家主が仕事をする時はダイニングキッチンのテーブルの上にポータブルを置いてTVを半分見ながらキーを叩いている。最近はインターネットのおかげで辞書などを余り使わないが、それでもいろいろ書類を並べるので相方の厳しい攻撃に、最初は無関心を装っていたが、その内本人も食事の前に片付けなければならないので、何か解決策を考えていたらしい。小生たちはその下で相方とのやりとりを、半分眠っているふりをして耳をたてているのである。小生の老母は顔を壁側に向けて完全に無視している。家主の書斎は一番上の階にあるのだが、家人と離れるのと、書斎の天井が高いで暖房に時間がかかり、一人でいるのが何となく嫌なのであろう、今は殆どこのキッチンで仕事をしているのである。そのために家主はコンピュータのデスクトップを下に、上はモニターを入れるキャビネットを作ったのである。庭の小屋で何やら木を切っている時は小生がそばで見ていたのであるが、ブツブツと独り言を言いながら、紙に数字を書いて頭をひねっていたのである。一体何ができるのであろうかと思い、老母に聞くと「またいつものようにすぐ壊れて使い物にならないものだろう」と興味がなく、林の中のハンティングに夢中になっている。数日後にごろごろと庭からキャビネットを押して来てキッチンの端に置いたのである。扉が上下に付いて、閉じるとキッチンの家具のようになり、カラーも全く同じものを塗って珍しく相方や家人の悪評は避けられたのである。しかし家主は夜寝る前にこのパソコンの入っているキャビネットの扉を閉めずにそのまま上階にあがってしまうのである。下は小生たちだけなのであるが、小生の寝床の前にこのキャビネットがあり、時々変なうなり声のような音が起こり小生の眠りを邪魔するのである。横の老母は完全に眠っているらしく不動の状態。それに青い光が時々点灯しビックリさせられる。小生も壁がに頭を向けて眠ろうとするのだが、奇妙な音でどうにも眠れなさそうなので、遂に意を決してキャビネットの下に頭をつっこみ光の方を探ってみたがよく分からず、あちこちを片手で押したりしていると、老母がむっくりこちらに顔を向け「そのケーブルを引っ張ればランプも音も消えるよ」と珍しい親切な助言。小生は忠実にその助言に従い、片手でケーブルをひっかけて外すといつもの静寂が戻り、「さすが歳の功」と感心しすやすや熟睡に入ったのである。
あくる日の朝家主がキッチンに下りてきた。キーボードを叩いて「おかしいな、ダウンロードしていないな」と相方に「夜中に停電があったのかなあ」。「寝る前にコード外したかなあ!!!」