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新谷健一がいつになく会長の存在を忘れて車窓から歩道に目を向けて身を乗り出した。
「どうしたケン?」
「会長申し訳ありません。大事なお勤めの最中であることは承知の上でお願いがあります」
「何だ言ってみろ」
「はい、そこの歩道をダチが歩いております」
「あれか?」
会長と呼ばれた人物が身を乗り出し歩道を見ながら訊ねた。
「はい、滅多に会えません」
同乗する部下たちは怪訝な顔つきである。会長を本部まで無事に送ることは非常に重要な任務であることは誰でも知っているし、過去に新谷がこんな私用で車を止めてくれるよう願い出たことは一度としてないからだ。
会長は頭を下げる新谷健一の目を見て
「お前にとって大事な男はわしにとっても大事な男だ。許す、松永止めてやってくれ」
会長の指示に運転手は「はい」と返事をしてブレーキを踏んだ。
「新谷さんが降りられる、そっちから一人お山の左につけさせてくれ」
松永が車載電話で指示を出したのは後続のベンツで、お山とは会長のことである。
指示を受けた男がドアの前に来るとケンは会長に頭を下げてドアを開けた。
「おおい、リョウさん!」
今朝のリョウは一人でオールナイトを観て新宿からタクシーに乗り笹塚駅前で降りて反対側に渡り、歩き始めたところだった。
「やあ、ケンさんか・・・長い間飲みに誘わないままで済まない」
と頭を下げた。
「ほんとだよ。もう忘れられちまったかと思ったぜ」
「いや、ほんと申し訳ない・・・」
「今日はどうだい?俺はあと小一時間もするとお役御免の身になるが」
リョウは『断れないな』と判断しこう返事をした。
「これからマリの部屋で昼まで寝ようと思ってる。それから昼飯食ってそっから今日は予定ない。それからで良ければ俺に異存は全く無しだよ」
「そうか・・じゃあ一時過ぎに電話入れていいかな?」
「 OK
一度は殴り合った男たちが嬉しそうに笑みを浮かべて
手をあげて離れていった。
男というのは不思議な生き物である。
小説 「scene clipper」 again 第18話 2025.10.29 コメント(4)
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