2005.06.14
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カテゴリ: 702






ぱたり、と絵本を閉じて、

もっと、よんでよ、つづきをよんでよ、

と言う僕の声をさえぎるように

おねぇちゃんが頭を撫でた。





それが、すごくやわらかくて、あったかくて、

すぐに閉じそうになるまぶたの隙間に

おねぇちゃんの顔がうつって。

ふうわりと笑った顔がうつったんだ。





おねぇちゃんが、いつも読んでくれる話は

とても面白くて、それで僕は毎日のように

お話をねだりに行った。

くつを履いて、おねぇちゃんのとこまで20秒。

おねぇちゃんが、絵本を持ってきて、

僕はその間ふかふかのソファに座って、

お話がはじまるのを待ってた。

お話がはじまって、でも、

あたたかい日差しですぐに僕がうとうとすると、

「はい、おしまい」

ぱたり、と絵本を閉じて、

頭を撫でてくれる。





ねむくないよ、とムキになる顔を見て

何も言わずに撫でてくれた。

やっぱり、そのときの顔は、ふうわりとした笑顔で、

ぬくい日差しより暖かいと僕はいつも思って、

やっぱり重くなってきたまぶたを閉じてた。





柔らかい手が僕を撫でてくれて、

僕は今日聞いたお話の中に入っていく。

楽しくて、すごい楽しくて、でも、

楽しすぎて少しだけさみしくなる。

醒めないと、いいのに。

そう思ったらとってもとっても悲しくなって、

泣きそうになって目を開ける。

おねぇちゃんのひざの上に乗っけた頭を起こすと、

何も言わずにきゅっ、てしてくれた。





ね。あのお話ってなんだっけ?

つづきが思い出せない。

つづきだけじゃなくて、お話も、おぼろげ。

絵本の題名も、忘れちゃったし、けど、

あったかかったことだけは憶えてる。

すっごく楽しくて楽しくて楽しいお話。

でも、なんだか寂しくなっちゃうようなお話。

ふわふわした感じと、きゅうっとなるような感じ。

つづきが思い出せない。

思い出せないんだ。

思い出せないよ。










ね、つづきって、あったっけ?










不安になって、無いかもしれないつづきを手繰った。

その先に、おねぇちゃんの顔が見えて。

いっちばん最後のおねぇちゃんの顔。

僕が覚えてるいっちばん最後の顔。





またいつか、つづき、よんであげるね。





やっぱりその顔はふうわりとした笑顔で、

だから、僕は今でも待ってる。

いつか、また、お話しのつづきが聞けるときを。

まだ、きっと終わりを聞いていない物語の続きを、

待っていようと思ってるんだ。

今でも、忘れない、柔らかくて、あたたかい温もりと一緒に。
















間違いない。絶対、巨乳だった。












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Last updated  2005.06.14 20:09:24
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