月のひかり★の部屋

月のひかり★の部屋

(1)鞄の絵の女の子

 (1)鞄の絵の女の子 2006.02.04


微塵のような雪の微かに舞い落ちる朝の広場を人々に混じり駅に向かって横切って歩いて行くと、寒い筈なのに、全然寒く感じないのが不思議だなぁ・・と思う。
カーリーヘアーの金色の長い髪を靡かせた女の子が左手を顔の横にパッと広げたポーズをとっている絵の大きく描いてあるお初の布製の鞄を右肩に提げた私は自分で言うのも変だが・・殊の外颯爽としていて( これならまだまだいけるわ・・)と、自分ながら思う。
朝なのでまだ充分元気がある為か、こんな時の私はすでに無意識の中に
(私って鞄の絵のこんな女の子にだって決して引けをとらないんだから・・)なんて、少なからずライバル心を燃やし始めているのかもしれない。
全く、私ときたら人間が出来てないというか、年甲斐もなく困ったものである。
実は先日、とある店先に商品として陳列してあるのに偶然、遭遇して、とても気に入ったので早速買う気になったのだが、
(この鞄を持って歩いたら、もしかするとすでに失った若さへの未練の気持ちの現れのように人々に見られるのではないか・・)と正直言って少なからずそんな危惧が無かった訳でもなかった。
いったんは買うのを止めようとさえ思ったにもかかわらず、どうしても買いたくって我慢が出来ずに、ついに買ってしまった次第である。それほど私にとって女の子は可愛くて魅力的だった
決して衝動買いなんかではなかったと自分では思っているが、果たしてどうなのか・・・
縁のある鞄と、言うよりも、鞄に描かれた女の子の方に縁があったと言う方が適切であるかもしれない。
女の子は私の肩にぶら下がって楽しげにゆらゆらと揺れている。
長いカーリーヘアーの髪を靡かせながら、ピンクのマニュキアで染めた左手をパット広げ、つぶらな瞳をぱっちりと見開き、まるで道行く人々に明るさをばら撒いているみたいである。
そんな女の子を連れて歩いている私自身もまた恰好良くて、ともかく良い気分の朝である。
キップを買い改札口を通過してプラットホームのある地下へとエスカレーターに乗って降りて行った。
「さぁ!今からまたお仕事に行くんだから・・」

夕方、プラットホームに電車が着いて、人々に混じりエスカレーターに乗った私が再び上がって来る。
(あぁ・・疲れた!もう、くたくただわ・・・)
肩には鞄が下がり、相変わらず女の子も楽しそうにゆらゆらと揺れている。
(今日は殊の外仕事がきつかった・・)
朝に較べると少し猫背になって、肩や腰がやたらと痛く、その上眠い・・・
ともすれば、足もふらつきそうである。
(また、風邪でも引いたかなぁ・・)
「ねぇ、もう少しでお家に着くからね。一日中付き合ってくれて、どうもありがとう!あなたも疲れたでしょう。」
女の子に朝よりも優しくなった私が話しかける。

-完-







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