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2017.11.19

上松美香/パシオン～ラテン名曲集

テーマ：ラテン音楽(421)

カテゴリ：ラテン

　ラテンの魅力が満載、上松美香のアルパが奏でるお馴染みの名曲集
　アルパの音は、土の匂いがする。だれもが子供の時に経験したことがある、夏休みの夕立の後の、むんむん立ち上る草いきれの空き地のあの匂い。いや、上松美香が弾く力強いアルパの音は、灼熱の黄色い太陽に照らされたパラグアイの土の匂いであろうか。また大きな麦藁帽子のソンブレロ、山の字の形をしたサボテンでお馴染みのメキシコの暑い夜を想像していただきたい。エネルギーをいっぱいにため込んだ土は夜になっても冷えず、やがて夜露にぬれ、人を包み込むような熱気を放つ、あの匂いである。一方で、爪で引っ掻いて発音するアルパの音は、和琴を思わせる。上松が奏でる哀愁を帯びたメロディーラインが郷愁をそそるのは、そのせいであろう。このように、南米パラグアイやメキシコ、そして東洋の日本という一見かけ離れた複数の音楽のエッセンスが溶け合ったようなアルパの音色は、聴く者の心を打つ。アルパは、スペイン語でハープという意味である。一言でハープと言づても、古代から何十世紀にもわたって長く用いられた弦楽器の弓の形をしたものと、弦が共鳴胴に向かづて張られているもの、そして現在のグランド・ハープの原形になる枠型の竪琴におおよそ分けられるという。アルパはインディアン・ハープまたはラテン・ハープとも呼ばれ、グランド・ハープを少し小さくしたようなペダル無しの竪琴と言えよう。さて、一般的にハープは、美しい女性が優雅に奏でるものだと思っていらっしゃる方も多いと思う。確かに音楽の神ミューズが抱えているのはハープであり、日本人ハービストには女性が多い。しかしパリ管弦楽団では、永らくハープ奏者として活躍したのはフランシス・ピエールという男性ハービストで、やはり何度も来日している息子のファブリスも指揮者でハービスト。長い間日本でハービストを志した者が必ず門をたたいたと言ってもよいヨセフ・モルナールも、上松がパラグアイ留学で師事した、セルソ・ドゥアルテ・ロペスも男性ハービストである。つまり、あんなに大きな楽器を操り、演奏会のためには自分で楽器を移動しなければならないこともあるのだから、本当はからだの大きい男性がより有利な楽器なのである。太い弦を弾くので指先も強くなければならない。ただ、アルパはグランド・ハープより軽量で、扱いはより平易であるという。グランド・ハープが、その優雅な音色と雄弁な表現力に魅せられた作曲家によって、多くの室内楽曲のレパートリーを提供され、さらに大オーケストラの中で用いられたのに対し、スペイン人がアメリカ大陸に持ち込んだアルパは、独奏のほか民族色豊かな小編成のアンサンブルに迎え入れられることが多い。このディスクでも、ギターやチェロのほか、ラテン音楽特有の楽器、たとえば小型ギターのようなペルーの楽器チャランゴ、ベースを受け持つメキシコの楽器ギタロン、マラカスなどとアルパとのアンサンブルが一番の聴きどころである。上松の師匠をはじめ、ドゥアルテ・ロペスー家の優れたラテン音楽奏者の共演を得て、上松のアルパが一層引き立てられていることも特筆したい。また収録曲は、どれも耳にしたことがあるような親しみのある曲ばかり。ご存じ「コンドルは飛んで行く～花祭り」や、しっとりとアルパが歌いチェロがそれを支える「エクアドル」、思わず踊りだしたくなるようなリズミックなダンス音楽「ビーノ・ブランコ」、「ラ・バンバ」など、テキーラを飲みながら耳を傾けるのはいかが?（野平多美）
　熱く､楽しく､激しく､躍動感溢れるラテンのアルバム｡アルパ奏者の上松美香による3rdアルバム｡ラテン音楽の中のアルパという位置づけで､｢ラ･バンバ｣などお馴染みのギター､チェロ､チャランゴ､ハラナ､クアトロ､マラカスとの競演によるラテン特有の楽しく激しいリズミカルで楽しい楽曲を収録｡
　シエリト･リンド
　アポロニータ
　ラ･ビキーナ
　ビーノ･ブランコ
　キルパ

　グアラニ帝国
　コンドルは飛んで行く～花祭り
　サパテアード･ベラクルサーノ
　遥けき恋路
　君の影になりたい
　イスラ･サカ
　エル･ハラベ･タパティオ
　ラ･バンバ
　　上松美香(アルパ)
　　セルソ･ドゥアルテ･ロペス(ギター)
　　ファン･ホセ･ドゥアルテ･ロペス(ギター)

　録音2001年9月5～11日､エストゥーディオ･マスルイード(メキシコ)
　解説:横堀朱美
　SEVEN SEAS(キング･レコード)　FKCC-41119(国内盤商品番号KICC-365)
　国内盤(KICC365)発売年月日:2001年11月16日
　購入年月日:2002年7月18日(CDクラブ)