日々云々。

日々云々。

休日の風景





いつもより遅い朝食のあと。
あたしは慌しく動き回っている。
あなたといえばコーヒー片手に新聞を読んでいる。

「手伝うよ」
なんて言うわなくてもいいよ。
あたしの事なんか気にせずにゆっくりしていればいいの。
あなたはあたしと違って毎日忙しいんだから。


あたしの密かな楽しみをうばわないで。
結婚前にずっと憧れていた風景なんだから。
あなたに言ったら笑うだろうから教えないけどね。

その代わり家事が済んだらうんと相手してしてもらうからね。
お買い物行ったり、ビデオを見たりふたりで楽しみたいの。
あなたはあたしがそんなことを考えているなんて知らないでしょうね。







「よし、終了!!」
あたしはキッチンのシンクをピカピカにしたあと振り返る。

おや?
さっきまで新聞を読んでいたのにソファ-で横になっている姿が目に入る。
そっと近づき顔を覗き込むと・・・

『スー、スー、スー』
規則的な寝息が耳に入る。
あたしはその場にしゃがみこみかけたまま眠っている眼鏡を外した。

「ばかたれ」
あたしは小さな声でつぶやいた。

人の気も知らないで・・・
あたしがどんな気持ちで休みの日を待っているのか知りもしないで。

ねえ、気が付いてる?
あたしの髪型が変わったこと。
口紅の色を変えたこと。

いきなり大きな手が伸びてきてふわりと彼の香りに包まれる。
「な・・・、起きてたの?」
「誰が『ばかたれ」だ」
「聞こえて・・・た?」
「聞こえるも何も耳元で言っただろうが」

彼の指があたしの唇に触れる。
「これ・・・」
「な、なに?」
「変えたんだ」
「うん」

髪の毛を触られる。
「短くなったな」
「知ってたの?」
「ああ、よく似合ってる」



あ~ん、くやしい!!
・・・降参だわ。
あたしの完全なる敗北。

いくら怒っていても
あたしの好き度ほうが勝ってるせいで
あたしが先に白旗を揚げる。




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