オリジナル の続き。


「ん?」
「さっさと着替えたらどうだ、待っていないぞ」
「あぁそうだね、あのじじいがお待ちかねだ」

そういった炎の着替えは早くすみ、二人で主人のところに向かう。
その炎の胸には空色のネクタイはない。
小さな反抗。なのだろう。
しかし俺はそんなことすら出来ない。
何とも言えないような思いがつのる。

三階までエレベーターで上がり、その正面。
大きく熱い戸の先にやつがいる。

昨日の欲情。


ふとそんなことを思い出す。
自分は何も出来なかった。
なすがままにされて。
恥ずかしさももちろん感じた。
でも、それよりも罪悪感ばかりがあって。


『炎の代わり』だから

つまり、炎はいつもあんな目にあっていることになる。
それはおそらく俺を守るために。
そんなことを聞けば自信過剰に聞こえるかもしれない。
でもそれは事実だった。
俺が『炎の代わり』になった昨日。
炎は風邪を引き主人のところに顔を出さなかったからだ。

だから自分だった。
いつも自分が帰るときに炎は残されていて。
それが不思議で。
昨日、初めて事実を知らせれて。
そして今、炎がいると安心してしまう自分が嫌でしょうがない。

空を彷徨っていた指どうしが絡まり、手を握られ。
気が付けば炎に手を繋がされていた。


「そう思っていていいよ」

心を

「僕だけでいいからさ、あんなこと」

読まれて

「ごめんね」

いた。


何故、炎が謝ったのかはよくわからない。
でも。
きっと。
悪いのは俺だ。
炎の言葉が浸みた。
ネクタイの空の色が痛かった。
「すまない」
つないだ手を強く握って。
戸が、開いた。

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