楽しい南の島

ここは熱帯、当たり前じゃん。

『ここは熱帯。当たり前じゃん!』

あきちゃんの報告によれば、
キンタマーニは、物売りがひしめき合うオソロシイ世界だったらしい。

「食べ物もなんだか怖くて食べられなかったよ~!」
「えええ? おいしかったじゃん!」
当然、そう言ったのは豚吉。

1人で、うまいうまいを連発して、食べまくったらしい。
「すんごく楽しかった~~~! ぺこらちゃんも来れば良かったのに!」
元気もりもり。パワー全開!

隣でゲッソリしているあきちゃん。
「ナンにも食べられなかったんだもん。」
しかたがないので、日本から密輸したあられを捧げる。
「きゃー!嬉しい!」
バクバクパクパク…。部屋中せんべいくさくなる。

「お腹減った!」
そう言うが早いか、あられを貪る豚吉。
ちょっとぉ、どういう胃袋してんのよ~!

今夜は近くのホテルにご飯を食べに行こう。
と話がまとまったので、早めだけど出掛ける事にした。
「だって、豚吉あられ食べちゃうんだもん。」
あきちゃんが恨めしそうに言う。
「へっへ~!」
弱肉強食…。この言葉が何故か頭に浮かんだ。

あい変わらず、どんよりした空だな~。
そのホテルまでは歩いて5分位。
一本道だし、迷う事もなさそうね。

「こっちが裏道で、近道なのよ。」
おや、あきちゃんいつの間に調べたの?
細い路地。両側は生垣が続いている。

その道を歩き出して、1分もたったかな?
という時、突然雨が降り出した。
シトシト、でもなく
ザーザー、でもなく
それは、まさにバケツをひっくり返したような雨。

ジャッバ~~~~ン!!

呆気にとられる私達。
信じられない量の雨がどんどん降ってくる。
「走れ~~!!」
少し先の右手にアパートメントタイプのホテルが見えた。
そこに大慌てで走り込んだ。

「全然降りそうにも無かったよね。」
「びっくりしたね~。」

雨はジャンジャン降りつづける。

道のむかいに、小さな食堂があった。
駄菓子屋さんの中に、カウンターがあってご飯が食べられる、と言えば一番近いかな?

そこのおばさんが手招きをしている。
どうやら、「ここで雨宿りしなさい。」って言ってくれてる様子。
お言葉に甘えて、お店の軒下に避難させてもらった。

「テリマカシ」
精一杯の笑顔でそう言うと、おばさんは
「サマサマ」って笑ってくれた。

カウンターでは男の人が食事中。
ハダカ電球の下、黙々と丼の中身を咀嚼している。
何が入ってるのかな? 麺類だろうか?

揚げ菓子が何種類も、大きなガラスビンに入れられている。
かりんとうにお砂糖がついてないみたいなの。
固めのクッキーみたいなの。

豚吉が興味津々。
「これ、頂戴!」
お買い上げ。
「はい!」
分けてくれる。早速食べてみた。

コリコリして、結構はごたえがある。
味は薄甘で、こうばしい。
大雨を眺めながら、ボリボリ食べた。

嬉しそうな顔をして、おばさんが違うお菓子も1つづつ手渡してくれた。
こっちはパリンとして、クラッカーみたいだった。

「おいしい?」
とおばさん。
「うん。おいしいです。」
ほとんど身振りだけの会話。でも楽しい。

ジャンジャカ降っていた雨は、降り始めと同じように
ピタっと止んだ。
「止んだね~。」
「どうする? ホテル行ってみる?」
「でも、ビショビショだよ~。」

頭の先から、足の先まで濡れ鼠。
今日は諦めて、1回帰るしかないみたい。

やさしいおばさんにさよならを言って、
部屋に戻った。

道は川になっている。
ジャバジャバ…。子供みたいだ!
深さは足首まで。クツの中もグシャグシャだよ。

これがスコールなんだ!
ちょっと感動!

満腹。満腹。


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