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May 26, 2007
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カテゴリ: 演劇
19世紀後半、パリ。

芸術を愛する世界中の才能の、夢と希望と未来が渦を巻き、
美神(ミューズ)の微笑みと祝福が舞い降りた、奇跡の時代。

ロートレック、ルノアール、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、、、
近代絵画史上に燦然と輝くビックネーム達が、
お互いを意識し、高めあい、腕を、人気を、天才を競った、芸術の黄金時代。

これは、こんな時代を背景に、画家達の「絆」を描いた、正に「奇跡」の物語。

-----
近年の 三谷幸喜
鳥肌が立つような、素晴らしい作品でした。

=====
己の天才と、社会の評価とのギャップが故に苦悩する ゴッホ 役に、技巧派 生瀬勝久
己の感性の命じるままに、筆をほとばしらせる ゴーギャン 役に、情熱派 寺脇康文
真摯に、冷静に己の天才と向かい合う スーラ 役に、実力派 中井貴一

シュフネッケル 役に、
名バイプレーヤー 相島一之

それに、舞台上 紅一点の 堀内敬子 さん、
荻野清子 さんを加え、
この6名が、この濃密な舞台を引っ張っていきます。

-----
生瀬 さんが、いつもの濃い演技ではなく、「引き算」の演技をするのも新鮮ですし、

寺脇 さんが、『オケピ!』の時以上に はしゃいでみせる一方で、
シリアスな芝居を披露してみせるのも素敵ですし、

中井 さんの、変幻自在の「大人」な芝居ぶりは、本当に見ごたえ十分です。

そして、 相島 さんの「人の良さ」溢れる味は、そのまま、
役であるシュフネッケルの「人の良さ」へと結びつき、作品に点睛を加えます。

-----
三谷幸喜 さんは、『 オケピ! 』に際して、ミュージカルの不自然さが苦手だ
という話をされていましたが、この作品は、内面表現に「歌」「音楽」が
効果的に使われている、という点でも出色です。

そのパートを担うのが、 堀内 さん。
物語の狂言回しを担う、 ルイーズ という架空のモデル役を演じます。
ノビのある、心にまで通るような、澄み切った歌声で、物語を朗々と紡ぎます。
(彼女、なんと「劇団四季」出身。"ネコ"も、演じてられていたそうです。)

そして、その伴奏をし、生で音響を奏でるのが、 荻野 さん。
生であるが故の阿吽の呼吸で、物語を彩ります。

=====
しかし、この作品の素晴らしさは、
役者のみによるものでは、もちろんありません。

何と言っても、脚本が素晴らしい。

笑いとくすぐりを、これでもかと詰め込みながら、
きっちりと泣かせる落としにもっていく。

こんなにも感情に揺さぶりをかける作品は、
三谷作品の傑作中の傑作、『 笑いの大学 』『 巌流島 』に比肩する
と言っても良いと思います。



=====
老女の昔語りから始まるストーリーは、早替えによって、
エッフェル塔建設中のパリへ、黄金時代のパリへ、
彼女と彼らの出会いの場面へと、一気に遡ります。

個性的な面々が、個性的な登場とエピソードで紹介され、
ヒロインをめぐるドタバタを通じて、一つになっていくエピソードで、
客席を沸かせ、盛り上げた後、




と、前半は締めくくられます。

心憎いまでの劇構成。

-----
そして、後半語られる、「天才」達の、「天才」であるが故の、哀しい友情の物語。

最後にスポットが当てられるのは、 シュフネッケル
人の良い彼に対し、天才画家達が本音を吐露する時、理想郷は儚く崩れ去ります。

ルイーズ が、過去と現在の物語を語り終えた後、
揚面は「物語のはじまり」へと、そこにかってあった、黄金の、
密月の日々の最初の日へと遡ります。

-----
もちろん、これは、有名人の名を借りた、架空の物語。
しかし、一方で、「平凡な日々を送る私達」にとっても、普遍的な物語。

=====
舞台奥に、建設途上のエッフェル塔の影が映し出されています。

今はパリの名物である、この鉄塔も、この頃はパリの景観を壊すとして
反対運動も行われていました。

-----
その姿は、ここに登場する作家達にも重ねあわされます。
「今」を生きる彼らには、「未来」に己がどれだけ評価されるかを知る術(すべ)はない。

-----
それは、「今」を生きる我々とて同じ。
私たちに「未来」の評価を知る術(すべ)はないのです。

作中、 シュフネッケル は、「絵の才能はないが、
皆の絆(コンフィデント)であった男」として描かれます。

そして、 シュフネッケル への ルイーズ からの囁きかけをもって、
この物語の、真の主人公が、名バイプレーヤー 相島一之 さん演じる
シュフネッケル であったことを、私達は知るのです。

そう。
これは、決して、天才たちの、手の届かない所にある物語ではなくて、
「地上にある星」として生きる我々に送られたエール。

うーん、いや、正に奇跡の傑作でした。

=====

パルコ プロデュース 『コンフィデント・絆』
 @ シアターBRAVA! (京橋/大阪城公園)

 日程:2007/05/10(木) - /31(木)

 脚本;三谷幸喜
 演出;三谷幸喜

 出演;生瀬勝久 / 寺脇康文 / 中井貴一 / 相島一之 / 堀内敬子 / 荻野清子

  ★★★★★






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Last updated  June 19, 2007 01:33:49 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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