星の髪飾り

星の髪飾り

2007/01/18
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二日続いた雨がようやく止み、裕子はダンスシューズとペットボトルを色褪せた

スポーツバックに入れた。 自転車に跨って、頭の天辺で空に大きな円を描いて気持ちを

整えた。



 新入りに向けられる視線は、太陽を避けてきた裕子には尚のこと眩しい。

訊問のライトを浴びるような眩しさだから、躍動みなぎる太陽とか爽やかな陽射しとは

当然違う。 

 ダンスサークル水曜昼の部は、見渡す限り40代から50前後の元気な主婦。

夜のサークルとは年齢層だけでなく空気まで違う。 ふくよかな風船が弾けそうなのに

テレビショッピングで見る「圧縮蒲団収納袋」のように、酸欠状態を招く予感が漂う。

裕子にとってダンスそのものは、いい汗をかけば技術向上はそこそこでいい。 

基礎体操でよどんだ身体が活性化され、ストレッチで心が空に向かって伸びてくれれば

尚うれしい。 そんなスタートのはずだった。

 ところがいい汗の後の冷や汗が、裕子を待っていた。

ダンスが終わると彼女達にはお決まりのコースがあった。 予期せぬドキドキは久々だった。

リーダー率いる軍団の移動。 ティータイム、と聞えはいいがコレステロールを増やしに

行くような、あるいはダンスで出した汗を取り戻しに行くような恒例。

「香川さんって言ったかしら? ご一緒しません? 」

「行くわよねえ? 」

 僅かな贅肉を着替えながら、メンバーが言った。

「は? はい、ぜひ・・・・・・」

 つい応えてしまった。 

新入りに興味深く向けられた視線に、仕事で馴染んだ笑顔は愛想と引きつりの効果を出す。

着替えを終えると、派手なラメのティーシャツとブランド物の布バッグを潔く肩にかけた

リーダーを先頭に自転車が動き出す。

「駅の向こうなの! ついて来てねー」

「はい・・・・・」

(もうちょっとゆっくり! 群れからはみ出す醜いアヒル)

「大丈夫よね、若いから! 」

 暫くぶりに身体を動かし、少しずつ以前の自分に戻ろうと決めた矢先、正直しんどい。

そうして到着したのは、通りに面した街路樹の木漏れ日の中に佇むイタリアンレストラン。

そこには「街路樹」という大きな文字があった。 

ペパーミントブルーの外壁に、どっしりとした木製のドア。 石段の横には寄せ植えの

鉢がさりげなく並んでいた。 裕子が冷静を引っ張り出して一瞬見たのはそれだけたった。

何がなんだかわからない緊張と成り行き。店内をみる余裕はなく元気な背中に従う。

そうして、復帰の第一歩となる小社会。 自分の設計図とは少し違ったその場所に

今はちょっと身を置いて、時の流れに添おうと裕子は思った。

跳び箱の助走。 薄紙を剥ぐように元気を取り戻した証に、何はともあれ感謝をする。



「お客様10名様で・・・・・・どうぞこちらへ」

 黒いチャイナ風の制服を着た青年が、さわやかにそう言った。

「いえ、今日は11人よ! 」

メンバーは、指定化されたと思われる奥のボックス席に腰掛けた。

そうして色とりどりファッションで身を包んだ彼女達は、クーラーが冷える何のと言った後

さし出されたメニューより早く、「新入り」裕子に視線を向けた。

「・・・・・・よ、よろしくお願いします」

 裕子は常連のオバサンの群れに慣らされたウェイターの、見て見ぬ振りに気付いた。

気付きながらそう言って頭を下げた。

撮影 kitakitune05さん





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最終更新日  2007/01/19 12:06:21 PM コメント(12) | コメントを書く


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