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December 4, 2005
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カテゴリ: 美術
荒々しくも個性的な、誰でもないから誰でもある、木の「彫刻」群。

頭部のレリーフや風景画。
版画のように木を彫って、しかし、紙に転写するのではなく直接に彩色した、絵画と彫刻と版画のリミックスみたいな作品。
ありそうですけど、見たことなかったタイプの作品です。

単なる絵画では難しい凸凹感の徴妙な表出が面白い。

ここから発展したかのような背景模様のシリーズ。
抽象的な模様が、削り出され、彩色され、奥行きある「背景」を描きます。

その前には木から荒々しく削り出された人物像。
こちらも彩色され、豊かな表情を見せています。



ここまで書いておきながら、うーん。

あのですね、私にとって理想の木彫は『夢十夜』なんですよ。
彫り出すのではなく、堀り出す。
木に宿っている「何か」を呼び覚ます行為。

で、日本の木彫って、とんでもなくレベルが高くて、飛鳥時代の仏像から始まって、鎌倉時代の運慶・快慶、江戸時代の木喰・円空、近代の光雲・田中(でんちゅう)。

平櫛田中さんの、写実を超えた「何か」は、彫刻に疎い私でも感じられる程力強いものですし、円空師の、魂が宿るどころか溢れている、大胆で繊細な仏像群の造形力の前では、生半可な現代美術など吹き飛ばされてしまいます。

彼らの、木という素材に敬虔に向き合い、木と対話した結果生み出されたとしか思えない、珠玉の作品群と比べると、今回の作品群は、非常にヨーロッパ的、あるいはキリスト教的な作品だな、と思います。

すなわち、自然は神が人間に与えたもうたものだという意識。
素材としての木の面白さにしか、興味がない。

ものすごく立派な木が、単なる「面白い素材」としてしか使われていないことに、美術として生まれ変わった作品に、このセリフは失礼だと承知の上で、「なんだかもったいないなぁ」という気持ちを禁じえないのです。

何と言いますか、平櫛翁の作品を観て回りたい気分にさせられた、「日本人」の私なのでした。



『シュテファン・バルケンホール』展
|木の彫刻とレリーフ

東京オペラシティアートギャラリー (新宿・初台)

[会期]2005.10/15(土)~12/25(日)



★★★☆☆





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Last updated  December 10, 2005 09:08:25 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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