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JR伊丹駅を降りてすぐ、ちょっとした高台があって、のどかな景色を楽しむことが出来ます。
ここが有岡城跡。
もとは伊丹城と呼ばれていましたが、織田信長配下の武将、荒木村重が、街をも巻き込んだ大改築を行い、有岡城と名付けました。
そう、荒木村重が信長を裏切って籠城戦を行った、その中心地です。
三木合戦のさなかの裏切りに、明智光秀や高山右近らも説得に向かいますが、村重が心を翻すことはありませんでした。
そんな情勢の中で、村重の説得に向かった黒田官兵衛は、捕らえられ、幽閉されてしまいます。
この二人を中心に、物語は展開していきます。
黒牢城 (角川文庫) [ 米澤 穂信 ]
最初から最後まで、ただならぬ緊張感が漂う作品でした。
この独特の緊張感は、常在戦場の状況が背景にあること、そして、何より城主村重と囚われの身である官兵衛の独特の関係性から来ています。
軍の士気にも関わりかねない不可解な事件に対し、村重が配下の者を使いながら状況を把握し推理を展開するも、苦悩の末に官兵衛に相談し、「解決」に至る、という一連の流れは、戦況が悪化していく中で、切実さを増していきます。
一方で牢に閉じ込められ続けている官兵衛もまた…。
村重も、決して「無能な城主」ではなく、真っ当で思慮深い人物として描かれ、時代背景も含めて丁寧に描写されているので、歴史モノとしても読み応えがあります。
そして、村重がそんな人物として描かれているからこそ、「牢に閉じ込められた安楽椅子探偵」官兵衛の知恵が輝くのです。
これらキャラクターの魅力に加えて、魅力的な謎、合理的な解決、その先への提示。
どれをとっても一級品です。
あらためて、この作品の受賞歴を見ると、直木賞に加えて、各賞総なめ状態。
第166回直木三十五賞受賞
第22回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞
第12回山田風太郎賞受賞
「このミステリーがすごい!」2022年版国内編 第1位
「週刊文春ミステリーベスト10」2021年国内部門 第1位
「ミステリが読みたい!」2022年版国内篇 第1位
「本格ミステリ・ベスト10」2022年国内ランキング 第1位
(史上初となる4大ミステリランキング制覇)
「2021年歴史・時代小説ベスト3」(『週刊朝日』)第1位
そりゃ、面白いわな、面白いしな、と思います。
さて、この後、織田信長が天下に手をかけながらも命を落とし、秀吉、家康と時代が進むことを我々は知っています。
では、その流れの中で、村重はどんな人生を歩むのか、官兵衛の運命はどうなっていくのか。
歴史は小説より奇なり。
最後まで二人の「運命」から目の離せない、歴史×推理の極上のエンターテインメント小説でした。
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