星の髪飾り

星の髪飾り

2008/05/17
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類


 三年前、僕は冬を越えた花芽の膨らみに見惚れながら、ちょうどこの辺りを歩いていた。

専門課程を終え、就職が決まった仲間達の目は輝き、声は俄かに弾んでいた。 

「フィラデルフィア美術館展」  

僕がコースに加えたもので、彼等にとってはオマケのようなものだった。

青い矢印を辿って行くと、やわらかな陽射しに包まれたレンガ色の美術館が

佇んでいた。 僕は一点のぶれもない絵画の中に入っていく心地だった。

「柴田君って前から好きだったっけ? 絵とか、そういうの」

 千尋が、にきびを隠す為にカットした前髪を小さな手で触りながら言った。

「動物園よりはね。 だけど・・・」

 美術館は初めてだ・・・それは心地よく途切れ、前を歩く数人が歌いはじめた。

「さくらーさくらー 今咲きほこれー・・・」

「未だ咲いてないじゃん!」

 隆夫が照れくさそうに辺りをキョロキョロ見ている。 茂みの向こうの人集りからは

ラテン系の音楽が流れていた。  


「桜はね・・・思わせぶりなの。 さっき見た絵のように」

 歌声に紛れた朋子の言葉は、僕の肩越しで程よく戯れていた。 

モネの「睡蓮」「日傘の女性」、それともフェルメール? きっと僕に浮かんだものは

朋子の言う「思わせぶり」とは違う。 

すると僅かなジレンマを見透かしたように、朋子が囁いた。

「柴田君、あのね・・・」







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008/05/19 11:49:07 AM コメント(12) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: