・ FIO Wines とケッテルンのラインナップ
FIO Wines はケッテルン家とニーポート家とのコラボレーションで、 2012 年から始まったプロジェクトだ。ナチュラル寄りのワインで、低アルコール濃度と醸造に極力介入しないミニマル・インターヴェンション、最長 5 年間におよぶ長期の澱の上での熟成と、瓶詰前まで亜硫酸無添加もしくは微量添加が本筋のワイン。醸造過程で瓶詰前の一回だけ亜硫酸を添加するという生産者は、ドイツでは例外的だ。
FIO のほかに Rätselhaft, Socalcos, Ururabo, Teppo (Tempo のポルトガル語で、 Tempo はドイツではポケットティッシュの商標登録済のため ), CabiSEHRnett, Falkenberg, Godtr öpchen がある。この他にもペットナットの Piu piu 、赤ワインのように果皮と一緒に発酵するオレンジワイン( Jojo と Glou Glou )、ステンレスタンクと木樽で 9 カ月と比較的短い熟成期間で仕上げた Fabelhaft や、そのノンアルコール版もあってヴァリエーションが豊富で、いささかややこしい。個人的には畑名入りのフラッグシップ 2 種以外は、 3 種類程度に絞っても良いように思う。
FIO Wines
の影になっている感があるが、フィリップが 5
代目として継いだローター・ケッテルン醸造所も健在だ。生産量は年にもよるけれど、若干 FIO Wines
が上回っているという。畑面積はピースポート村の 6.5ha
( Goldtr
öpchen, Günterslay
, Falkenberg)
とライヴェン村の Josefsberg (Leiwener Laurentiuslay
の区画名 )
を近年 5.5ha
購入した。
ピースポートのブドウ畑地図(Deutsches Weininstitut Deutsches Weininstitut: Regionenkarte des Deutschen Weininstituts (deutscheweine.de))
ケッテルンのワインの味わいは、 FIO Wines とそれほど違わない。昔からのモーゼルファン向けだと言うけれども、 FIO もケッテルンもミネラル感が前に出ていて、ボディにやや厚みがあるがアルコール濃度は低く、乳酸発酵と熟成を経て柔らかくなった酸味が果実味を下支えしている。瓶詰まで亜硫酸を添加せずに澱の上で長期間熟成するため酵母のトーンが若干感じられ、様々な要素がまとまっている。
個人的に最も印象的だったのは Ururabo
という、産膜酵母とともに 2
年間樽熟成して瓶詰したワインで、軽く繊細でとりわけ精緻で、ほっそりとして美しかった。同名のワインをドウロのニーポートが地場品種ゴーヴェイオで醸造している。
(つづく)
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