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電話だ・・・今日2回目の朝飯中断!
最初のは仕事の電話、上妻からで、「マリさんの Clip 記事、とりあえず3カット分だが
某放送作家が「使う」ということで局でギャラもらったから今日中に振り込んでおくよ」
「おう、ありがと、また飯おごるよ」
「なら明大前になかなかのカレーショップ出来たから、そこで」
「おう、分かった、そっちの都合のいい日時決まったら電話くれ」
で、スマホの電源切ってすぐのこと。
しかし、今度も好ましい相手だという直感がした。
「リョウさん起きてた?」
「おう、マリ、当たりだな」
「何が?」
「大事な相手だという直感が当たったっていうこと」
「それは大当たりだねえ」
「ああ、もう朝飯食ったかい?」
「まだだよ、それより先に聞いておきたい声があってね」
「またそんな、朝っぱらから俺をその気にさせないでくれよ」
「うふふ・・・ところで何処で何食べようか?」
15分後、杉並区方南町 定食屋「南南食堂」(なんなんしょくどう)
リョウは結構な速足だったからすでに中にいたマリは彼が足を止める音で到着に気づいた。
『カララッ』
この店は福寿と違ってまだ新しく両開きの扉はアルミ製だから滑りが滑らかだ。
「らっしゃい!」
「おはよう、大将、相変わらず太ってんな」
「余計なお世話だよっと・・・あ、リョウさんと待ち合わせだったんですか?」
大将がマリに向き直ってそう言った。
白い歯を見せたマリに
「今日はえらくご機嫌だと思ったらそういうことだったんだ」
マリはそれには答えず、彼女の向かい側に腰を下ろしテーブルに乗せたリョウの左手に
右手を重ねた。
「まあ、笹塚のお姫様にまた春が来たんだねえ・・・」
これは大将を手伝っている彼の母親だが、まるで江戸の昔の奉公人が
主筋の良縁を喜んでいるような口ぶりだ。
「お姫様って、またずいぶん時代がかった言い方だなあ、おかあちゃん」
「そっか、リョウさんは知らないんだね。マリさんのご先祖様は内藤家
3000石の大身旗本だったんだ、
だから世が世なら長女のマリさんはお姫様に間違いないってことなんだよ」
「え、そうなんだ」
おかあちゃんの解説に大きく頷いたリョウはマリを振り返って
「3000石っていうと水城んとこの3倍強じゃない。
こりゃああれだなちょっと考えなきゃだな」
「何を?」
「いや、格が違うだろ・・・うちは800年続いてるって言っても
農家だからね・・・」
「それで・・」
(彼女の目の色に気付けば?リョウさんよ)これは大将の心の声だが
出来れば口に出して欲しかったな。
リョウは特に意識したわけではないが、左手薬指をこすっていた。
こすっていながら目を上げた瞬間に失敗を悟ったのである。
そこで緊急避難行動をとることにした。
「マリ、俺の目を見ろ!」そう言ってリョウは大きく目を見開いた。
「はあ!?」
「いいからよく見てみろ!」
カウンターの奥で大将はしゃがみ込み笑いをこらえている。
リョウの意図が見えたからだ。
(多分あれだ、以前も連れの客が機嫌を悪くした時やったあれだ、
相手の気を逸らすというか、はぐらかすって寸法だな。
ちょっと狡いが上手くいくときもある。リョウさんは結構上手いぞ、
はぐらかされてやんなお姫様)
「だから、あんたのその目を見て何があるっていうの!」
(えーい、一か八かだ!こんな時は勢いのある方が勝つ!)
もうやけくそである。
「マリ!俺の目の奥を見ろ」
「あんた馬鹿か!?活きの良くないマグロのような
その目の奥に何があるって言うんだい!」
「わかんねえかなあ、見えねえかなあ・・・『反省』っていう字が書いてあるだろ?
良―く見てくれよマリちゃん・・・」
マリはたまらなくなってついに噴出した。
「プツ! コンチキショー!訳の分かんない・・ことを・・あ、は、は~!」
カウンターの中でも約一名、腹を抱えて笑いながら
「バカだねー!リョウさんよー勘弁してくれよー、堪んねえよ~
笑い過ぎて、あ、涙でてきたじゃねーか!」
他の客とおかあちゃんは狐につままれたように呆然としている。
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