MAD GIRL

MAD GIRL

―花鳥風月―第6章



               パート6

『幸せになろうか。』

とうとう・・・。
とうとう付き合う事になったわたしたち。
受験(推薦)が近いのに悩んでるよりマシ。
・・・・だけど。
これで本当によかったのかなぁ?

「ただいま。」
「ユキ・・・?あんた最近遊んでばっかだけど・・・、大丈夫なんでしょうね?」
「うん、平気よ。」

受験・・・かぁ・・・。
何かそろそろ本格的。
学校では推薦(面接)の練習始まってるし、皆受験勉強一直線。
やっぱり自分で行きたい高校選んで、張り切ってるんだろうなぁ・・・。

わたしは皆と違う。
別に高校なんて行きたくない。
親が行けってゆーから行くだけ。
何だか嫌になる。

「・・・・あ。」

携帯にメールが1件。
・・・詩音からかな・・・・?

受信メール1件。
アキラ

・・・・。

「え・・・。」

『色々とゴメンナサイ。』

謝りのメール。
一体、どうしたってゆーの?

わたしはアキラに電話をかけた。
メールじゃ長くなりそうだし、何か謎で・・・。

「もしもし?」
『ユキ・・・?ごめん・・・なさい・・・・。』
「は?」

どーゆう風の吹き回し?
アキラが謝ってきた・・・。
理由は!?

『初めは・・・、秋人さんなんてどーでもよかったの・・・。ただ、素直にユキの付き合ってる人がどーゆう人なのか見たくて・・・っ。』

わたしはただ・・・。
泣いているアキラの声を聞いて、うん、うんと・・・。
相槌を打つだけしか出来なかった。

『けど・・会って・・・、一目で好きになっちゃって・・・っ。あたし・・・、欲張りだから・・・ユキとも仲良くしてたくてっ、打ち明けたら・・・こーなっちゃって・・・っ。』

ああ、そっか。
アキラもわたしと一緒だったんだ。

「うん・・分かったよ。」

わたしも詩音を好きになっちゃって・・・。
そっか・・・。
一緒だったんだね。

『え・・・?』
「明日・・・、いつもの時間に迎えに行くね・・・。」
『ユキ・・・、ありがと・・・。』

恋って急にやってきて、急に進展させるヤツ。
イイヤツかもだし、ワルイヤツかも。
だけど、その恋ってヤツのお蔭で、毎日が楽しいのかも知れないね。

「ふぅ・・。」

家に居て、ただぼーっとするだけ。
受験勉強なんてしたくない。
無理よ。
目標なんてないし、どーせ高校なんて受からない。

未来。
どーなるかなんてわからない。
わたしはわたしであって、誰にも邪魔されたくないものがあるの。
ねぇ、お願いよ。
一つの繋がり
一つの空間。
お願いだから誰も邪魔しないで・・・。

「・・・・・。」

天井を眺めて、大好きなMDを流す。
この時間が大好き。

「・・・はぁ~・・・疲れた。」

人生長くてウンザリ。
わたしより生きてる人は沢山居るのに・・・。
何してんだか・・・・ネ。

大好きな音楽。
部屋一面に響いて居心地がいい。
この時、全てを救ってくれたのはパンクとw-inds.の曲。

心にじんわりきた。
わたしの中のイヤなモノ。
全部吹っ飛ばしてくれたんだよ。

彼らにお礼は言えないし、勿論会えない。
だけど・・・、本当にありがとう。

わたしはユキ。
ごく普通の中学3年生。
身長は162.
性格は明るい・・・筈だった。

何がイケナカッタんだろう?
どうして変わってしまったんだろう・・・。
中学2年生。
急にグレた。
リストカットを始めたのも中2から。

・・・・・・・・あぁ、そっか・・・・・。
アレがキッカケだったよね。
・・それは言えないけど(爆)

人間って突然変わる。
そんな時があって、わたしはその中の一人。
自分では変わったなんて気づかないし、
勿論変わっただなんて思わないだろう。

「・・彼氏・・・かぁ・・・。」

初めて彼氏が出来たのは中1の時。
その時はお互い上手くいってないって自覚して別れた。
そして次は中2。
かみ合わない会話に苛立ち。
わたしから吹っ切ったって感じだった。

そーいやぁ、恋愛経験。
結構あるかも、わたし。
・・・けど、どれもパっとしない恋愛だったなぁ。
詩音とは、どーなるんだろう・・・。

運命の人とか、よくお話の中では例えられるけど・・。
わたしにはそんな人。
居ないと思う。

「・・・・・・・・・。」

バイブレーション。
わたしを揺さぶる。

「メール・・・?」

付き合って上手く行くのはどれくらい?
お互いを必要とし合うのはどれくらい?
分からないわよ、期間なんて。
実際、どれだけなのか・・・。

「詩音だ・・・。」

心をくすぐる甘いメール。
それも、いつまでわたしに送ってくれるのですか・・・?

現実は時に残酷。
夢見る事さえ許されず・・・。
また今日も彷徨う。

誰もが道しるべを隠すから、
わたしは何処へ行けばいいのかなんて分からない。
だけど、貴方は違うよね。

―翌日―

わたしはいつもの通りアキラを迎えに行って、アキラを待つ。
何だか久しぶりのせいか、ちょっとジレッタイ。

「おはよ。」
「おはよ~vvvV」

そしていつもの通り登校。

学校に着いて、自分の教室へ行って。
そしてわたしの机には・・・。

「ちょっと!」
「んー・・・?」

わたしの彼氏がお眠り中。(激怒)

「ど・い・て!」
「眠い・・・。」

眠い・・・と一言。
彼はまた顔をうずくめる。
ちょっと~・・・。
わたしが荷物の整理出来ないじゃない~!


「ちょっと~・・・、詩音!!!!!」
「うん。」
「どいてってば!」
「・・・うん。」
「早く!!」
「・・・・ん。」

・・・・・・・・・・寝たな?

いやいや!
寝るなよ!!!!

「ちょっと!邪魔だっつってんの!!!」
「今起きるぅ・・・。」
「うるさいよ!じゃあ早くどけよ!」
「うん・・・。」

き――――――ぃ!!!
ムカツク~!!!
どけっつってんのよ!じゃあ早くどきなさいよ!?
わたしが座れないっつってんのよ!
あんた何なのよ!?

わたしの頭がどんどんショートして来た瞬間。
ガバっと詩音が立ち上がる。

「短気は損気。」
「・・・・・・・・・・(激怒)」

詩音はいつも平然とした態度で物事言うの。
なんっかそれがムカツク。
いや~、痛いとこ突付かれてるからかしら・・・?
まぁどっちにしろムカつくわ・・・(笑)

「早く教室戻りなよ。」
「俺の教室ココv」

や、絶対違うよ・・・。
うん、かなり違ってる。

「あんた教室3階でしょう?わたし知ってるんだからね?」
「・・・・カタイ事言うなよ・・・。」
「言うよ。」

正直、周りには詩音とわたしが付き合ってるって事。
バレないようにしたいんだよね。
え?
理由?

・・・・。
詩音に言ったら怒りそう・・・。

え?
何でって・・・。
詩音は割りと女の子からの注文を浴びてる子。
私みたいな子が近づける相手じゃないんだよね、ホント。
肌が白くて綺麗な顔立ち。
まるで・・・女の子(ボソ

だけど、身長が高くて、肩幅広くて・・・。
何気喧嘩も強い。
あ~、男なんだな~って。
何だか圧倒されちゃうよ。

「ね、もう朝休み終わるよ?教室帰りなって。」
「うん、帰る帰る。」
「じゃあどきなって。」

まだ人の机を分捕ってる詩音。
も~、いい加減邪魔なんだけどなぁ・・・。

「うん、気が向いたらどくから。」
「それじゃー困るっつーの!」

も~う・・・。
これじゃあてっきり詩音のペース。
わたしのまれてるよ・・・。

「・・・・・・・。」

高校受験。
もう間近。
なのに全く変哲もない生活。

「ねぇ、詩音。勉強教えてよ。」
「・・・・はあ!?」

ムクっと顔を上げて、驚く彼に、逆にわたしが驚いてしまった。

「な、何でそんな驚くのよ!」
「うん、何となくね。」

逆にわたしが恐縮しちゃう。
そして、放課後に勉強を教えてくれるって約束をして、詩音はまた寝た。
先生が来ても、自分の教室に帰ろうとはしないで、ずっとわたしの教室に居たんだ。
何てヤツだ・・・。

「ユキ、何か疲れてない?」
「え、いんや~?」

休み時間。
クラスの友達と喋ってたんだけど、その時事件が起こったんだよねぇ・・・。

「ねぇ。」
「え?」

グイっと腕を引っ張られて、振り向いたら・・・。

「吉田さん・・・。」

とその他がわたしにガン飛ばし。
何よ?
喧嘩ならそれなりに負けないわよ?

「あのさ、斉藤君とどーゆう関係なの?」
「えぇ?」

どーゆうって・・・。
あぁ~、もう。
わたしこーゆう事聞かれるのスッゴク嫌なんだよねぇ。

「とぼけないでよ?あんたが斉藤君に近づいてるんでしょ?じゃなきゃアンタみたいな女!斉藤君が相手にする訳ないじゃん!」
「・・・・。」

まぁ、言わせておけばいいかな~なんて。
わたしは思ってた。
逆に喧嘩になるのは嫌だし、むしろ面倒なのは大嫌い。

「ねぇ、黙ってないで言ったらどうなんだよ!大体、あんたみたいなブス相手にする訳ないじゃん!何付け上がってんだよ!」

は~ぁ。
こんな時に肝心な詩音は来ないのかねえ~・・・。
・・・まぁ、来たら来たで余計ややこしくなるだろうし?
逆に来ないで・・・。

「オイ。」
「なんだよっ!!!!ぁ・・・っ。」

・・・・・・・・・・・・・。
来ちゃったよ、詩音が・・・。

「詩音・・・、行こう?」
「お前、散々言われて黙ってんのかよ。」

―――・・・・・え?

「・・・オイ。」
「詩音・・・、別にわたしはっ。」

黙ってる・・・って?

「お前ら、コイツに言うんじゃなくて、文句があんなら俺に言えよ。それに、俺は素でコイツが好きなだけだから。分かったら散って。」

ねぇ、別にわたしは・・・。
面倒な事になってほしくないから言っただけだよ?

「詩音・・・。わたしさ、ただ面倒な事になりたくないから・・・・。」
「俺は嫌だ。」

・・・え?
嫌?嫌って・・・、何が・・・?

「俺のせいで、お前に嫌な思いさせんの嫌なの。」
「・・・わたし、別にきにしてないし!」

あなたは優しいんだ。
とても、とても・・・。
でもね、私はそこまで弱くないんだ。
もっと、もっと強いはずだから・・・。

「・・・・・・・。」
「今日、一緒に帰ろう?すぐバイバイしちゃうけど・・・。」

わたしと詩音の家は全く逆方向。
だけど、わたしは少し遠回りをして帰る。

放課後。
友達とバイバイって言い合って、わたしは昇降口へ向かう。
靴を履き替え、そして詩音を待つ。

「・・・・。」

あーぁ。
何か付き合ってるって知られたくないって思ったけど・・・。
何かもうバレバレだし。
わたし、どーしようかねぇ・・・。

「ユキ。」
「あ、詩音。」

けど・・・。
何か嬉しいんだよね。
かばってくれた詩音が・・・。
変な自分。

トボトボと路地を歩いて、わたしは詩音に言わなきゃいけない言葉があった。
まだ、さっきのお礼を言ってない。

「詩音、あのさ・・・。」
「んー?」

わたしの声で、詩音の目線がわたしにおりる。

「さっき、ありがと。」
「・・・・あぁ。」
「本当は、嬉しかった。・・・けど、あんな事しか言えなかった。だからゴメンと、ありがと。」
「うん。」

また、トボトボ歩いて、もう少しで二人が歩く路地は終わる。

「明日、推薦だな。」
「あ?あぁ、うん。」

そう。
明日は推薦の日。
詩音は推薦蹴ったから、明日は中学でお留守番。

「頑張ってこいよ!」
「うん、ありがと。」

わたしは笑顔でそう答えた。

詩音ともっとイッパイ居たいけど・・・。
詩音ともっとイッパイ話したいけど・・・。
時間が無いね。

「それじゃ・・・。明日ネ。」
「うん、頑張って・・・。」

シドロモドロとした感じで別れ。
なんだかジレッタイ。

「ユキ!」
「え?」

突然の詩音の声で、わたしは振り返った。

「ダーイスキ!」
「ばっ・・・・!」

笑顔で詩音がそう言うから・・・。
わたしの顔は一気に点火。

「そんなん、知ってるよ!わたしもどぅわぁ~いすき!」
「・・・・ばーか!じゃな!」
「うん!」

神様は意地悪で神様は優しい。
だから・・・、そうでしょう?
神様は意地悪だけど優しいの。

だから神様はわたしに詩音を授けてくれた。
言い方オカシイけど、そうだよね?
わたしを変えるために、詩音と出会わせてくれたんだよね。

面接の日。
わたしは凄く緊張した。
いつもウザイ程ひっついてくる詩音が、今日は居ない。
友達と希望校へ向かった。

「ユキ、どうしよう~!私何も考えてない~!」

仲良しのアイがそう言ってきた。

「え?わたしもだよ?頭空っぽ。」
「え?やっぱ?そうだよね!」

推薦の事なんて空っぽ。
推薦なんて落ちるもの。
そう言ったのは先生だ。

「・・・・・・・。」

それより、詩音が気になる。
今日、ちゃんと学校に行ったのだろうか。
それとも前みたく遅刻したのだろうか・・・。

何だか詩音よりわたしのが、詩音の事ずっとずっと好きなようで憎たらしい。
こんなにも好きになっていたなんて気づかなかった。
前まで大嫌いだった彼が、いつの間にかこんなに好きになってたなんて・・・。

正直、自分でも驚きだ。

「ユキ?ユキ!!」
「ぇ、何?」
「あたし達の番だよ??聞いてなかった?」
「あ、ごめん。」

アイツの事考えすぎて、わたし・・・。
やだな。
こんなにも想っているのに素直になれない自分。
苦しいよ。

面接部屋に入って、わたしは淡々と質問に答えた。

「将来の夢は?」

面接官がニコニコと聞いてくる。
わたし、将来の夢なんて・・・、ない。

一瞬、脳裏にお嫁さんなんてよぎったけど、程遠い。

「お笑い芸人になりたいです!」

咄嗟に答えた。
面接官は大爆笑。
そりゃそうだろうねぇ・・、こんな答じゃ。

高校受験。
生まれて初めてお受験なんてした。
受けたくないのに・・・。
結局。わたしも親には逆らえずに居たんだ。

流れに逆らえない。
魚のように上手く泳げなくなっちゃうから。

面接を終えて、わたしはふぅとため息をついた。
友達と昇降口で待ち合わせをしているので、わたしは急いで昇降口へ向かった。

「あ、ユキ!面接・・・、どうだった?」
「無理。目茶苦茶。面接官には大爆笑されるし、受かる見込みなんてないね。」

暗い空気が漂う。
そしてわたし達はバス停へ向かった。

暗い顔して、アイが話しかけてくる。

「ねぇ、ユキ。あたしね、正直推薦で受かればラッキー♪とか、甘い事考えてた。」
「・・・・・・・。」

それは誰でも当たり前。
だけど、アイの様子が違うの。
だから、わたしは黙って聞いていた。

「でもね、今日・・・、面接受けてみて・・・・。何だか凄くショックだったの。」
「どうして?」
「うん、全然・・・緊張して喋れなかった。」

そんなの、わたしもそうだよ。
変な事ばっか言ってた。
ううん。面接中だってのに、アイツの事が頭から離れられなかった。

「ねぇ、アイ。推薦が受験終わりじゃないんだよ。まだまだあるじゃない。私立の入試、それと公立のだって。ココでもしダメでも終わりじゃないじゃん。」
「・・・・そうだよね。」

皆考えてるんだ。
受験の事。
わたしなんかちっとも考えて無かったよ。
人生についてなんて・・・・。

終点でバスを降りて、わたし達はくたびれた様子だった。
これから学校へ行って、人数確認の為、ちゃんと到着したか・・・。
点呼(チェック)を取らなければならない。

学校へ着いて、わたし達は重い空気で靴を履き替え、そのまま教室へ向かった。
アイ達は5組、わたしは6組。
わたしだけ1階の教室なので、途中。アイたちと別れた。

「おかえり!」
「・・・・あ。」

詩音だ。

「どうだったよ~?」
「ダメだったよ。あんたのせいだ!」
「んぁ?俺のせい?」

惚けた顔をする詩音。
そりゃそうだ。これは八つ当たり。

「詩音の事考えてたら・・・、変な事ばっか言っちゃったサ。」
「え・・・。」

俯きながらわたしはうったえる。
かなりの八つ当たり。
最悪だよ。本当。
だけど・・・・、どうしようもないことなんだよね。

当たる人が詩音しか居なかったんだから(え

「まぁいいや、チェック済ましたら帰ろう。」
「うん。」

わたしは会議室に向かってチェックを済ませた。
軽い鞄を持って、詩音の横にチョコンと立つ。

「あんた・・・、デッカイわねぇ~。」
「183あるからね。」
「っけ。」

どんなの背の高いわたしでも追いつけないわよ。
いや、わたしより背の高い子居るけどね。

「さってと~。明日は休みだし!ゆっくり出来るなぁ~☆」

んっと手を空へ伸ばし、わたしは伸びた。
今日はどっと疲れたし。
何だかもうクタクタよ。

「明日俺とデートしないの?」
「・・・・え?」

デート・・・・?
な、何か緊張する言葉ね。

「嫌ならイイケド~・・・。」
「あ、嫌じゃない!嫌じゃない!!あ・・・、えと、め、メールして!それじゃー!」

わたしは走った。
とにかく走った。
だって、嬉しかったから・・・。

デートなんて・・・。
嬉しかったんだよ・・・。

家に帰って、部屋に閉じこもる。
携帯を覗けばアナタからのメッセージ。

「ぁ・・・。」
『明日どこ行く?映画?街歩き?』

詩音からのメール。
何だか嬉しい・・・、それだけだよ。
詩音からのメールを見ると、胸がギュってなる。
何だか変な気持ちだ。

―花―

―鳥―

―風―

―月―

どれもこの世にあっておかしくないモノ。
どれもあっても不自然ではない・・・。


アナタは・・・・・――――――。


翌日。

「おはよう、詩音。」
「おう!はよ~。どこ行きたい?」
「・・・都会。」
「・・・・・・・・都会?」

詩音が首をコトンと傾ける。
都会と言ってもいろいろあるし・・・。

「東京とか?」
「うん。わたし、あんまり都会行った事ないから・・・。」
「そか、じゃあ行こうっか!」

苦手だった。
都会が・・・。人ごみが苦手だったし。

電車に揺られて、わたし達は原宿へ到着。
初めてではないけど、詩音と来たからかな?
ナンだか新鮮だった。

「人多いねぇ・・・。」
「都会ですから!さ、行こう!」

原宿の竹下通り。
歩いて渋谷まで行って・・・。
ちょっと大人な町、銀座とか行ってみた。

銀座には、ブランド物のお店がいっぱい並んでて、どれもあまり興味は無い。
ブランド物の価値。
中学生のわたしにはまだ分からなかったんだ。

「ねぇユキ。何か記念に買ってやるよ!」
「え・・・、いいよ。何か高そうなのばっかだし。」

何処にお金があるのよって。
そう思ってた。

「大丈夫!俺お金はちゃんと持ってます!」
「え?何で?てか親から貰うしかないよね、うん。」

わたしは少し笑い飛ばして答えた。

「違うよ、俺芸能活動してるんだ。ってもモデルだけど。」
「・・・・・・・・・・・。」

詩音の話によると、小さい頃から子役でデビューをしていて、海外のみで活動していたらしい。
だから、お金には不自由してないんだって。

「何で黙ってたのよ。」
「え?だって言わなくてもいいかな~とか思ってたし。」

少しふてくされた顔してわたしは歩く。
それに「ゴメン」と謝りながら詩音がついてくる。
別に怒ってない。
ちょっと悔しかっただけ。

詩音の事、何でも知ってるつもりで居た。
・・・けど、そうじゃなかったから。

「ね、ここ入ろうよ。」
「え?」

詩音が指差す店。
そこは綺麗なジュエリーショップ。
高価なお店だろう。

わたしはそんな店に「入れない」と断ったが、詩音が無理やり腕を引っ張る。
わたしは諦めて、彼に従う事にした。

「わ~、綺麗綺麗!すっげー!宝石とか生で初めて見たかも!」
「そりゃよかった。んで、何が欲しい?」
「は!?」

何が欲しいって・・・。
ガラスケースの指輪とか見ても、どれも高価で、数十万もするものばかりだ。
とても選べるモノではない。

「わたし・・・、要らない・・・。」
「・・・・。」

詩音はわたしの顔を見て、そして店員さんに聞く。

「あの、この子の指・・・。薬指はかってもらえますか?」

・・・・え?

店員さんはちゃくちゃくと計る。
そして詩音にサイズを告げる。
何をする気!?こ、殺されるぅ~!
ってんなわきゃない!!

「お前、俺と誕生日一緒の日だよな?」
「・・・あ、うん。」

マジマジと誕生石を見て、詩音が言う。

「このペリドットのリング。11号の下さい。」
「・・・・・・!?」

店員さんが箱に入れて、綺麗にラッピングしてくれた。
微笑ましい顔でわたしを見て「幸せね」って。
そう呟いた。

本当・・・。
わたしは何て幸せなんだろう・・・。
こんな幸せでいいのかな?なんて、心で何度も思った。

店を出て、しばらく歩いて、電車に乗って・・・。
地元へ着いて・・・。
駅のホームで詩音が呟く。

「後で、指輪はめよっか!」

それにわたしは答える。

「・・・・うん。」

嬉しいけど、何だか恥ずかしくて。
照れくさい。

昔付き合った彼とは、ペアリングとかしたけど。
何だか今回は新鮮な気持ち。
高価な指輪だからとか、そんなんじゃないけれど・・・。
何て言うのかな?
こんなシチュエーション初めてだったの。

分かれ道。
二人の影が長細く映る。
詩音がわたしを家の近くまで送ってくれる。
家の目の前には公園がある。

「さて・・・っと。はめてみてよ!」
「あ・・・、うん。」

詩音はそう言って、箱からリングを取り出した。
それを、わたしの薬指にそっとはめる。

「ピッタリだ・・・。って当たり前か。」

なんて笑う詩音。
わたしの目からはポロポロと暖かい雫が零れる。

「ゆ、ユキ・・・?」
「・・・ありがと・・・。嬉しい・・・。」
「・・・あ、いや・・・。」

流れる涙は暖かい。
それに、あなたの笑顔も温かい。
体温、温もり・・・。
全てが大好き。
そう、あなたの全てが・・・。

「嬉しい・・・。」
「ううん、どういたしまして。」

ニコっと笑うあなた。
わたしもそれにつられて、ニコっと笑った。
その時のわたしの顔。
きっと涙でとんでもない顔だったかも知れないね・・・。

「なぁ、ユキ。幸せになろうよ。高校受験終わって、高校を出たら・・・。」
「え?」
「今すぐは無理だろう?だから、約束・・・。ね?」
「・・・・うんっ・・・!」

小さな暗い夜の公園。
そこで、わたし達は抱き合った。
キツク、ギュっと抱き合った。
その日からかな?
愛情がグっと深まったの。
よく、覚えてナイけどね。

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