むうみんの脳内妄想

むうみんの脳内妄想

2001年8月14日 読売新聞社説


[靖国問題]「前倒し参拝は適切な政治判断だ」

 小泉首相は、終戦記念日の八月十五日に先立ち、靖国神社を参拝した。

 十五日に必ず参拝すると言明してきた首相が、十三日に前倒しして参拝した点については、さまざまな論議があろう。

 しかし、中韓両国の反発や欧米の批判的な空気など、現下の厳しい国際情勢において、首相の言う「幅広い国益」を総合的に考えるならば、賢明な政治判断だったと言える。

 十五日参拝を強行した場合、とくに中国の駐日大使の召還や閣僚級の交流の中止なども想定され、日中関係が決定的に悪化することも考えられた。

 経済・貿易関係でも中韓両国との関係の停滞が予想され、低迷する日本経済への悪影響が懸念された。

 中韓両国との関係悪化は、アジア太平洋地域は無論、日本自身の平和と安定を維持する上でも大きなマイナスだ。

 中韓両国は、一貫して十五日の靖国参拝の中止を求めてきた。

 一国の指導者が戦没者を追悼するためにいつ参拝するか、参拝方法はどうするかといった問題は、本来、その国の伝統や慣習に基づく国内問題である。他国からとやかく言われる筋合いはない。

 中国側は非公式に十六日以降の参拝を求めてきたとされる。それに沿った参拝では、中国の圧力に屈したという印象を与えることになる。

 そうした点も踏まえ、総合的に判断すれば、十三日参拝という首相の判断は適切な選択だった。

 靖国参拝をめぐって、毎年のように中韓両国との関係がぎくしゃくし、国内でも各界各層での不協和音が繰り返されるのは不幸なことだ。こうした状況から早急に脱却する必要がある。

 首相は、早い機会に中韓両国の首脳と意見交換し、靖国参拝について理解を得る意向を表明している。その際、過去の深い反省に立って中長期的観点からの関係構築を強く訴えるべきだ。

 国のために命をささげた人たちを、一国の指導者が追悼するのは、どの国も行っている当たり前の行為だ。

 首相は、内外の人々がわだかまりなく追悼できる施設の検討に前向きな姿勢を示している。

 政治問題化し混迷が深まる靖国問題を打破するためには、外国の元首も参拝できる、宗教色のない国立の追悼施設を設けることも検討に値する。

 福田官房長官は近く私的懇談会を設け具体的な議論に入る意向だ。二十一世紀にふさわしい追悼の在り方について知恵を絞るべきだ。

(2001年8月14日 読売新聞社説)



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