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ももか日記
桃香の痴呆の話<後期>
16歳9ヶ月~
痴呆の進行というのは目に見えるものではなく今思い返してみると
確かこの位の年齢から…と言うのが<初期><中期>でした。
でも<後期>になった時期はかなりはっきりとわかります。
桃香の場合は2005年12月上旬に生死をさまよい、
なんとか一命をとりとめたものの、具合が悪くなる前と後では明らかに
桃香の様子は変わっていました。
生死をさまよう位の病気からの復活だった為、なかなか体力が戻らず
元気が無かったり動きも鈍くなったりしていたのですが、
それとは別に桃香は今までと違う動きを始めました。
自力で立ちあがろうとするそぶりを見せた為、手を添えて起こしてあげると
右へ右へと頭をかしげ、体も右のほうへ一生懸命向けようとしました。
最初は力が入らなくて倒れてきてるだけかと思っていたのですが
体力が戻り、自力で起きあがれるようになってから完全に判明したのです。
痴呆犬特有の円運動?旋回というのでしょうか。
桃香の「右回り」が始まったのです。
まっすぐ体を向けることはなく、とにかく右に右に回るのです。
体重を支えられず、起きあがれない時でもお尻を軸に右に右に
クルクルクルクル回っていました。
↑
<右回りしている桃香>
その際、頭は低く床についてしまうのではないかというくらい垂れ下げて
一心不乱に右へ右へと回りました。
体を支えてまっすぐ向けようとしても右側に全体重をかけてきます。
そして空を切るように手足をバタつかせて意地でも右側に回ろうとするのです。
↑
<頭が床につきそうです>
桃香は真っ直ぐ歩く事が出来なくなったようです。
それでも「動きたい」「歩きたい」という気持ちが強くあるようで
一生懸命右回りをする桃香の姿はとっても愛しいものでした。
日にちが経つにつれ右回りの仕方が上手になっていき、バランスを崩さなければ
息切れするまで長時間グルグルグルグル回っていたこともあります。
痴呆の症状はそれだけではありませんでした。
この時期から狂ったように鳴き叫び、なだめようが抱きしめようが全く
言う事を聞かず手がつけられないほど大暴れすることが多くなっていったのです。
暴れ出すと何をしてもダメでした。
何をして欲しいのか何が嫌で鳴いているのか全くわからず暴れもがく桃香を
呆然と見つめるしかありませんでした。
バタンバタン倒れながらも暴れまわるため体が傷つかないようにと
桃香の周りにクッションを敷き詰め見守るのですが、目をむきながら
暴れまわる桃香は何かを訴えているようで何も出来ない自分が
悲しくて泣きそうになったりしました。
その大暴れが一晩中続くのです。
私は夜、全く眠る事が出来なくなってしまいました。
↑
<大暴れ中…>
今は、なだめ方も習得し暴れる姿も見慣れた為、余裕が出てきましたが
その時は本当にどうしていいかわからず介護の限界を感じて私自身、
だんだん追い詰められて行ったのがこの頃です。
それを見るに見かねたのか父親が動物病院の先生に相談してくれたらしく
「精神安定剤」を持って帰って来ました。
でも頑なになっていた私は
「薬で眠らせるなんて出来ない!万が一の事があったらどうするの?
絶対使わない!」
とそれを使う事はありませんでした。
でも桃香を病院に連れて行った時に院長先生からあの量なら飲ませても大丈夫。
とのお言葉を頂き、今度また暴れ出したら飲ませてみて下さいと言われました。
暴れ過ぎて呼吸が荒くなり眠れない事は桃香にとっても負担になるから・・・
とのことでした。
なるほど…と思い、その晩また大暴れしたため、精神安定剤を飲ませることに
しました。でもやはり心のどこかで引っかかり飲ませる時は胸が痛みました。
何度も桃香に「ごめんね、ごめんね」と繰り返しました。
ドッグフードと一緒に口元へ運ぶと信用しきった無垢な瞳でじっと
見つめられてパクっと薬を飲んだ桃香を見て涙がこぼれてしまいました。
桃ちゃんゴメン…。私の頭にはそれしかありませんでした。
効き目はすぐあらわれました。パッタリとおとなしくなり、桃香は
ウンともスンとも言わなくなってジ―っと横たわっていました。
時々ウツラウツラしてまたパチリを目を開けジーっと一点を見つめる。
その繰り返しで朝まで暴れる事はありませんでした。
結局、その日も桃香から目を離すのが怖かったので一晩中見つめていたので
私の睡眠不足は解消できなかったのであまり意味がなかったとも思います。
その後、どうしても暴れて桃香が苦しそうな時に2~3度飲ませた事が
あります。
今でもその薬を使用するのには抵抗がありここ3ヶ月くらいは
全く飲ませてはいません。
ただ私の気持ちの保険にはなってくれていて、いざとなったらこれを
飲ませれば良い…と心に余裕をもたらしてくれている気がします。
そしてまだまだ症状はあります。
体の右側を下にしないと横にならないというのもいきなり現れた症状です。
同じ方向を下にしてる為、だんだん右半身の毛が薄くなっていきました。
幸いまだ寝たきりではない為床ずれは出来ていませんがハゲてる箇所が
いくつかあります。
左を下にさせようものなら全身の力をふりしぼって抵抗し、のけぞってしまうので
結局は右を下にするしかありませんでした。
<右を下にして寝ます>
↓
1人にされるのを極端に嫌がり誰かがそばにいないと大騒ぎするようになったのも
この時期です。
誰かがそばにいると安心するのか落ちつくのですがそばにいないと
わかるとのけぞって暴れたり頭を持ち上げて探すそぶりをしながら
狂ったようにギャーギャー鳴きわめくのです。
そして頑固さ、ワガママさに磨きがかかり、手に負えないこともありました。
ここから抱き癖がつきはじめたのだと思うのですが抱っこしてると比較的
落ちつくので常に桃香を抱っこしていました。
そのせいか今ではすっかり抱き癖がつき「抱っこぉぉ!!」と
催促するようになっています。
↑
<ママの抱っこでグッスリ>
こうして桃香は誰もが認める完璧な(?)痴呆犬になってしまいました。
***********
成犬の時はお利口だった桃香です。
今のワガママ、頑固さは最後に私に思いきり甘えてくれているのだと
思っています。
人間は歳をとると子供に戻ると言いますが桃香もおそらくそうなのでしょう。
桃香は赤ちゃんです。
そう思っているので今、私は全然辛くありません。
可愛くて可愛くて仕方がないのです。
愛犬の介護は辛いもの…そういうイメージが私の中で消えたような気がします。
桃香の命ある限り、私の腕の中で安心してくれる限り、私は桃香が少しでも
幸せな時間を過ごせる事だけを考えて一緒に暮らしていきたいと思っています。
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