家主の家の向かいに牧草地があり、多くの牛が放牧されている、時々数頭の馬もいるが、牛は奇妙な動物で、小生が近くに寄っても小生の存在を気にせず、黙々と草と食べ続ける。老母の話では家主が昔、毎夏干草刈りをしていた頃は白黒の斑点のある牛が多く、従兄弟たちと丘の上の牛を探しに行ったそうである。小生が一番の長老牛に「そちらの家主は何処にいるのですか」と話しかけると「あまり見かけないが、真冬には毎朝干草をトラクターでもってくるよ」。なんと彼らの家主はトラクターで来るらしい。
「一日中、外でいいですな」
「しかし、真冬には隣村の家主の家に帰ります、そちらはいつも暖かい家の中で快適ですね」
「うちの家主は自分が居ない時はテレビの教育チャンネルをつけて、よく勉強するようにといって出かけます」
「テレビ?」
「ウーゥ、説明するのが難しいな、またゆっくり話します。うちの家主が叫んでいますから、そちらの名前は?」
「名前?」
「ウーゥ、難しいな、文化の違いかな」
《何をしているんだ!!!!》家主の声が一段ときびしくなってきたので、
「では、また」