うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

July 23, 2014
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カテゴリ: その他の和歌
備中高松城址公園.jpg


清水宗治(しみず・むねはる)  辞世



武士 もののふ の名を高松の こけ に残して



天正10年(1582)旧暦六月四日(新暦換算6月23日)

憂いに満ちたこの浮世をいま私は渡りゆくのだ。
武士の名を高め この高松の地の
高い松の根方に生えた色褪せない苔のように
とこしえに忠義の名を残して。


戦国乱世に散った悲運の武将の辞世の歌。城主にふさわしい堂々たる調べとともに、和歌伝統の重層的な技巧も凝らした佳品といえよう。

うき世:本来の意味は「憂き世」(憂鬱なこの世)だが、後世「浮き世」(軽佻浮薄な現世)の意味も加わった。「浮き」が縁語「(舟が)渡る」のイメージを導いている。



渡る:彼岸に往く。往生する。

名を高松の:「名を高む(高める)」と、本拠の地名・備中国「高松」(現・岡山県岡山市北区高松)を掛けている。

高松の苔:地名「高松」と具象的な「高い松」のイメージを掛けていて、そこに生える苔。苔は「君が代」の歌にも見られるように、ときわみどり(常緑、エバーグリーン)すなわち「永劫」の象徴。まさに、この歌に込められた思いの通り、400年後の今日もわれわれは和平のために泰然と一命を なげう った作者の人徳を偲びつづけているわけである。

* 備中・高松城の戦い
* 備中・高松城


清水長左衛門尉宗治 首塚.JPG




200px-PD-icon_svg.jpg creative commons.jpg   備中・高松城址公園 / 清水宗治 首塚 (岡山市)

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Last updated  July 23, 2014 06:46:59 PM
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くまんパパ @ 体に気を付けて、のんびり行きたいですね やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
やすじ2004 @ Re:松任谷由実  ハロー、マイ・フレンド(08/16) お元気ですか 今日も湿度が高い一日でした…
くまんパパ @ 男と女の契り 七詩さん、いつもありがとうございます。 …
くまんパパ @ 新仮名づかいの悲劇ですかね、旧仮名に変更します(^^) 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…
くまんパパ @ 短歌では、ありですね(^^) 七詩さん、そうですね、同感です。 私も…
七詩 @ Re:ニヒルなれども面白し(06/08) くまんパパさんへ あの「世の中にたえて…
くまんパパ @ ニヒルなれども面白し 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…

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