登場人物が少なく一点豪華主義にしたのが良い方向に向かったように感じた。本作はアンダーソン監督に多大なる影響を与えた０６年に亡くなった監督 ロバート・アルトマン に捧げられている。