気で吹っ飛ぶ!



という名の公開講座があった。主催はびわこ成蹊スポーツ大学。

スポーツのメンタルトレーニングに「気」が取り入れられていると最近聞いたので興味をそそられた。
スポーツならば、あやしくあるまい。

聴衆は、体育会系の高校生、大学生(ゼミの学生か)、大津市民(主にリタイア組)である。
中途半端な若造は意外と少ない。


1時間目は「気の実践」気の道場を主催している先生だ。
受け持ちの水球チームの高校生を並べて「気」で吹っ飛ばす。
聴衆も吹っ飛ばす。
聴衆は5人に一人くらいが動き、10人に一人くらいが吹っ飛ぶ。
みんなで並んで「気」を受けたが私も連れも動かない。

がっかり・・・!!

まず右手で握手をして、その後手を離し、手をこねるように回すとその通りに相手が転がってしまう。

私は緊張で手がふるえるほどだったから、そりゃ無理に相違ない。

背骨が曲がった高校生に気を送ると、筋肉が適切に動いて盛り上がり
背骨が元の状態に戻っていく。
スポーツによる腰痛などもその場でひくようだ。

「気」を送り込まれた方はお腹が温かく、「いつもと違う感じ」がするそうだ。

不思議だ・・・。でも見ちゃったしな・・・。

なぜだろう・・・。
言うには、先生の脳から相手の脳に「気」を送り、相手の脳の思いこみの壁を破って身体を動かす指令を出させるのだそうだ。
思いこみの壁とは、「吹っ飛ぶわけないよ」などのことである。
他にも「骨折など一日で治るわけないよ」という壁を破ればすぐ治るという。
マジで・・・!骨折修復の化学反応の速度も変わるわけ?
逆に思いこみのせいで化学反応が遅くなってるの?

脳波のθ波が出ていると気を受け取れ、吹っ飛ぶことができるのだそうだ。
θ波は眠る直前の脳波だ。α波より周波数が低い。
要はリラックスして、うがった心理状態でないことのようだ。
先生はθ波を出しながらも眠らないでいられるという点が特殊なようだ。

簡単に言うと、イライラしている時はアドバイスを聞き入れないが、
落ち着いているときなら聞き入れる。
それの「気」バージョンだ、ということなのだそうだ。

アドバイスは音波という波を耳でキャッチして受けている。
それがθ波同士の会話というだけであって、現代人は聞こえる耳を忘れているだけかも知れない。
そう思うとあまり不思議でなくなった。



二時間目は大学の先生である。

「気」で血圧や心拍数、呼吸の数、交感神経と副交感神経の活動が変化するということを、
中国の著名な気功師の「気」を出している時の体の変化を医療機器を用いて測定している。
六字訣(ろくじけつ)といって六つの漢字(中国だから)の読みを唱えると、
それぞれに対応した臓器の血流が増加するという気功があるのだが
実際に測定すると本当に増加していてとっても不思議である。

心髄は呼吸である。
腹式呼吸で副交感神経を優位にし、リラックスするのだ。
呼吸法は他にも色々あって、吸って止めることで交感神経を優位にする方法もある。
つまり不随意の心拍などに対し、自力で変えられるのは呼吸だけなので
昔の人は体を変化させるために呼吸を極めたんだろう。

気功は4000年の歴史を持つ。西洋医学の比ではない。
何らかの芯があるはずで、あやしいだけの代物では全くあるまい。


とはいえこれがまた我が分野にも共通する特有の発表形式であって、
パワーポイントに無味乾燥なグラフ、聞き慣れすぎたしゃべり方、
ちょうどθ波が出ていたために気分良く熟睡。連れに呆れられ。



三時間目はスポーツに応用した例。
プロサッカー選手の専属メンタルトレーナーをやった先生である。
しかも同窓。

サッカーの小野はグラウンドに立つ時、アタマの中はほとんどα波で満たされているのだそうだ。
そうメンタルトレーニングをしたのだ。
α波はリラックスした時に出る脳波である。
緊張したり理論的に考えている時は、より波長の短いβ波支配である。
緊張した試合環境でそれがないとは、よほどの神経の持ち主だ・・・。

方法を伝授してくれる。

まず、行く先にあてを作る。試合に勝つぞ、とかである。
そして自分好きになる。やればできるぞ、とかである。
次に腹式呼吸することで脳にα波を出す。
そしてかるぅ~く目標を言う。勝つんだ~!
そのイメージを想像する。  勝って一番嬉しかった時など。

これがすべてであるようだ。

先生によって、決め手の脳波がθ波であったりα波であったりしたが、
要はβ波でなく、深いリラックス状態であることが重要とみた。
θ波なりα波支配にするためには、まずβ波を消すのが早道なのだそうだ。

脳はイメージと現実の区別が付かないので、イメージをよくするとそれだけで幸せになれるのだそうだ。
また、意志やことばよりイメージの方が効き目が高いので
目標はイメージにすること、よりありありと思い浮かべられるようにすることがポイントだ。
それが難しければ、ことばで反復すればそのうちイメージが出てくること、
力むとβ波が出るのであくまでかる~くがよい、など
今日からみんなも試してみてね!といった勢いで力説していた。

そのあたり、会社に入ってとんとご無沙汰だった、
研究にありがちなマニアックさと明るい仲間意識がかいま見られて懐かしい。

いつもなら「またまた~、関単にできないからすごい人とフツーの人に分かれるんでしょう・・・!」といって終わるところだが、
うーん、さっき吹っ飛ぶのを見てしまったので、うがっていてもしょうがない気がしてきた。

そこで「脳波を測りたい人!」といわれた時に手を挙げた。
前も言ったが挙手は職業柄得意である。

仕切られた先でゼミ生たちに頭に電極を付けてもらう。
ゼミ生の雰囲気はまさにゼミ生だ。懐かしい。
それだけでα波が出てきたので先生に
「話の都合上、始めはβ波にしてくれ」といわれる。
しらんがな。

「目をつぶって何かイメージしてください」といわれる。
腹式呼吸をして、沖縄の風に吹かれるのをイメージすると
会場からどよめきが聞こえた。
どうやらβ波が消えたようだ。
あまりにもどよめくので片目を開けてデータ画面がどこかにないかと見回すと、その瞬間β波が出たようだ。
「何か(卑猥なことでも)考えたのか」と先生が会場を沸かせている。
また目を閉じるとβ波が消えたようだ。

自分にもできるぞ・・・?
これまでかちかちに固まってβ波ばりばりの左脳人間だと思っていたが、
何とかなりそうである。

今日だって、「気」の講座にきたんだし、
意外と柔らかめの人間じゃん?

ちょっと腹式呼吸をして、成功した自分をイメージをしてみますか。


© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: