がらくた小説館

儚い夢とは分かっていても


 俺は変態じゃないんだ。始めにこんなことを言うのはおかしいかもしれないけど、どうか俺の告白に最後まで耳を傾けて欲しい。

 事の発端はあるゲームを友人に借りたときからだったんだ。そのゲームはいわゆるロールプレイングゲームで、簡単に言うとそのゲームに登場する女性に恋をしてしまったんだ。
 ここで勘違いをされては困るのは、俺はけっしてオタクではないということ。ゲームの本体は持ってるけど、自分でゲームを買ったことはないし、誰かが家に遊びに来た時にしかゲームをやることもない。
 今回はたまたま貰ったゲームを暇がてらにちょこっと手を出しただけなんだ。それに今はやりのメイドカフェや萌え文化には全く興味が無いんだよ。
 付け加えるなら俺はもてるわけではないが、けっしてもてないことも無い。過去にも何人かの女性とのお付き合いもある。

 そんな俺だけど、ゲームの中の女性に惚れてしまったことはまぎれも無い事実。肯定はしないが、否定されるのもどうかと思うのが俺の意見なんだよ。なぜならそこには何の変態性もないからなんだ。ただただ純粋な恋だということ。
 思い出して欲しい。子供の頃にアニメの主人公に憧れたり、その中のマドンナ的な女の子に恋をしたことはないだろうか?たとえば「タッチ」の南ちゃんや、「めぞん一刻」の恭子さん。その思いは大人の今となっても変わらないのではないだろうか?
 自分の理想のタイプとして心のどこかに恭子さんや、南ちゃんのイメージは残っていないだろうか?女性だったら「白馬の王子様が…」の様なもんだよ。
 ただそれだけのことなんだ。
 そしてこの思いは儚いものであって、けっして叶わぬ夢であるということも分かっているんだ。
 そこに変態的な思いはひとかけらも無いんだ。

 それでもあなたは俺のことを変態だと言えますか?歳が30を超えているから問題なのですか?
 そしてこの思いを人には言えない苦しさを、あなたは理解出来ますか?
友人にも、勿論彼女にも…。


「ねえ、ママ?答えてよ…」




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