雨のちハンターだまり♪

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”伝説の勇者”



徹盾を愛する者がいた

そのどちらもが、認める者がいた。

彼の者の名はワタ。

この地に平穏を取り戻せし者なり。。。





次の日の朝、日光は驚くほど透き通っていて
部屋の隅の観葉植物を緑に染めていた。

(きついとはどういう意味だ?
 いったい何をすると言うんだろう・・・)

思いを巡らせても答えは出てこない、
最近は特にそうだ、色々な事がありすぎて混乱してるんだろう。
顔を洗うと、彼は外に出た。
すると、2人の男が待っていた。

-----2人ともハンターのようだ。

「よぉ、あんたがミズキか?」
黒い筒のような物を背負っている男が喋り掛ける。

「ヨロシク頼むぜ! 足を引っ張るなよ♪」
その後で、巨大な剣を担いだミズキと同年代の少年が喋った。

「あの・・・、あなた方は?」

「なんだ、俺たちの事教えてないのかよ。親父さんは」

そういって少年が先に、自己紹介を始めた。
「俺の名前はデビルってんだ、混色狩人旅団 赤色槌剣獅子団隊長 デビルさ!!」

その後に続けて、隣の男が言った。
「俺の名前は、クロノだ。よろしくな」

「俺たちは、今日から仲間だ!」

「は!?」
突然の言動に驚くミズキ。

「おいおいデビル、話には筋ってもんがある。
 そんなに突飛でもない事言われたら、誰だって混乱するさ」

「それもそうだな、まずは向こうまで行くか。。。
 ミズキ、ついてこいよ♪」

訳がわからない。
混色ナンタラとか言う単語も、仲間になる理由も。
ミズキにはついて行くしかなかった。

村の郊外の森の中をしばらく歩いて、開けた高地に出た。
演習場か何かのようだ。

そこには、ナナと村長がいた。
そして、また初めて見る顔の一人の男も。

「ようやく来おったかえ・・・。」

そこから物語は始まった。





初めて会う男は、村長に何かをつぶやいた。
そして近くの木に背をもたれると、ミズキを探るような目で見た。
足下から。頭の毛の先まで。まるで昔の物を見るような懐かしい目つきで。
そして、男はこう言った
「ミズキ・・・、っていったな」
「はい」

「俺の名前は、ワタだ。 この地域を守る自衛部隊
 【混色狩人旅団】の団長をやってる。よろしくな」

「自衛部隊? 国の保安部隊は駐在してないんですか?」
「あいつらは金を食う虫だ。それに、モンスターとの戦いはハンターが一番よく知ってる」
「確かに」

ワタ?
どこかで見た名前だ。
騎士団帳簿の中にたしか・・・・・・。
否、そんなはずはない。
しかし、何か妙な感じがする。

ミズキの疑念を遮って、村長が呼びかける。
「さて、そろそろ良いかの?」
「ああ、始めてやってくれ」

何が始まるんだろう、ミズキは少し首をかしげる。
リハビリではなく。他の何か。
その時、村長の目つきが変わった。

「ミズキ=ルテン。ちと手合わせ願う」
「は!?」

「いや、のう。名将と唄われるお主の実力を見ておきたくての」
「いえ、しかし。あの・・・・・」

「なんじゃお主は!ワシが年寄りだと思うな、これでも並の若者には負けんわい」

「・・・・判りました」

ミズキが承諾したのを聞くと、ワタが一本の剣を投げた。
「受け取れ」

パシ!
それは片手剣と呼ばれる部類の剣だった。
しかし、盾はない。剣だけを渡されて、何をするのか判った。

「なるほど、この剣であなたと打ち合えば良いんですね?」
「左様、ワシもお主と同じ剣を使うでの。
   なぁに、切れはせん。ワシのはな」

またも意表をつかれるミズキ。
切れない剣?そんなの鉄の棒じゃないか。
しかも、自分のもっているのは実刀。
あまりにもなめすぎている。

「お言葉ですが村長、少したかをくくりすぎでは?」
「気にするでない、一太刀も浴びぬよ」

「ふぅ、仕方のないお方だ。騎士は対人戦こそ本領。容赦はしませんよ?」
「遠慮せずにかかってこい、殺す気でな」


行きます!!の一言とともに、ミズキは村長に向かって走った。
常人とは思えぬ背の低さ。
少しやりにくいな、まずは膝を少しかがめての草薙切り。

---しかし、さっきまで老人がいた場所には何も無かった。

空を切って体勢を崩したミズキの後ろから、風を切る音。

「しまっ!」

スコン!

「アイテッ!」
「甘い甘い、ふぉっふぉっふぉふぉ」

「くそ!」

そういって身を翻し、片手で地面を押してその力で切り上げる。
声の主の場所を。

---しかし、いない。

「人間の動きじゃない!」
「お主も相当やるようだのう」

見えないが、声はする。
まるで噂に聞く東方の国のシノビのようだ。

そんな事を思っていると、左から煙が流れてくる。
どうやらけむり玉だ。

「古い手を使う。しかし、無駄です!」

ミズキはそういい、目を閉じる。
無意味な視界はおのが意志を狂わせる事を知っているからだ。
そうして、わずかな空気の動きと足音を感じ取る。
霧中戦闘術の訓練でよくやったものだ。

「そこ!」
重い一撃を見込んでの大きく踏み込んだ薙ぎ払い。
鉄と鉄のはじける音。

----捉えた!


「やぁぁぁぁ!」

ミズキは煙の中で、老人の影めがけてあらゆる剣技をたたき込んだ。
足下への草薙、そこから体の回転を利用して横切り。
そこからの切り返し、回転切り。

しかし、村長は一撃も浴びてはいない。
どれも敵の手の位置を読み切った最高の一撃だ。
振りの速度、剣のヘッドスピード。その全てが最高峰の剣技だった。

---しかしその全てが、老人のただの鉄模剣によって無に帰していく。

ミズキはついに攻撃の手を緩めた。その途端。

見られている。今、目の前にいる者に。
恐ろしいまでの眼光がミズキを飲み込んでいた。

「ゆくぞ・・・・・・」
声が聞こえるか聞こえないかの刹那、突如足下に現れた剣を
とっさに引いて避ける。

しかし、その軌跡の終わりからまた新たな軌跡が生まれ
正確に受けづらい場所を攻めてくる。
先ほどの状況が一転してのおいつめられた防御体制。

「くそぉ、なんて剣技だ。人間の持つ速度じゃ・・・ない!」

力を振り絞って老人の剣を弾いたミズキだが、
隙を与えることなく剣が降りそそぐ。

そしてついに


ドス!


剣の柄で腹を突かれた。
痛みはそれほどないが、動けそうに・・・・ないか。。。

ミズキは地に倒れ腹を抱えながら
「やりますね、やはりあなたは伝説の」

「いんや、本当に違うんじゃ。
 実を言うとな。伝説の英雄とは、ワタの事じゃよ」

先ほどから感じていた視線。
ナナやデビルのものは時々ミズキを見失ってそれていたが、
ワタの視線だけはずっと張り付いたようにミズキを見据えていた。

「あの人が?」
「そうじゃ、今日は疲れたのう。もう寝るがよい。
  ワシも今日は少し腰を休めなくては、おいたたたたた・・・」

そういうと、老人らしい動きに戻った。
先ほどまでの獣のごとき俊敏さは影も形もない。
いったいこの人は何者なのだろう。

nana「ミズキ、あんたも疲れたろ? 今日はもう休みな!」
mizuki「え・・・あ、はい」

小屋に戻って、横になる。
しかしなかなか寝付けない。
それどころか、久しぶりの戦いで目が冴えてしまっている。

《ミズキの憂鬱》

mizuki「ナナさん!そこにいるんでしょう?」

そういうと、驚いた顔で扉の向こうからナナが出てきた。

nana「な、なんで判ったの!?」
mizuki「第六感ですよ、どうせまた村長に頼まれて見張ってるんでしょう」
nana「まぁ、そういうとこね」
mizuki「少しお願いがあるんですが」

nana「何?出来る範囲でお願いね」
mizuki「目が冴えてしまって。少し外に出たいんですが」

すると彼女は困った顔を見せた、
nana「ダメな事はないと思うけど・・・」
mizuki「大丈夫ですよ、遠くへは行きませんから」
nana「ホント?ならいいんだけど」
mizuki「でわ!行ってきます!」
nana「あ、ちょっとま・・・行っちゃったか」

小さな果物屋の向かいの木の根もとに腰掛けて
ミズキは久しぶりに自由になった気がした
別に窮屈だったわけではない。
ナナは優しいし、クロノ達も話し相手にはなってくれていた。
しかし、彼等の放つハンターとしての鋭い気配が
少しミズキの負担になっていたのであろう。

そんな鋭い気など全く感じない村人。
それがミズキにとって、”うれしい”というに値するものだった。
少なくとも、こうしている間は気分が安らぐ。
彼は、空を見ながらそんな事を思っていた。

空------
いつから見てなかったろう。
騎士としての窮屈すぎる生活。
それから思えば、ここでの生活は不安になるほど自由だ。

----なんだあれは。
赤い点が見える。
正確にはわからないが、この距離でこの大きさ。
ただの鳥ではない、何かもっと別の・・・・・。

(まさか!!!)

村人に感づかれないよう、出来るだけ慌てた気を隠して
そして出来るだけ速くミズキは歩いた。
----村の鍛冶屋にむかって。


そこは鍛冶屋と呼ぶには小さすぎる。
が、設備面では並以上の物がそろっており
職人の腕も確かな事でこの近辺の村では有名である。

mizuki「武器を買いたい」
職人「あ? あ、あんたミズキさんだろ?
   ダメダメ、村長から武器を売るなと言われてる」

mizuki「落ち着いて聞いてくれ、みんなに気付かれないように上を見ろ」
職人「? いったい何があるってん・・・・」
mizuki「見えたか?おそらく”リオレウス”だ、王立図書館で読んだ事がある」
職人「あぁ、そうだろうな。よくハンター達が持ってくる素材の色にそっくりだ」

mizuki「おそらくは。この近くに巣がある。
    リオレウスが縄張り周辺を飛び回るという習性は聞いた事がないが」

職人「レウスがその行動を取る理由は2つ。
   1つは、巣を見失った。これはあり得ないが」
mizuki「もう1つは?」


職人「・・・縄張りを広げるときだ。その下見だよ」
mizuki「!!?」

次章へ・・・・

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