misin

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残ったもの



毎日何かを拾いながら、少しずつ零してる。


片思いで実らなかった人との思い出のものは

わりとすぐに捨てられた。


でも実際付き合った人とのは、そうはいかなかった。


自分から別れたいと言って離れた。

部屋にあった彼の物を、彼の家に運んだ。

初めてもらった合鍵で、

一緒に選んだ服や

お気に入りのCDや

私のあげたものを届けに行った。

 荷物が重くて、心がちぎれそうになった。


この部屋に来るのも最後だろうと

部屋を隅からすみまで目に焼きつけた。

思いでが頭を駆け巡り、何時間も

誰も居ない彼の部屋で

わんわん泣いた。

 彼の部屋を出てポストに合鍵をいれた。

心臓が鉛になったように重く沈み込んで

玄関からもなかなか歩き出せなかった。


それから毎日泣きながら暮らした。

寂しくて気が狂いそうだった。

いっそこのまま死んでしまいたいと願った。

一緒に探して、作り上げたあの部屋に、

新しい彼女と住むなんて、、。何処に何があるか、全部知ってる。

私は全部知ってるの。でももう入る事はない。きっと今は

全く違うものになっていて、私のかけらも残ってない。



一枚だけ、私がお気に入りだった彼の服だけは

どうしても返せなかった。

ユニクロの白とグレーのストライプのシャツ。

毎日握りしめて眠った。

涙を拭いた。

たまに、それを着て眠った。

少し寂しさが薄れた。

いつだったか、もう離れようと思い袋に入れて捨てた。

 意外と平気だった。

匂いはもう残っていなかった。

声も、記憶から遠ざかり始めていた。

いつのまにか、大分時間が過ぎていた。

私は、もう戻らない思いでがたみを

最近恋しく思う。


寂しくて眠れない。

苦しくて眠れない。

一人じゃ眠れない。

捨ててしまったものは返ってこない。

別に彼を引きずっているのではない。

知ってしまった安心感や温もりの記憶を引きずっているのだ。

それらを捨ててしまえたら

どんなにいいか・・・

 どんなに。



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