雨のちハンターだまり♪

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第参章 ~邪蒼龍~


神様が世界を創り上げて間もない頃のお話。
竜達が世界を踏み固め、ただただ時が流れていた時代。


・・・・・・ある日、1つの隕石が落ちてきました。
黒い闇だったそうな。闇は地面に落ちると、砕けずにその両翼を開きました。
始めはうろうろしていただけの闇が、急に竜を襲い始めました。
神様は世界の危険を感じ、人類を創り上げました。
人類は闇を撃退し、集落を作り、竜達と共に暮らしました。


しかし。
いつからか、人間の間に、絶大な力を持つ竜への恐怖が芽生え始めました。
人類が竜を狩り始めるまでに、そう時間はかからなかったそうです。
神様は怒りました。
そして、人類に天罰をお与えになったのですが
人類はもうすでに、神をも越えてしまっていました。

人に作られたあらたな蒼い闇によって、神様は冥界の奥に閉じこめられてしまったのです。

【伝記「痕伝抜書」より序章~太古~】




午前6:20。

いまミズキは城壁の内側にいる。
というか、城壁の上にいる。
弓矢隊、銃部隊の通る城壁上部の通路のすみっこに
いっしょに潜入してきたデビル、S 、ナナと固まっている。

S が、城壁の隙間からちらりと下の様子を見る。

「朝も早いのに・・・・どこも人が溢れかえって、直接降りれる様子じゃねぇ」

ナナが、さっきから一度も開かなかった口を開く。

「さっすが大国の国民行事ってことね、ゾシモスがこの国を手に入れたいのも判るよ」


「そう、この国にはこの大陸を威圧するだけの国力がある。
 だからこそゾシモスを止めなきゃならない」


そこまで言って、ミズキとS 。
ナナとデビルの二手に別れて、すこしでも勧告のチャンスを増やす事にした。

頬を斬るような冷たい朝の空気が、4人を包む。



「さぁ、行こうか」




~~~~~~デビル&ナナ~~~~~

まぁ、やっとこさ城壁の上を伝って
大広場の所にまで来たんだが。。。

なんだこりゃ、めっちゃめちゃ広いじゃねぇか・・・・・・・・。

ゾシモスとかいうちんけなオッサンを探し当てるのも、骨が折れそうだ。
っと、別に探さなくても良いのか。
俺たちの目的は勧告、あくまでゾシモスを手にかけるような真似はしない。って
ミズキも言ってたしな。





・・・・・ナナさんに言われて気付いたんじゃないからな!(忘れてた)




今俺とナナさんがいる場所は、その大広場の10m上だ。
平たく言えばまだ城壁の上だ、ちきしょう。



ガシャ カツン ガシャ
カツン ガシャ カツン


「ぁ?」
思わず声を上げてしまった。

「見張りよ」

木製の扉が開いて、銀光りする甲冑を身に纏った城の兵士が現れた。


立ち止まると、ヘルムのアイシールドを上げて目をこすった。


「よ~、当番ご苦労さん」


「・・・・・・・・寝ぼけてんのか?」

「ん・・・・・・・・ん~」
















「ねぇ、チャンスじゃなぁい?」
小さく頷いて、俺は勇猛果敢に飛び込んだ。
「チェストー!」
















ドシ ベシ
ドギャッ カンカラカーン





あ~、まぁあれだ、そこの効果音の所は
ナナさんと俺の、スペシャルなタッグ攻撃がヒットしたんだと想像してくれ。


とりあえず甲冑を着て変装した。
予想以上に重かったけど、まぁハンターとして働いてる俺だ。
着れない事はなかった。

その後すぐ、反対側からさっきの哀れな兵士の悲鳴を聞きつけて
別の兵士が2人やってきたんだが。



3秒足らずで、問題なく静かになった。

ナナさんの分の甲冑も手に入ったしな。
ていうかかなり似合ってるんですけど。


変装は完璧だし、このまま降りていく事にした。



~~~~~ミズキ&S ~~~~~

デビルは上手くやってるだろうか。
さっきなんだか誰かの悲鳴が聞こえたような気がしたが・・・・・まさかなぁ・・・・。


ナナさんがいるから大丈夫、か。       (DEVIL>ンだとこら失礼な。

城壁の上には、一定間隔で展望所が設置されている。
ここから城壁外の敵を見付けるわけだが、いまは中を見るために登らせてもらっている。

いちおうホフクで。
持ってきた双眼鏡で警備の手薄なところを探していた。
デビルならこんな事せずに、手頃な兵士でもぶちのめしてるんだろうな・・・はは・・・・。




ナナさんがいるから大丈夫、か。 (DEVIL>軽く凹むぞ!)






「なぁミズキ、あそことかいいんじゃないかぃ?」

S の指した方向を見ると、確かに誰1人立っていない。

おそらく警備の交代の最中で、誰もいない時間があるんだろう。
場所は丁度、自分たちのいる右側の展望所から、階段で降りることの出来る場所だった。


~~~デビル&ナナ~~~


AM7:22

下まで辿り着いた。

「さて、ここからどうする?ナナさん」

「あら?考えてなかったの?」


「え?俺はてっきりナナさんが・・・・・」

「えぇぇぇ!?・・・・・・それじゃぁねぇ」



ナナは適当な方向に指をさした。


「あっちとか」

「とか・・・・?」


「あ~、もう知らない!・・・・あれ・・・・・・?」




何かに気付いたのか、スタスタと進んでいく。


「ちょ、まっ」

慌てて着いていく。

城壁の切れ目、角のところでナナさんがいきなり立ち止まった。



ゴンッ




「☆ωγD卍~~~~~~っ」


ヘルムに・・・・・ヘルムに響く・・・・・!         (m<バカだろお前。



「何遊んでるのデビル。見て、騎士兵が集まってる」

そ~っとのぞき込むと、確かに。
200ほどの兵が招集されていた。


「どうするんだ?」

「ん~、はっきり言って急には思いつかないけど、とりあえず変装してるし、
 時間まで隠れるにはあれかな~、って。ね?」


「なるほどねぇ・・・・」


また少しのぞき込んだ。

すると!!!


「お前等こんな所で何やってる、馬鹿者!」


「みつかった・・・・・・・・・・・・・・・・」


「なぁにが見付かっただ!早く列に戻れ、さぁさぁ!」



とまぁ、半ば運に助けられた形で、
俺とナナさんは兵士達の中に紛れ込んだわけだ。





・・・・・・・これで良いんだよな?
なんか不安だ・・・・・・・・。




~ALL~


ミズキは城壁の下におりたった。
着地の衝撃で、銀のロケットが胸元に弾む。


彼の・・・・・、最も大切な人の形見。
そして、今はこれが何かの鍵を握っているようにも思う。



・・・・・・エドガーさん。貴方は一体何者だったんです・・・・・。




目が虚空を泳いでいた。

Sが心配そうに訪ねる。

「おいおい、大将。大丈夫か?」


「んぁ。あ、あぁ、大丈夫さ」

「しっかり頼むぜ!なんせこれは団長の意地を賭けた作戦でもあるんだ」


そうだ。


これは彼だけの戦いではない、ミズキだけでない。
ワタの、ゾシモスとの戦い。

国王の仇を討つ戦い。

民を救うための戦い。

そして、亡きエドガーのために……………………


彼は、


彼はロケットを強く握りしめた。



「わかってる、俺はもう負けられないんだ」




ちょうど、AM8:00 となった。



そのころデビルは、兵達が解散する隙を見てミズキ達と合流しようとしていた。

兵士達の朝会であった話しでは、もうゾシモスの演説が始まってしまう!

事態は急を要した。
















少し遠くの、広場の真ん中。

鮮やかな紫の正装を身にまとった男が、演説台の上にあがり始めている。





「遅かった!」


「ちぃ・・・・・っ!」


ガラーン カンカラカン・・・・・・

デビルとナナは甲冑を脱ぎ捨て、ゾシモスの演説を聴きに集まった
人々を押しのけて走った。。。。。。




ミズキはというと、やっと状況に気付いた。


見間違えるわけがない。
奴がいま、演説台に登ろうとしている・・・・・!



走り始めようとした瞬間。



何かが、耳元で囁いた気がした。



『又会ッタナ、小童』




グニャリ・・・。

と、景色が歪む。目の前にいるSの顔が三重にも四重にも見える。


「お   !   キ!ど  たし かりし    !」




その間も、ミズキにはあの声が聞こえ続けた。


『彼ノ男ガソウマデ憎イカ、憎カロウ、憎メ!』

「やめろ・・・!誰だ、・・・・またお前達か・・・・っ!」

『小童・・・、良ク見テオクガイイ。之ガ我等ノ”力”ダ・・・・・・・ッ』





その言葉が切れた瞬間、視界が元に戻り、演説台の周りに影ができた。





そして、声はその場にいる全員に響き渡った。

『紫ノ男!!今コソ彼ノ恨ミヲ晴ラサン!』



「なんだ、何が起こっている!
 ・・・・ミラオルトロスだと!?何故ここに!
 機銃部隊、奴を打ち落とせ!ここで奴を討つのだ!」


『カァァァァァァァァァ!』



ミラオルトロスは、その巨大な体躯を振るい、尾で薙ぎ払い、
立ちはだかる兵を消し飛ばして、ゾシモスの正面から、その紅い目で睨み付けた。



『ヨクモ・・・・、ヨクモ”ミハエル”ヲ!!!』


「ま・・・・待て・・・・。は、は、は、話せば分かる・・・・ひぃっ!!」

蒼い闇はその両手でゾシモスを絞め上げた。


「がっ・・・・」


『貴様ハ・・・・・・・・・・・・・・』

ボトッ



堕とされたゾシモス
浮き上がる巨蒼のはばたき
逃げまどう人々

山々の咆哮
太陽の恐怖
ミズキの驚愕
デビルの唖然
ナナの悲鳴
S の舌打ち









全てが、蒼い閃光の中に消えた。


《次へ続く》

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