がらくた小説館

天使な俺と悪魔な俺


 天使が俺に囁く。「彼女を助けてあげなさい」
 悪魔も囁く。「ほっとけよあんな女」

俺は両方に耳を傾け、まだ決めかねていた。

 天使「君は困った人を放っておけるのかい?」
 悪魔「あかの他人だ。お前には関係ないだろ」
天使「ほら早く、あの子泣いてるよ」
 悪魔「だからどうした。好きなだけ泣かせておけばいいだろ」


俺は彼女に話し掛けた。天使の勝利だ。「どうしたの?」
彼女「…」

 悪魔「ほら見ろ。無視されてるじゃないか。さっさと立ち去れ」
天使「何度も話し掛けてあげなさい。彼女はそれを待ってるから」


またまた天使が勝った。俺「どうしたの?ねぇ何があったの?あれっ?どこにいくの?」
彼女「……」

 悪魔「ば~か。だから言ったじゃねぇか」
天使「追いかけなさい」


天使勝利。俺「待ってよ。とにかく落ち着いて」
彼女「ほっといてください…

 悪魔「お前馬鹿だよ…もう帰れよ」
天使「彼女は傷ついてる。だから君も諦めないで」


もう天使の言うことしか聞くつもりはない。 俺「いいから深呼吸して、俺の話しを聞いてよ」
彼女「なんなんですかあなたさっきから」

 悪魔「ははは、逆にキレられてるじゃねぇか。言わんこっちゃない」
天使「ここで引いては駄目。苦しいのは彼女も同じなんだから」


俺「君を救いたいんだよ。だから何があったのか教えて」
彼女「もうあんたほんとひつこいよ」

 悪魔「おいおいっ…」
天使「逃げないで、彼女を救うんだ。彼女の気持ちを包んで癒してあげるんだ」


俺「逃げないで、俺は君を救えるから。君の気持ちを包んで癒してあげたいだけなんだ」
彼女「は?」

 悪魔「もういいだろ…」
天使「ほら、もうすぐだ。彼女を抱き締めてやれ。傷ついた心をつつみこんでやるんだ」


俺「さあ、おいで」
彼女「きゃ~何あんた変態?ほんとにやめてよ」

 悪魔「……」
天使「早く追い掛けなさい。ここで追い掛けなければ、あの子はずっと傷ついたままだよ」


俺「待ってくれ~。とにかく何があったのか教えて欲しいだけなんだ~」
彼女「…もう本当にやめてください」

 悪魔「あの子、時計台の下でずっと待ってたんだから、彼氏にでも振られたんだろ…っていうか見たらわかるじゃん…」
天使「離さないで」


俺「捕まえたぞっ。もう心配しなくていいからね」
彼女「いいかげんにしろよ」
パシッ!! 彼女はおもいっきり俺の頬をはたいた。

天使「怒っちゃ駄目だ。優しく笑ってあげるんだ」
 悪魔「お前馬鹿だよ…」


殴られたせいか、この時はじめて悪魔の意見も取り入れることが出来た。
そして俺は優しく微笑みながら「お前馬鹿だよ…」と言って拳を振り上げた。


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