雨のちハンターだまり♪

ミハエル

　龍身昇覇　静星天衝」
（地を掻いては、数多の山々を揺るがし。　）
（身を挙げては、星映える天を突き上げる。）

地牙　過客墜閃乃為
（大地の牙は、招かれざる旅人の出現によって）

終末不輪廻　再来皆無
（二度と蘇ることは無くなるであろう）

其客乃名　邪黒龍斗言
（その客の名は、邪黒龍という）

〔日出づる国　「終末戦輪」の一文〕

《双刃の少年》

その圧倒的な手数にもかかわらず、ミズキは押し始めていた。
しかし切り込みすぎると、寸分の狂いもない正確なカウンターが帰ってくる。

その少年と対峙している間、ミズキはずっとさっきのような感覚に見舞われていた。
しかし、少年の動きが速すぎて止まっては見えない
奇妙なスローの世界、瞬きをしない少年、落ちていく緑の葉。

葉が地面に着いたと同時に、
２人は飛び退き、距離を置いて相手を観察しだした。

ジリジリと、すり足で互いに位置を取る。

（双剣の手数の多さは厄介だが、この速さならついて行ける）

遠くの空の厚い雲が、太陽を覆い被そうとしていた。
真っ白な日ざしが途絶え、次第にあたりは陰っていく。

（・・・・次でケリを付ける！）

刹那、ミズキは少年の真の力を見る。

斬りかかった虚空、

過ぎ去った風、

目の前の幻影、

後ろに感じる威圧感。

少年は、剣を抜いていなかった。

そして、余裕と嘲りを含んだ声でこういった。

「所詮は、人の子か」

降りかかる殺意、剣を取る少年の手。
目では追いついているのに。

体が動いてくれないのだ・・・・・。

ヒュッ、、、ガ・・・ドサッ！

一瞬で仰向けに押し倒され、喉元に刃を突きつけられるミズキ。
生唾を飲む、俺は死ぬのか・・・・・？

しかし予想を裏切って、少年はミズキに質問し始めた。

「奴はどこだ」

聞き返す。
「奴とは誰のことだ・・・」

「デビル・・・・と、ここでは名乗っているらしいな」

デビル！？
奴とこいつにどんな関係が。。。
疑問に思いつつ、首を横に振る。

「知らないな、そんな奴」
そうミズキは答えた。

もちろん嘘である、奴と言えば、
ココット村に来てからはずいぶん親しい仲になったし、
同年代であるが故、ハンターとしてでなく遊び仲間としても重要な人物だった。

それが故、彼は偽りを放った。

少年は、ゆっくりと剣を退いた。
そう、ゆっくりと、ミズキから目をそらさずに。

「・・・けるな・・・・・・・・」

眼が見開かれる、その瞬間殺意に潰されそうになった。

「巫山戯るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

パラパラと落ちてくる破片を手で払いながら、ミズキは目を疑った。

先の瞬間見た物・・・、それは双剣に宿る薄蒼の光だった。
少年が剣を突き刺した場所は、軽く陥没し、黒い煙を上げている。

地面に突き刺す瞬間、すこしゆるんだ少年の足を押しのけて回避できたからよかったものの、
ーそしてそれに少年が反応できなかったからよかったもののー
その破壊力は想像を絶していた。

煙が止み、再び目が合った。

「そんなところにいたのか」

少年が言う。

「父上が、ずいぶんと探していた」

「何のことだ」

訪ねたミズキ、しかし、少年は冷徹な表情でこう言った。

「お前じゃない」

そして少年は続けた。
しかしその声はまた、黒くくぐもった声に戻っていた。

『えどがーハドウシタ？久シク見ナイガ』

その瞬間、少年の付けているブローチと、
ミズキがエドガーから託された銀のロケットが輝きだした。

？？？『ソウカ、死ンダカ……』

（ロケットが・・・・・・！？）

少年は眉１つ動かさなかった。
「貴方がこいつを守ったのですね、でなければ粉々でしょう」

『如何にも』
ロケットの中の何かが、ハッキリそう言った。

そこで記憶は途絶えた。
《次へ》

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