がらくた小説館

家出


 貧乏生活の上に、飲んだくれの親父。
 俺はとうとう耐え切れずに、両親を前に言った。

「俺、このうち出て行くから」

 すると母が「私も出て行くわ」と答えた。
 母も同じ気持ちだったのだろう。こんな体たらくでだらしの無い夫には、以前から見切りをつけていたに違いなかった。

 しかし驚いたことに、親父本人は涼しい顔をしている。
 こんな事態がくることを想定していたのだろうか?

 そして言った。

「だったら俺も出て行くよ」


 こうして俺達家族三人は、隣町に小さなアパートを一つ借りて、住みなれたこの家を出ることにした。


 老いた祖母を一人残して…。



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