がらくた小説館

親父

真っ暗な暗闇の中で、なぜか親父との思い出が延々と続いた。

 家族で行った遊園地。初めて親父に反抗して家を出た日のこと。進学が決まって一緒に喜んでくれた親父。
 でももういない…。そんな夢だった。

 目が覚めると祖母が心配そうに顔を覗き込んできた。

「大丈夫だよ。手術は成功したんだからね」
 祖母はそっと手を添えてきた。医者もにっこりと微笑んだ。

「親父は?」
 しかしその問いに祖母は無言だった。

「そっか~。やはり親父は駄目だったんだな」

「お父さんはあんたを…」

「分かってる」

「それじゃ、はずすよ」
 医者はそう言って俺の包帯をみるみるほどいていった。

「これ何本に見えるかな?」

「三本です」

「駄目だよ。左の目で見て答えて欲しいんだ」

「うっすらですけど三本に見えます」




「よしっ!成功だ。良かったな鬼太郎君」














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