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小説「ゲノムと体験が織りなす記憶」 第 4 話
懐かしい我が家・・・
久しぶりだから、チャイムを押してみようと伸びかけた手が途中
で止まった。
玄関の奥から速足で近づく足音がしたからだ。
カラカラと軽い音がして最近作り直したのだろう、そこだけ新しい
引き戸がすべると、母が顔を出した。
「やっぱりお前だ。お帰り!」
「まさか、声もかけてないのに俺だとわかったの?」
「はあ?母親を何だと思ってる。そんなんだから嫁の来手が無い・
・・!」
突然俺は強い力で横に退かされた
「あんた何処から?」
いきなり両手を握られて面食らったマリだが、お袋の強力な磁力には
流石に抵抗できず、慌てて靴を脱ぎながら引きずられるように
付き従っていく。
「お袋、まだ紹介もしてないだろー、相変わらず磁力の強いことだなあ」
急いで仏間に入ると、やっぱり。
ローソクにはすでに火が点いていて線香の準備に取り掛かっていた。
「おふくろ、まだ紹介もしてないのに・・・」
「なに?お前の嫁さんになる人だろ、そうでなければわざわざ東京から
こんなきれいな人が来るもんかね・・東京でしょ?」
「はい、東京でリョウさんのお世話になっています。内藤マリと申します。
末永くよろしくお願い申し上げます」
「まあ、あなたは顔の作りも丁寧だけど、挨拶も丁寧ねえ。
こちらこそリョウをよろしくお願いいたします」
お袋はよほどマリのことが気に入ったようで、畳に手をついて頭を下げた。
「あ、お母さまどうか頭をあげて下さい。お願いします!」
顔を上げたお袋は嬉しそうに、父の遺影を少しだけマリから見やすい位置に
ずらしながら
「さあ、これがリョウの父親よ、あなたもお線香をあげてくれる?」
「はい、お父様、リョウさんのお嫁さんにしていただきます。内藤マリと
申します、どうぞよろしくお願い申し上げます」
マリは線香をあげ手を合わせて親父さんに挨拶してくれた。
それからのお袋の行動は怒涛の如くだった。何時もの事だが・・・
先ずはリョウの好物である刺身用のサバとサザエのつぼ焼き用に
イキのいいものを手配しているようだ。
「東京からお客さんが来てるんだよ!あんたの所に無かったら、
漁協に行って用意して来てよ!いい?頼んだよ」
知り合いの漁師さんに急なお願いをしているようだ。
「お袋、そんな急かしちゃ申し訳ないよ」
「いいんだよ、こんなちっちゃい頃からの知り合いなんだから。
困った時はお互い様が田舎のいいとこさね。それに今日だけじゃない
この間もお前の従兄妹の、ほれ、てっちゃん。あの子が突然遊びに
来てくれた時だってさっきの漁師の・・・竹ちゃん、あの人に頼んで
用意してもらったんだから!」
『このリズムに乗っかったお袋は誰にも止められない』
隣で『気を使わせちゃって申し訳ない』雰囲気を漂わせていたマリに
小声でそう伝えた。
『そうなんだ・・なんか悪いね、お手数お掛けしちゃって』
『いやいや、遠慮すると機嫌損ねちゃうから気にしないでいい』
『わかった・・』
そこへ
「マリさん、お米研いでおくから手伝ってくれるかい?」
「はい、」とマリは勢い良く立ち上がった。
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