2004.11.19
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カテゴリ: 日本映画
大きな青いリボンの制服の、

どこか淋しげな瞳なのは、
彼女がこの世界の住人ではなくなったから。
いつも困ったような顔をいているが、
意志の強さを感じさせる瞳は美加、
千津子の妹である。
彼女は事故で死んだ姉の存在を感じながら、
中学生から高校生へ、


尾道の細い起伏のある道を、
美加はところ狭しと駆けめぐっている。
カーブの連続、その先に待ち受けるものは何か。
経験という裏付けがないから
予測という準備さえもままならない。
だが進んで行かなくてはならない。
迷宮というよりは、大林宣彦監督が描けば
叙情的で深遠な空気に満たされた森になる。
いつか抜け出せる森なのだが
今はまだ彷徨っている。

姉として生まれれば、

自分の妹への想いが美加と重なる。
格別な想いが浮かび、
涙があふれてくる。
それは拭いようのない涙なのだと思う。

それでもこの映画は、

美加はピアノの発表会、マラソンなど、
さまざまなピンチを乗り切る。
親友や同級生、大学生の智也との関わり、
そして母親のノイローゼ。
姉とふたりで乗り切ったピンチではあるが、
彼女はその度に成長していく。
美加は自分の道を自分で見いだしてゆく。
姉とふたりで、そして彼女が関わった人たちと一緒に。
森の中にいれば
転んだりぶつかったりケガだらけ。
だが、ケガはいつか癒えるのだ。

石田ひかりの素朴な演技と、
中島朋子の豊かな表現力。
長い映画を、やわらかく愉しませてくれる。
叙情的な映像の中にも、
千津子の事故のシーンの描写は秀逸。
大林宣彦監督の才能は感情を表現するための
小さな心配りにあるのだと感じさせる。
他の映画に比べれば稚拙に見える画像処理なども
彼の演出する箱庭の一部にさえ見えてくる。
「大林作品」というものは
確かに日本映画のジャンルなのである。

森を抜けたところで、
世界は光に満たされているわけではない。
千津子にはどこか美加がうらやましそうだ。
美加はこれからも千津子とともに、
そして今まで出逢った人たちと、
これから出逢う人たちと共に生きてゆく。
ひとり、ではないのである。
ふたり、の物語なのである。





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Last updated  2004.11.20 13:55:49
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