星の髪飾り

星の髪飾り

2006/08/06
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makobass さん

 無分別な魂に射し込んできた光。

まるで天の仕業。 導かれてやってきた扉を開ける・・・。

そう、今更何の躊躇もなく・・・開ける。

そして、一挙に広がる空間の灯りに包まれ、哀調を帯びた空気を感じる。


 男が立っていた。

暫く黙ったまま動かない。 左の小さな開口部からもう一人の男の上半身が

突然の訪問者に戸惑う。

「あのうー、面接は・・・面接時間はもう終わりましたが・・・」

 恐る恐る男が言った。

滴る髪の雫から直ぐに目を反らし、意識的に背筋を伸ばす様子を一瞬とどめた。

「あのう、今・・・今何時でしょうか?・・」


 息づかいさえ感じない、か細く切ない声、仄かなライトで解けてしまいそうな体、

「すみません・・・たぶん私は・・・道に迷って、すみません」

 口が利けることで戸惑いが去った男達が女の傍にやってきた。

薄気味悪い、そうではない。 まるで無防備な幻にむしろ吸い込まれるような

不思議な感覚に陥る。 どこか汚れの無い曲線、健気でひたむきな直線。

 訳ありの女を見抜く事に長けている男は、ポケットから出したハンカチを差し出す。

「雨の中を歩いて来たのですね?・・・」

 女は何度か「すみません、」と呟きながら、しっとり濡れた髪を拭いた。

ロングコートを脱ぐと直ぐに、足元がふらついた。

「だいぶお疲れのようですね、さあ!・・ ここに掛けて」


 鏡張りの壁、品良く並んだワインレッドのソファー、大理石の小ぶりのテーブル、

大きなピアノ、孔雀の羽の先で多色を奏でる魅惑のライト。 

空間の神秘にゆっくりと向けられていく瞳は、わずかにブルーで美しい。


 やがて、白く細い指が楕円形のテーブルを撫ではじめる。

「ここは、ここは何処ですか?・・」

 涙で潤んだ瞳が何かを訴えるように、何かに助けを求めるように男を見上げていた。

「はい・・、ここはクラブ紫音です・・紫の音、しおん、です・・」

「紫音・・・」

                 続く
                 (次回月曜夜 「陽炎」)





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最終更新日  2006/08/06 01:55:10 PM コメント(4) | コメントを書く


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