ビーグルのリー

<ビーグルのリー・後悔>

私の家には、私が生まれる前から犬がいた。
ビーグルのリー。
犬に犬種というものがあるのさえ知らないままに出会い
そして別れた。
4~5歳くらいの事だっただろうか。

ゆんたと出会い一緒に暮らし始めてから
それまで忘れていたリーとの事を
突然思い出す時がある。


やんちゃだったリー

リーの手触り、大きな鈴

仕草。



リーは、私が生まれる少し前に亡くなった祖父が
猟犬として飼っていた犬だった。
祖父が亡くなってからはその役目を終え
私にとってはただ
「家にいる犬」だった。

猟犬としての役目を終えた後
リーは私達家族とどんな思いで過ごしていただろう。
幸せだっただろうか。

私には
リーを手荒く扱った記憶がある。
失われてしまっただけかもしれないけれど
リーと散歩に行った記憶も、
ボール投げをした記憶も、ない。

ただ一つ分かる事は
ゆんたを愛する気持ちと、決して同じではなかった。
そういう風に可愛がってあげる事はできなかった。

私は子供で
ただただ子供で
リーの事は好きだったけれど
自分より小さな生き物を触りたい、遊びたいという欲求だけだった。

祖父が亡くなった後も
本当は野山をまだまだ駆けたかったかもしれない。
手荒く扱う子供の事など煩わしかったかもしれない。

リーのためにしてあげられる事は、沢山あったはずなのに。



人に言えば子供だから当然と言われるかもしれない。
それでも
私はあの頃の私を思い、リーの気持ちを思い、

自分を責める。

リーがいなくなった時
「どこに行ったの」と何度も両親に聞き
困らせた。

実家に帰ると、今でもリーの使っていた物が残っている。
あれからもう20年以上が過ぎたのに。

ゆんたと暮らし出して初めて
リーの事を思い泣いた。
ゆんたの体をそっと撫でながら。

リーはもう、どこにもいない。。




<追記>
リーとの思い出で、どうしても不思議に思う事がある。

ある日、リーが私の通う保育園に来てしまった事があった。
家を出る時には確かに家にいたリーが、保育園に現れたのだ。

保育園の広場で遊んでいると、見覚えのある犬がいる。
リーだ。
私の家から保育園まではバスで通っていたので少し距離がある。
だけど私にはリーとしか思えなかった。

「リー!」と呼ぶと傍に来て
この思わぬハプニングに子供達は喜び、
ひとしきり一緒に遊んだ。


途中の記憶は無くしてしまったけれど、
家に帰ると、どうやって帰ったのか、リーはいつものように待っていた。
連れて行った事もない場所にどうやって一人で行き、迷わずに帰ったのか
不思議で仕方がなかった。
リーの首輪に付いた大きな鈴を見つめた。

ビーグルという犬種がいる事さえ知らなかったのだから
同じカラーで似たような体格の、迷子のビーグルだったのかも知れない。

だけど今でも、あの犬はリーだったのだと、
リーは私の事が好きだったのだと、
私は信じたい。

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