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雨のちハンターだまり♪
王国の危機
《足りない力》
1日がかりで、2人を引きずって帰ってきた。
目が覚めたときには少年はおらず、ロケットの輝きも消えていた。
爆煙の臭いと、地面のえぐれた跡の残る地面の上で。
この2人を支えて、ココット村まで帰ってきた。
村の入り口の付いたとき、あたりは真っ暗で何も見えなくて。
付いた瞬間。ミズキは力尽きて倒れ込んだ。
夢の中だった。
エドガーが死んだときと同じだった。
雨の降る路地。
残された俺。穴だらけの傘が落ちてて。
目の前に1人の男が居た。
「お前は選ばれし者ではない」
しかし、何故・・・・」
「ミズキ!ミズキ!!!」
「お前は死んではいけない」
「ミズキ!おいしっかりしろ!」
「お前を呼んでいるぞ」
「ミズキぃ・・・・・」
「ミズキ殿!」
どこからか声が、二重にも三重にも。
次第にそれはあらゆる方向から聞こえてきた。
「お前は帰らなくてはならない」
「なぜならお前は・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
白く輝くヒカリの中で、男は背を向けて消えた。
そして。目が覚めた、言葉が出なかった。
あの小屋のベッドの上で、ズラリと旅団と村のみんなに囲まれていた。
群衆の隙間から、ちらりと見えた窓際のベット2つには、恐らくあの2人が寝ているのだろう。
そして、何故か手が温かい。どうやらさっきまで、誰かが握っていたようだ。
喜び----。否。それも感じたが。
生存の喜びすら打ち消す、厚い厚い無力感がミズキの前に横たわった。
「おかえり」。そう輪廻は言ったが、
ミズキにはその言葉を返す気力もなかった。
クロノが言うには、2日も寝込んだままだったらしい。
そしてその間に。重大な事件が2つも起こっていた。
1つ目は、国王を選出する式典の予定日が決まった事。
あと3週間しかないらしい。
そして、その3週間以内にゾシモスを止めなければならなくなった。
ドラグーンの集めた情報によると、奴はどうやら
元王の側近だった者や、政治家に近寄り、ワイロを送っている。というのだ。
これが本当なら(まず本当だろうが)
ゾシモスの次期国王の座は確立されてしまったも同然だ。
これを防ぐために、ミズキは大胆な作戦を立てた。
「民への直接勧告」
民衆に直接、先の国王死亡はゾシモスの暗略だったと。
そして、今までの悪行の数々をしらしめる事によって、追い出そうと考えた。
ただ1つだけの問題は、ミズキが顔を知られているという事。
とりあえずこのことに関しては、後で考える事にした。
もう1つ。ミナガルデ近辺で、古代種と見られる生物が確認されたという。
邪黒龍ミラボレアスに類似したその体の色は、深淵の蒼。
王国側はその龍の事を「邪蒼龍ミラオルトロス」と発表し、周囲に警戒を呼びかけた。
俺が眠っていた間に、そんな事が起きていたなんて・・・・・。
そして。
傷の治癒を待っているだけで、2週間が過ぎてしまった。
そのあいだは、ナナやモンヴァサが色々と情報を探ってくれた。
催しの当日、どうやら、一緒に祭りも行われるらしい。
その機会に乗じれば、潜入も難しくないというのだ。
まったくもって、願ってもないチャンス。
祭りを楽しんでいる一般人たちにはいい迷惑だが、そろそろゾシモスには黙ってもらう事にした。
作戦決行まで、あと6日が残されていた。
1日目。
手足が、やっと普通通り動くようになった。
2日目。
3日目。
4日目、と。3日続けて、またあの夢を見た。
しかし、それぞれが少しずつ違っていた。
2日目の続きが、3日目に出てくる。といったような感じだった。
雨降りの路地。
やぶれたままの大きな傘。
雨降りの路地。
継ぎ接ぎだらけの折れた傘。
脇に入ったところにある暗い部屋、消えかけたろうそく。
僅かな光を求める、小さな虫たち。
光に近づきすぎて、燃えてしまった1匹の蛾。
一部分だけが欠けている、ミズキと誰かの写真。
闇に駆けた兎があげた断末魔。
光に逃げた小鳥が謳うレクイエム。
ぼやけた山の陰と、はっきりと見える黒い影。
そして・・・・・・・・・
青白い稲妻に身を包んだ。
見事な白角をもつ、ケルビのような生き物。
5日目の夜が明けた。
いつもより遅く上がった太陽は、東の空をほんの少し染め、
これから来る激闘を予感させた。
「戦いの前の静けさ」
その中で育ったミズキに、それはあまりに懐かしかった。
今日、ゾシモスの野望を打ち砕く。
城の兵士と会えば、恐らく戦闘になる。
負ける気はしない、負けられないから、
けど、騎士団時代の友を・・・・・。
「友を俺は斬れるだろうか・・・・・」
独り言を呟くと、少し寂しくなる。
朝の空気をあびたくてミズキは外に出た。
・・・・・・・・デビルがいた。
そういえば、あの時男が言っていた言葉。
「お前は選ばれし者ではない」
少年の言っていた言葉
「デビルはどこだ・・・・」
目の前のデビルではなく、本当のデビルは何者なのか。
そんなことに思い巡らせていると、不意に現実が声をかけてきた。
「なぁミズキ、・・・・・怖いか?」
意外だった。
いつも勝ち気で、無鉄砲で、なにかと突撃ばかりのデビルの口から「怖い」
という単語が出たからだ。
「なんでそう思うんだ?」
「俺の手、見ろよ」
それは、小刻みに震えていた。
「昨日の夜は寝れなかった」
「・・・・・・・・・・・デビル」
「何かが・・・・、何かが来るんだ・・・・・・・。
きっと俺の待っていた何かが・・・・・・・・・・・・・」
「なぁ」、と言いかけた瞬間。
デビルが叫びだした。
あっけにとられた。
ひとしきり叫び終わると、デビルはスッキリしたような声でこう言った。
「モンスターを斬るのは、俺にとって苦痛だ。
たとえ憎んでいるのがモンスターであっても」
「・・・。生命の螺旋・・・・・・・・」
この言葉は、哲学書で読んだ言葉だ。
【全ての命は巡り、螺旋をかたどり、世界は回る、
ある一種がそれを止めようとすれば、世界は止まる】
少し置いて、ミズキはこういった。
「人を斬るのだって怖いよ」
「血が出るんだ。息が止まる。瞳孔が動かなくなる。
その人の物語を、自分が奪うんだ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・でも、それは」
「俺に、そんな権利なんて無かった!!!」
まさにこうしたかったんだ。
地に膝を着き、頭を抱えて、苦難に溺れる。
騎士団で初めて人を殺したときから。
この姿が、俺には相応しいと思ってきた。
「ミズキ、お前はその物語の分、俺たちと生きてる。
形見のロケットが泣くぞ?」
そうなんだ。
俺は1人じゃない。
エドガーさんが残してくれたのは、孤独じゃない。
みんながいる。
みんなが・・・・・・俺の力になってくれている。
ミズキの決心は、この上なく堅くなった。
《次章に続く》
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